見出し画像

千葉道場は「高み」を目指す起業家コミュニティたるべし ニューラルポケット重松路威氏の提言

こんにちは、千葉道場ファンドです! 千葉道場の仲間たちの思いやヒストリーなどを紐解くインタビューもこれで4回目。今回はニューラルポケットの重松路威さんにお話をお聞きしました。

ニューラルポケットは画像解析AIソリューションやモビリティ向けAI解析サービスなどの人工知能を用いたサービスを多数展開。エッジ型AIで「世界を便利に、人々を幸せに」を叶えるために2018年1月に創業した会社です。

そんな重松さんは千葉功太郎とは、ニューラルポケット創業前から親交があった模様。今回は重松さんが千葉との交流の中で得たことや、千葉道場が掲げる「Catch The Star」についてお聞きしました。

創業からわずか2年7カ月にして東証マザーズにスピード上場した起業家の声をお聞きください。

千葉功太郎との「運命的な出会い」

画像1

――起業された理由を教えてください。

「僕が4年前に起業する前は、マッキンゼー・アンド・カンパニーでIoTやAIの新サービス作りの戦略立案をやっていました。会社を辞める2年ぐらい前に役員になって、自分で事業を立ち上げていろいろ考えていたんですが、国内外の経営者と話をしていて一番難しい話題がIoTやAIでした。みなさんと議論するとIoTの技術はそもそも何なのかや、何に使えばいいかがほとんどイメージできていなかったんですね。これは日本だけではなかった。『これはなんとかしないと』と思いました」。

「当時はAI開発やAIサービスの創出に成功している日系メーカーもほとんどいなくて、これからは本質的にAI開発を加速させなければいけないと思うようになったのが起業のきっかけですかね。もともと、僕は大学で電子工学のエンジニアだったので、そういう技術を使って新しい便利な時代を作るのが自分の役割なのかなと思っていました」。

――千葉功太郎の出会いは起業当初だったんですね。

「マッキンゼー時代の同僚のウェルスナビの柴山さんの紹介だったんですね。柴山さんが起業したタイミングが2年ぐらい早かったんですけど、彼に相談する中で『素晴らしい投資家がいる』と千葉さんの名前を挙げてくれたんです。『大スターの起業家で、起業家全体を活性化していくようなリーダーがいる』と。これはぜひ会ってみたいと思いました」。

「柴山さんの紹介で千葉さんにお会いいただけることになり、15分ほどの時間を割いてもらいました。起業家は忙しいと聞いていたので、短い時間でも本当にありがたかったです。結果的にこれが運命的な出会いになりました。千葉さんに僕の志を話したんですけど、偶然にも同じ志を持っていたんですね」。

「会社のビジョンや、経営者がどのぐらいの熱い夢を持って、その事業を加速させていくか。そこをすごく真摯に見てくれて、真剣に聞いてくれたんです。逆に言うと、ビジョンや夢がないと、千葉さんはそういう支援はしないのかもしれません」。

「会社を興した時は僕一人しかいなかったですし、売り上げも当然ありませんでした。シェアオフィスをかろうじて借りてはいるものの、言ってみれば組織と言えないようなものですよね。そんな時期でもモチベーションやパッションにしっかり耳の傾けてもらったのは非常にありがたかったです。成功しているかどうかではなく、ビジョンや夢をフェアに聞いてくださったんです」。

「人工知能でいろいろなサービスを展開していきたいと話したんですが、当時の千葉道場の出資先には人工知能を扱うよりは、BtoC的なサービスを展開している企業が多かった印象です。僕の会社がBtoBの人工知能を扱っていたので、千葉さんがこれまで注力されてきた分野とひょっとしたら本当は少し違っていたのかもしれません。でも、『人工知能でそんなことできるの? すごいね』と言ってくれました。そうして、何を遂げていきたいのか、話が盛り上がったことを覚えてます。それからは千葉道場自体の合宿にも時々お邪魔したり、千葉さんに個別に相談に乗っていただいたり、千葉さんとの結びつきは今もしっかりとあります」。

――起業して、千葉功太郎が一番最初の投資家だったそうですね。

「創業してまだ数週間のタイミングで、本当にザ・シードの段階でした。当時はAIを使ってファッション界のeコマースに関連したサービスを作ろうと考えていたんです。千葉さんがファッションの会社にも投資していたので、ファッション×AIのサービスという視点で当時はアピールしていたように思います」。

「これまでの出資先と異なる性質が僕の会社にはあったと思うんですけど、そこに関してはそれを最初から否定することはなかったんですね。フェアに聞いて、面白そうだと感じてくれたと思います。それが事業を進めていくなかで、スマートシティやエッジ領域のほうにピボットしていく流れになりました。ベンチャー企業のピボットでも、これはけっこう大きな部類のピボットになりますよね。当時は千葉さんに随時相談していましたが、ピボットすればするほど、千葉さんの直接的な得意領域からは一見、離れていくんです」。

「でも、そういう時にもじっと話を聞いてくれて、千葉さんの事業であるドローンにも使えないか考えてくれたり、新しい発想でアイデアをたくさんいただけました。企業の経営をしている中で、こういう応援やアドバイスをしてくれたことがモチベーションであり続けたかなと感謝しています」。

「Catch The Star」を合言葉に、高みへ

画像2
写真右側の白いTシャツを来ているのが重松さん。千葉道場の勉強会にて

――千葉功太郎からはどんなことを学びましたか?

「千葉さんに相談していてすごく面白いのが、いわゆるマッキンゼーでよく習う3Cのフレームワークなどをあまり引用しないんですよ。ただ、同じようなことを普通に経営者目線で聞いてくるんですよね。『どういうふうに市場優位性を作るの?』とか。僕がマッキンゼーで10年かけて座学で学んできたことを、千葉さんは起業と経営をしていくなかで自然と行っているんだなと思いました」。

「逆に、千葉さんはマッキンゼーでほとんど見てなかった指標をいろいろ教えてくださいました。投資判断や事業計画について相談したときでした。僕が売上成長率や営業利益率の高さを説明していたところ、千葉さんから『社員一人当たり利益はいくら?』と聞かれました。僕は全くこの指標を考えたことがなかったので、即答することができずにその場で計算しました。投資判断を行う際に、利益率や成長性だけをみるのではなく、より多角的な視点でベンチャー企業としての収益判断を行うことをその時学びました。これまで、いろいろな投資先を見ていく中で、千葉さんの中で見るべき指標のライブラリが格段に確立されてるなと思いました」。

「千葉さんは基本的に目の前の小さい話にあまりこだわらないんですよね。二人で話していて、自らの志から逆算して行動することが話題になると、すごく盛り上がるんですよ。僕は会社である程度のビジネスを経験してから起業したんですが、会社や事業の社会的な意義や目標を作り出すために今どうすればいいのか、今なぜその仕事をやっているのかを常に第一に考えています」。

「僕の強みとしては、事業を国際的な規模まで進化させることだと思っています。欧米の市場やインド・インドネシアなどのアジア諸国でこれまで仕事をしてきたので、異なる商習慣を持つ環境の社会的課題を人工知能といった新しい技術がどう解決していくかを話すと、千葉さんも積極的に議論に参加してくれますね。千葉さんはドローンに取り組んでいたり、最近ではアメリカでSPACを始められたり、常にすごく刺激になります。自分が見えてない領域を千葉さんが取り組んでいて、どういった社会的課題を解決するのか、門外漢の僕でも興味が湧きます」。

「事業をピボットする場合も、ある技術が将来的に社会のニーズやマーケットを生むことを見越して、現時点ではどういったサービスにして、これから進化していくのかを決めています。千葉道場が掲げている『Catch The Star』も同様の考え方なんじゃないかと思っていますね」。

「志を高く掲げる分、『世界で数本の指に入る』みたいな高い目標になりますよね。10年後には世界に冠たる企業になるために、5年後、3年後、1年後の中期〜短期目標も決めます。例えば、売上高100億円突破を達成するために目標設定することもあります。社内向けの目標って、だいたいは10人中9人が達成できるものに設定しがちですが、本気で成長させるためには背伸びしなければいけませんよね」。

「ただ、高い目標を社内外に公言するのは非常に恥ずかしさがあります。千葉道場さん以外のファンドだと、『はいはい、頑張ってね』みたいに話半分に受け取られることもしばしばありますし。だけど、千葉さんは澄んだ瞳で応援してくれるんです。たぶん、ほかの投資家で、純粋無垢にこんな応援をしてくれる人がいないんじゃないかと思います。まさに“エンジェル投資家”ですよね」。

「僕は37歳で起業したんですが、今の日本の起業家って20〜30代前半とかで若いですよね。千葉道場の合宿で若い起業家たちが『ぶっ壊そうぜ』と意気揚々で盛り上がっている場面を千葉さんが仕切っていたりすると、本当にすごいなと思ってしまいますね(笑)」。

マッキンゼーのカルチャーと千葉道場の仲間たち

――千葉功太郎はマッキンゼー出身の重松さんとウェルスナビの柴山和久さんが起業に成功して、「起業家のフェーズが変わった」と言っていました。マッキンゼー出身者のキャリアも変わってきたんでしょうか?

「マッキンゼー出身の人たちって、多少なりともみんな起業家精神は持っていると思うんですよね。入社したメンバーも武者修行のために数年いたらマッキンゼーを辞めていくんです。『マッキンゼーに将来のためのヒントを探しに来た』と言っていた人もそこそこいましたね」。

「僕がマッキンゼーに入ったのは10〜15年前ぐらいですけど、当時の優秀なメンバーも起業家を目指すとは思いも寄ってなかったかもしれないですね。マッキンゼーのメンバーにある種の固定概念があったとは思います。起業して成功するビジョンが見えなかった。そこに草分け的な存在として柴山さんがウェルスナビを起業して成功しました。ここでマッキンゼー出身のメンバーの中に起業が選択肢として入ってきたと思うんです」。

「今は続々と起業して、マッキンゼー出身メンバーの企業が20社くらいあるんですが、それなりにみんな上手く行ってるんですよね。そういうイメージが湧いてくるようになったのは、やはり柴山さんがきっかけだったと思いますね。元を辿れば、それは柴山さんが千葉さんの仲間に入ってから連綿と続いているものです。そうして僕も千葉道場の仲間と千葉さんに出会い、多くのものを得ることができたんです」。

「令和トラベルを創業した篠塚孝哉さんと出会ったのも千葉さんのおかげです。当初、ファッション×AIのECサービスを構想していた時に、『ECに詳しい篠塚さんという人がいる』と紹介いただけました。僕はずっとBtoBでやってきた人間なんですが、ビジネスの属性がまったく違うBtoCの最先端で戦う篠塚さんの知見やアドバイスを聞けるのは、本当にありがたかったです。彼の志も千葉さんと近しいものがあって、知り合ってからはお互いをずっと応援し続けています」。

千葉道場よ、かくあるべし

――千葉功太郎や千葉道場の仲間から多くのものを得たようですが、今後、千葉道場がさらに進化していくためには何が必要でしょうか?

「もしかしたら今取り組んでいる最中かもしれませんが……若い起業家が増えてきた反面、合宿や勉強会で語ることが些末なものになりがちかもしれないですね。それだけ、若い起業家にとって資金調達やC×Oの採用など、経営や人事に関する悩みも大きいかもしれません。ただ、千葉道場も『Catch The Star』を掲げていますし、千葉さんも常々『大きな目標を持て』と仲間たちには話しています。ですので、大きな目標や志といったところをみんなでもっと語り合う場であってほしいなと思っています」。

「千葉道場というコミュニティは素晴らしい活動をしている場なので、志を語り合う場所であると、さらに前面に押し出すいいんじゃないかなと個人的には思っていますね。高みにあるスターを見て、飛躍しないと絶対届かないところに届くための議論をすることが非常に重要だと思います。そこに付いてくれる企業も数がさらに増えてくる気がするんですよね。そういう夢を語り合えるような、より高みを目指すコミュニティが日本には少ないかなと思います」。

「日本を見ていて、個人的に課題に思ってるのは2000年代に起業した人たちと三木谷(浩史)さんや藤田(晋)さんや南場(智子)さんといった起業家の方々と交流がなくなってきていると思うんですね。僕たちがもっとがんばって、それを繋げられるようにしていくことも大事かなと思っています」。

「起業をして会社を大きくできた人たちは今、ギブをする側に回っています。当然、僕を含めてそういう社会的責任があります。ゼロイチを作る起業家の応援は僕たちは当然するんですが、僕たちが逆に教わる場があるとすごくうれしいですよね。千葉道場さんがその役割を担ってくれたら、僕もぜひ参加したいし、貢献したいなと思います」。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?