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不可解な音

これまで何千件の音声解析を行なってきたか、4000件を超えた時点から数えていないのでもうわかりません。これだけのお問い合わせをいただいていたら、中にはどうにも科学的に説明がつかない、不可解な音が寄せられる事があります。

少し前に、文化放送にゲスト出演させていただいた際に話した内容ではあるのですが、ご挨拶がてらひとつこんなお話をさせていただこうと思います(暑くなってきましたし)。

文化放送 上地由真のワンダーユーマンにて

これは実際にあったご依頼で、こういったラジオやメディアへの紹介許諾を得ているものです。

夫婦が購入した中古の一軒家での出来事


結婚して8年目を迎えたある夫婦が、ついに念願の一軒家を手に入れました。子供はおらず、二人暮らしを楽しんでいるので、そこまで広くない3LDKの程度の良い中古の物件を購入。まだ新しく築10年程だと言っていました。

入居当日の夜から、どうもゾクゾクし眠れない。それは夫婦共に同じ状況だったようです。遠くで話し声が聞こえるような、台所で物音がしたような、足音がするような、しないような。

そんなことが続き不安に思ったので不動産屋に「まさか事故物件なのでは」と聞いたが、そんな事は絶対にないと言われたという。


ついにその「音」が夢や幻聴などではなく、台所で食器が落ちたり、トイレの洗剤が倒れたり、しかも足音が走り回っていると確信した夫婦は、恐怖と同時に「事故物件を買わせやがって!」という怒りが先立ち、ICレコーダーに録音して証拠として不動産屋に突き出そうと考えたのだそう。

翌日、ICレコーダーをリサイクルショップで安く複数台購入し、いよいよ設置した。設置箇所は寝室、台所、廊下、トイレ、リビング、玄関。

その日は不思議とよく眠れたのだそう。特に音によって起こされることもなかった。
翌朝、出勤前にあちこちのICレコーダーをチェックしても音は入っていなかった。ただ、玄関の棚に設置したICレコーダーのチェックを忘れて、そのまま夫婦はそれぞれの会社に出勤した。

夜、夫婦は自宅最寄りの駅で待ち合わせ、そういえば玄関のICレコーダーをチェックしてなかった事に気づいた。

帰宅しすぐに録音をチェックした。朝7時頃の録音。




いってきまーーーーす!!




という元気な少年の声が入っていた。二人に子供はいない。


千葉音声研究所への依頼はこの声が「屋外のものか屋内のものかの鑑定」であった。
この鑑定は比較的容易なもので、音のマスキング率(どの程度音がくぐもっているか)を解析するのと、夫婦が同じレコーダーの前で出勤時に交わした何気ない会話との音量比較からも導き出せる。音はマイクと音源の間に遮蔽物があると、周波数が削られ音がやや”もこもこ”する。もしいま窓の開閉をできる状況であれば、ぜひ試してみていただきたい。


結果は、


この少年は、マイクから極めて至近距離で発声していることがわかった。少年の音声周波数から年齢も推定した。その結果、ICレコーダーを設置した棚の高さが少年の頭部とほぼ同じ高さではないか、つまり130cm〜140cmほどではないかという私の推察も的中した。
私は淡々とその結果を鑑定書にまとめ納品した。すぐさま夫から電話がかかってきた。

そんなはずはない!私たちは二人暮らしなんですよ!!


千葉音声研究所は科学的に検出された事実しか述べられません。どれだけ事案の経緯を説明されても、それに対し感情移入したり依頼者に有利に働く結果をでっちあげるなどは一切しません。結果を淡々とお伝えするのみです。

明らかにそこに「少年」がいます。
ご依頼者が本当に二人暮らしなのであればそれは・・・・・・


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