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東京大学OEGsと考える、地球の幸せと人間の幸せ

みなさん、こんにちは。牛ラボマガジンです。牛ラボマガジンでは「牛」を中心としながらも、食や社会、それに環境など、様々な領域を横断して、たくさんのことを考えていきたいと思っています。

今回は、千葉ウシノヒロバが東京大学と一緒に取り組んでいる活動について紹介します。
東京大学では「ONE EARTH GUARDIANS(通称:OEGs)」というプログラムを実施しています。これは、たったひとつの地球で、ヒトと生物が共存するための未来をつなぐ「地球医」を育てるための取り組みです。千葉ウシノヒロバはこの活動に強く共感し、数年前より産学連携を進めています。(このことについては別の記事でも紹介しているので、合わせてご覧ください)

昨今、エコロジー、サーキュラーエコノミー、エネルギー問題、プラネタリーヘルス、地球中心デザイン、資源の枯渇など、さまざまな言葉で環境問題について語られることが増えています。一言で言えば、「地球が限界に近づいている」ということです。

限りある資源、破壊される自然、動物の命、人間の幸せ、さまざまな事柄が複雑に絡み合う問題に、私たちはどのように向き合うべきなのでしょうか。

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地球中心思想の問題

2024年3月1日、東京大学にてこの2023年度の取り組みの最終発表会が開催されました。千葉ウシノヒロバ以外にもたくさんの会社が参加しており、会社それぞれ、学生それぞれにさまざまな問題提起や解決策の提案がされました。

千葉ウシノヒロバとしては今回「科学と哲学から考える、動物・人間・自然」というテーマで活動を進めてきました。学生や先生のみなさまと一緒に対話を繰り返し、答えが出るような活動ではありませんでしたが、深く悩み、考えた時間はかけがえのないものになったと思っています。
なぜ千葉ウシノヒロバがこのようなテーマを掲げたかというと、地球の健康や自然保護、そして動物の命はもちろん大事ですが、私たちはそれらと同時に「人間の幸せ」についても考えなければならないと考えているからです。

地球や自然を守るというテーマで話が進むとき、ついつい人間のことを後回しにしがちです。なぜなら、地球や自然にとっては、人間の存在そのものが害とも言えるからです。たしかに、これまで自然を壊し、資源を好き放題に使って、自分たちの生活を便利にしてきた人間には大きな問題があるかと思います。際限のない人間の欲求は困ったものです。とはいえ、私たちは結局のところ人間です。「地球のために人間を滅ぼすべき」のような答えを出すわけにはいきません。どこまでいっても人間中心以外に考えることはできないはずです。それであれば、人間の幸せを前提としない環境保護はうまく成立しないのではないかと考えました。

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正しさだけで社会は動かない

リベラル的な環境保護活動は大抵の場合「正しい」と思います。ただ、正しさだけで社会や世界が動くかと言うとそんなことはありません。私たちはバグを抱えた未熟な生物である人間です。これまでの歴史の中で何度も失敗や罪を繰り返してきたことからも、それは明らかでしょう。正確なコンピューターのように、「正しさシステム」のプログラムをインストールすればその通りに動くわけではありません。私たちは「地球を守る」という正しさに向き合いつつ、「人間のバグ」というエラー(もちろんこのエラーが人間を人間たらしめている人間らしさとも言えますが)に付き合い続けなければいけません。
たとえばですが、いくら動物愛護を訴えたところで、「でも美味しい肉を食べたいじゃん」という人は存在し続けるでしょう。いくら環境保護を訴えたところで、「でも便利に暮らしたいじゃん」という人はそこまで減らないでしょう。これは、人間がこれまで、生物的に未熟な部分を「知恵」と「工夫」によって補ってきたという歴史と関係しているかもしれません。

もちろん、この人間的な欲望を100%肯定しているわけではありません。人間の欲望は時代によって適切に成長していくべきだと思っています。ですが、この欲望は正しさを凌駕します。この事実に目を向けないことには、環境も人間も守れないのではないかと思うのです。

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自利利他円満の思想で考える

だから私たちは、「地球の幸せ」と「人間の幸せ」を同時に考える必要があります。天秤にかけてバランスを取る必要があります。私たちは地球を守ると同時に、人間として幸せにならなければなりません。むしろ、その「自利」的な気持ちが「利他」的な意味へとつながる、「自利即利他」あるいは「自利利他円満」のような仕組みや思想が必要なのだと思います。
正しさはときに思想的格差を拡大します。リベラル的正しさに抑圧されてきたナショナリズムがカウンターのように台頭している現代の様子を見ていると、つくづくそう思います。多くの人間は、自分たちに「利」がなければ納得できないのです。それを思想的に未熟な人間と切り捨てることは簡単ですが、いずれ反撃を受けるでしょう。

千葉ウシノヒロバは、地球の理想を考えるとともに、人間の幸せや、目の前の生活、リアルな現実に目を向けたいと思っています。私たちは小さな会社で、小さな施設です。大企業のように、環境についての研究をスケールさせていくようなことはできません。ですが、千葉ウシノヒロバにはさまざまな人が訪れます。自然の中で過ごすいろんな人たちの様子を見ることができます。「この人たちが、自然と関わり合いながら幸せになっていくにはどうしたらいいんだろう」。千葉ウシノヒロバだからこそ、そういった地に足をつけた素朴な探求ができるのだと考えています。

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「地球の幸せ」と「人間の幸せ」

経済成長と幸福度にはあまり相関がないことや、貧困や格差はファクトとして減っているがそれをなかなか実感できないことは、すでに明らかになりつつあります。ではどうしたら私たちは幸せになれるのか、「ウェルビーイング」や「マインドフルネス」といったキーワードでそれを探求する人たちも増えています。情報アーキテクチャという分野の国際カンファレンスで「Architecting Happiness」のような言葉がテーマになったこともあります。
ですが、まだまだ私たちの幸せにはほど遠いのが正直なところでしょう。たとえ幸せの仕組みが解明できたところで、実践できるのか、それによってほかの問題は起きないのか、考えるべきことはどんどん増えていくと思います。

また、それらのキーワードは昨今ではビジネスチャンスとしても捉えられはじめており、企業のポジショントークに使われることも増えています。Googleで「ウェルビーイング」を検索すれば、すでに玉石混交であることがわかると思います。これはあまり良いことではないかもしれませんが、かと言ってそのキーワードそのものの重要性が失われるわけではありません。

OEGsの発表会の終わりには、担当の先生より、「いずれこのプログラム自体がなくなることが目標です」という発言がありました。「ONE EARTH GUARDIANS(地球医)」は、地球が傷ついているからこそ必要な役割です。地球の傷が治れば、たしかに不要になるでしょう。これは言い換えれば、「誰もがONE EARTH GUARDIANSになる」ということだと思います。
その未来が少しでも早く訪れるように、私たちはこれからも、「地球の幸せ」と「人間の幸せ」、その「天秤」に向き合い、悩み続けていきます。

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(執筆・編集:山本 文弥)