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節目の創設10年で初の選手権へ「第23回 全日本身体障害者野球選手権大会」~1日目~

11月6日(土)〜7日(日)、兵庫県豊岡市の「全但バス但馬ドーム」で「第23回 全日本身体障害者野球選手権大会」が開催された。(以下、選手権大会)

全国7ブロックの優勝チームが集う大会

選手権は、毎年8月〜9月にかけて行われる全国7ブロック(※)の地区大会で優勝したチームのみが参加権を得ることができる特別な大会。

(※九州・中国四国・西近畿・東近畿・中部東海・関東甲信越・北海道東北の7ブロック)

主催する「NPO法人 日本身体障害者野球連盟(以下、連盟)」には29都道府県・37チームが加盟しており、その頂点を決める大会である。

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1999年の第1回から毎年11月初旬に行われ、今年2年ぶりの開催となった。

2011年に本格始動したドリームスターは、14年に同連盟へ加盟。17年に関東甲信越大会を地元千葉県で開催して以降、3年連続で準優勝を果たすものの、優勝=選手権出場には手が届かずにいた。

しかし節目の10周年を迎えた今年、継続的な活動や関東甲信越連盟理事会及び連盟の尽力でこちらも2年ぶりに関東甲信越大会の開催が実現。

東京ジャイアンツとの試合に勝利し、創設から初めて選手権の地に立つことになった。(関東甲信越大会については以下参照)

開会式の選手宣誓は土屋来夢が務める

選手権大会は2日間にかけて行われた。初日の9時からは開会式。開催地の豊岡市長ら多くの来賓が開催を祝福する中、ドリームスターからは土屋来夢、山岸英樹、城武尊、山田元、石井修の5選手がチームを代表して入場した。

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そして、選手宣誓は全選手を代表して土屋来夢が壇上に。好きな野球を仲間とできることに感謝し、全力でプレーすることを宣言した。

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初戦の相手は北海道東北代表の「仙台福祉メイツ」

ドリームスターは11時40分からの第2試合で、相手は北海道東北代表の「仙台福祉メイツ(以下、仙台)」。

北海道東北大会は中止となったが、各チームの活動状況や2年ぶりの選手権開催となったことを踏まえ、同ブロック内のチームで協議し各チームの選手が一部合流した構成となった。

”東北連合”と対戦するドリームスター。第1試合も中盤に差し掛かった頃にウォーミングアップを開始。ノックや投球練習に加え設置してあるネットでのティーバッティングなどで身体を動かした。

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小笠原一彦監督も自らランナーコーチ陣に声のかけるタイミングや動きについて指導。全員が試合に参加できるようバックアップした。

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そしてナインを集め、監督自ら「ドリームスターの野球は何か。それは”明るく楽しく”。それを忘れずにやっていこう」と投げかけ、この大会で主将を務めた土屋も円陣の真ん中に入り鼓舞した。

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試合は1点を争う接戦に

そして11時40分、第2試合がプレーボール。大会はトーナメント方式。試合時間は100分制で、同点の場合は9人同士によるじゃんけんでタイブレークを行う。

スターティングメンバーは以下のラインナップ。

1 土屋来夢(遊)
2 小林浩紀(二) 
3 城武尊(三)
4 山田元(捕)
5 山岸英樹(投)
6 石井修(一)
7 宮内隆行(左)
8 関拳児(右)
9 藤田卓(中)

先攻のドリームスターは初回にチャンスを作る。2番の小林が出塁すると、広島アローズ時代から選手権に出場し、経験豊富の城が挨拶代わりの安打でチャンスメイク。

山田・山岸と主軸も繋ぎ1死満塁のチャンスを迎える。しかし、独特の緊張感という見えない敵が襲い走塁ミスで得点機を逸すると後続も倒れ無得点に。ここから両チーム1点が重い試合が始まっていく。

先発は山岸英樹。17年から3年間、関東甲信越大会の決勝の先発を務めており、選手権大会の初戦先発という大役を担う。

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初回2死から走者を出すも後続を危なげなく打ち取り、上々の立ち上がりを見せた。2回表のドリームスターの攻撃は無得点。両軍重々しい空気が流れる中、2回裏試合は思わぬ方向に。

1死から6番打者に死球、7番を三振に切って取るも続く8番に安打を浴び2死1・3塁。9番の打席時に捕手からの牽制が逸れた際に3塁走者がホームへ。

しかし、ドリームスターは遊撃が捕球したため「ボールデッド」とアピール。仙台からはインプレーではないかと主張し試合は中断。

両チーム・審判団による協議で収まらず連盟も加わること約20分。走者が帰塁していなかったことから盗塁(身体障害者野球では禁止)との判断となり再度2死1・3塁から再開した。

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その後山岸は踏ん張り無失点。再度ベンチでは円陣が組まれ、次の攻撃へと切り替えるも本塁が遠く3回を迎えた。

ここで試合が動く。先頭の1番を安打で塁に出すも後続を抑え2死までこぎつける。しかし、3番を四球で1・2塁とすると4番を討ち取った当たりながら右前に落ちるポテンヒット。仙台に先制点を挙げられてしまう。

山岸はこの日は多湿もあり球数が増えながらも要所を抑えてきたが、不運な失点となった。

最終盤に執念のヘッドスライディング

重い1点がのしかかり、4回も両軍無得点で迎えた最終回。ドリームスターは5回表の攻撃に全てを懸ける。

1死後に土屋が死球で出塁。ベンチからは同点を期待し、徐々に活気が戻っていく。続く小林の三ゴロで一塁へと送球が放たれた瞬間、進塁した土屋が猛然と三塁へ滑り込む。

ただ、この試合は魔物が司っているのか、勝敗を決する場面で必ず何かが起こる。送球が逸れ、土屋は本塁へ走り込みホームイン...と思いきや送球が跳ね返りボールは三塁手のグラブへ吸い付くように一直線。

捕手へと送球され土屋と相対した。これで万事休すかと思われたがここから土屋は目の前に立ちはだかった捕手をかいくぐり頭から飛び込んだ。

左手で確かに本塁を触れ、球審の両手が横に広がった。ベンチは総出でこの試合の主将を迎えた。(※注 筆者もベンチで出迎えたためその直後の様子でお楽しみください)

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まさに土壇場で追いついたドリームスター。この1点を守るべく裏の守りでは城が2番手で登板した。

この試合2安打を放ち、中断の際は率先してルールの正当性を主張するなどグラウンドでチームを引っ張る男はマウンドでも躍動。最後の打者をカーブで見逃し三振を奪い、貫禄の投球を見せた。

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ここで規定の100分に。1−1と同点で終えたため。じゃんけんによるタイブレーク。しかし、ここでも魔物が悪戯をするかのような展開に。

打順に沿って9人が並び5勝先勝で決まるタイブレークは、ドリームスターがいきなり3連勝。

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ここで優位に立ったかと思えば今度は仙台が3連勝。その後も一進一退の攻防が続き、なんと4勝4敗の9人目で決することに。しかし、最後の最後敗れ決着。野球では引き分けながらも初戦で涙を飲んだ。

最後の一歩まで来ながらも惜しくも敗れたドリームスターは翌日の初戦、阪和ファイターズ(東近畿)に敗れた龍野アルカディア(西近畿)と5位決定戦に回った。

2日目に続く)


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