見出し画像

キッチンカーの出店を通じて牛乳を飲むきっかけをつくりたい|千葉ウシノヒロバメンバーインタビュー11 及川 奈々美さん

千葉ウシノヒロバのスタッフは、仔牛をそだてる「預託事業」、または、キャンプやワークショップなどを楽しんでいただく「観光事業」のどちらかに携わっています。

今回話を伺ったのは、観光スタッフの及川奈々美さん(以下、及川さん)。及川さんは昨年まで預託事業と観光事業の両方を兼任していました。兼任を経て、今年からは観光事業に注力しています。

現在は、キッチンカー型のバー「ミルクバースタンド 26時の抱擁」(以下、ミルクバースタンド)のリーダーとして、千葉ウシノヒロバで活躍しています。

牛”も”育てるキッチンカーのお姉さん

10代の頃に東京動物専門学校に通っていたという及川さん。入社のきっかけは何だったのでしょうか。

—— 小さい頃にテレビで「天才!志村どうぶつ園」を毎週のように見ていたこともあって、動物園の飼育員が憧れの職業でした。そして、専門学校でいろいろ学ぶ中で、牛の魅力に気づいたんです。私はもともと牛乳が大好きなんです。もちろん、かわいくておっとりとした牛が好きというのもあるんですが、それよりも、「牛乳を生み出していらっしゃる方ですよね!?」という尊敬の念が強く(笑)、ずっと牛に対して「ありがとう」と思っていました。

そういったことから、専門学生の時に「牧場で牛に関わる仕事がしたい」と思うようになりました。また、人とコミュニケーションを取ることも好きなので、観光事業も行っている千葉ウシノヒロバだったらその両方ができると思ったのが入社のきっかけです。
ただ、実際に両方の仕事をするのはものすごく大変でした。でも、両方をやっているからこそ、預託でやってることをミルクバースタンドでお客さんに直接伝えることができるんです。それがやりがいかもしれません。接客中によくお客さんと会話をするのですが、「え、お姉さん牛の世話もしてるんですか?」と、ほとんどのお客さんが反応します(笑)

私はいつも牛に対してありがとうって思っているので、牛から生まれる商品を買ってくださるお客さんに対しても「買ってくれてありがとう」と思いますし、お客さんにも「できれば、牛さんにありがとうって言ってね」と思いながら接客しています。それが、とても幸せなことなんです。

—— 多くの人は「せっかく牧場に来たんだから、牛乳を飲んだりアイスクリームを食べたりしたい」と思うじゃないですか。でもウシノヒロバは仔牛を育てる牧場なので、ここではミルクを絞っていません。だから、それを正直にお伝えしています。ミルクバースタンドで使用している牛乳は、ウシノヒロバのお隣の千葉酪農農業協同組合さん(以下、千葉酪さん)から購入しているものです。
ウシノヒロバで預かって育てた仔牛たちは、大きくなれば酪農家さんの元に帰ります。その牛たちからお乳が出るようになって、そのミルクが工場に集められることで製品化されます。ウシノヒロバでは、そうやってできた牛乳を使っているので、広い目で見るとここを卒業した牛のお乳も入っているかもしれません。
ただ、正直に伝えると、絞りたてではないせいか、他のメニューを選ぶお客さんもいます。でも、嘘はつきたくないですし、たとえ絞りたてでなくとも、自信を持って出せるおいしい牛乳です。最近は牛乳離れが進んでいるようですが、それでも牧場に来れば「牛乳を飲んでみよう」と思うはずです。
だから、ミルクバースタンドが牛乳を飲むきっかけになればいいなと思っています。それによって、牛乳が余って困っているいまの酪農の状況に貢献できていると思うんです。実際に千葉酪さんからは「今日も牛乳を買ってくれてありがとう」といつも喜んでもらえるほど、すごく仲良しになりました。これからも、ミルクバースタンドが牛乳を消費するきっかけになればいいなと思っています。

及川さんの言う「牛乳が余って困っている状況」とは、年々日本における牛乳の消費量が減少していることに原因があります。牛の搾乳は毎日継続する必要があるため、生産量をコントロールすることが困難です。そのため、需要が減ればどうしても余ってしまうのです。それに加え、飼料の高騰などの課題もあり、酪農文化全体が大変な状況になります。そういった現状の中で、私たちが継続して牛乳や乳製品を消費することは、全国の酪農家の応援にもつながります。

🌱🐮🌱

愛知で育った私のメニュー開発

動物の専門学校出身のなななさんが、ミルクバースタンドのスタッフになったのは、どのようなきっかけだったのでしょうか。そして、次々に生み出されるメニュー開発についても伺いました。

—— 私は愛知県の出身なので、喫茶文化が自分の中に根付いています。だから、専門学校で千葉に来てからも休日に1人でカフェを開拓していました。千葉ウシノヒロバに入社してからも、「カフェが好きです」とずっと言っていたので、「じゃあやってみる?」となり、ミルクバースタンドを担当することになりました。
ミルクバースタンドで提供する商品は、千葉の食材を取り入れるようにしています。また、イベント出店には他のキッチンカーの出店者さんから「おしゃれなキッチンカーですね」と言っていただけることが多いので、そのイメージに合ったものを提供したいと思っています。

—— 商品のひとつである「チャコールラテ」は、千葉市の竹炭グルメ(千葉市の里山エリア「チバノサト」で繁殖し続けて荒れてしまった竹林を整備し、伐採した竹を活用して作った「竹炭パウダー」を使用したグルメの総称)として、竹炭を使ったメニューをつくりたいと考えたのが最初でした。ソフトクリームでも良いし、ドリンクでも良いし。自分がカフェ好きということもあってチャコールラテ(コーヒーと食用炭を混ぜてラテにした飲み物)の存在は知っていました。そこで、ウシノヒロバらしいチャコールラテをつくろうと思い、竹炭をミルクコーヒーに混ぜてみることにしました。 ウシノヒロバのコンセプトと自分の経験を掛け合わせて生まれた自信作です。

【写真】及川さんが商品開発に携わった「チャコールラテ」。
透明の器の中に、竹炭の黒とミルクコーヒーの白のグラデーションが綺麗に浮かぶ。

🌱🐮🌱

初めてのイベント出店

ミルクバースタンドは、千葉ウシノヒロバでの営業だけではなく、千葉市を中心とした県内各地のイベントに出店しています。この夏も「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」や「SUMMER SONIC」に出店。その準備も及川さんが中心になって進めてました。
—— 2年前の「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2022」が、ミルクバースタンドとして初めての出店でした。初めてのことだらけでとても大変でしたが、みんなで協力したからこそできた初出店だったと思います。このときは普段はミルクバースタンドに携わらないスタッフも一緒になって準備して出店したのですが、みんなで一丸となって準備をして、出店をして、まるで文化祭のようでした。
このイベントをきっかけに徐々に他のイベントにも出店するようになったのですが、これまでいろんなトラブルがありました。ロックアイスやスプーンが途中でなくなってしまって急いで買いに走ったり、資材を発注しすぎて保管場所がなくなってしまったりしました。最近だと発電機が止まってしまうこともあって。そういうトラブルは出店にはつき物なので、常に何か起こるという気持ちでいつつ、トライアンドエラーでやっています。「このトラブルが起きたらこうやって対処しよう」と冷静にならないと、お客さんに迷惑をかけたり、他のミスが起こったりしてしまうんです。そうすると、スタッフもピリピリしてしまうので、みんなでポジティブな空気を作りながら、冷静に慌てないことを意識してやってきました。

【写真】ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2022の様子。
ミルクバースタンドに多くの人が集まり、行列ができている。

—— キッチンカーの出店は経験も少なく、教科書もないので、出店の際に他のキッチンカー出店者さんと交流しながらアドバイスをいただいてます。出店者さんとの交流の中では、車体のデザインを褒めてもらうことも多いんです。それがすごい自慢で、そのおかげで自信を持って運営できています。このキッチンカーは、一般的な出店車に比べてレジの位置が少し低いんです。お客さんとの目線も近くなるので、自然な会話につながっているんじゃないかなと思っています。
出店時の接客は、ウシノヒロバのことを伝えるのが主な目的です。接客の際にパンフレットをお渡しして、「ウシノヒロバに来て、牛を見て、ミルクを飲んでほしい」と伝えています。イベント出店からウシノヒロバへの来場につなげたいんです。
また、お客さんからアドバイスをもらうこともたくさんあります。最近は、「フードがもう少しほしい」というような声をいただきました。勝手に、スパイスカレーに挑戦したいなーなんて考えています。単純に私が食べたいと思えるものですし、千葉ウシノヒロバでつくっているオリジナル商品の「満ぷく神漬け」との相性もとても良いからです。それに、自然の中で美味しいカレーを食べるって最高じゃないですか。絶対に実現したいと思っています。

及川さんがインタビュー中にいちばん目を輝かせていたのは、牛と牛乳について話している時でした。牛が好きで、牛乳が好きで、喫茶店が好き。そんな及川さんだからこそできる、及川さんにしかできない、ミルクバースタンドのかたちだと思いました。

このインタビューの数日後にスタッフ内で開かれたランチ会では、及川さんが作ったスパイスカレーが振る舞われたそうです。これから生まれる新しいメニューがいまから楽しみです。

🌱🐮🌱

・千葉ウシノヒロバでは一緒に働くメンバーを募集しています
https://ushinohiroba.com/hiring-2024/

🌱🐮🌱

牛が暮らすキャンプ場「千葉ウシノヒロバ」のホームページはこちら。
宿泊の予約のほかに、オンラインショップではオリジナル商品などを購入することもできます。

・ホームページ
https://ushinohiroba.com/

・定額キャンプ
https://ushinohiroba.com/flat-rate-camping

・オンラインショップ
https://shop.ushinohiroba.com

SNSではウシノヒロバの様子や、イベントのお知らせなどを発信しています。ぜひご覧ください。
・Instagram
https://instagram.com/chibaushinohiroba
・X(旧Twitter)
https://twitter.com/ushinohiroba

🌱🐮🌱

(編集:山本文弥、インタビュアー・執筆:伊藤紀慧)