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「戦略的プロモーション」について(2023.8.2 北海道議会 食と観光調査特別委員会 質問)

 皆さん、こんにちは。
 北海道議会議員の千葉真裕です。
 令和5年8月2日の食と観光調査特別委員会において、質問を行いました。

一 「戦略的プロモーション」について
 6月21日の「第5期 北海道観光のくにづくり行動計画」外国人関連指標の新数値目標案にかかる質疑において、目標達成に向けて、「戦略的プロモーション」に言及されていますので、インバウンドを対象とした観光プロモーションについて、以下、伺います。
 
 1 プロモーションの戦略性について
 まず、道の、インバウンドを対象とした観光プロモーションについて、具体的にどのような戦略性をもって取り組まれているのか、伺います。
【答弁:大須賀 経済部観光局誘客担当課長】
 道では、「北海道観光のくにづくり行動計画」において、ポストコロナを見据え、観光の高付加価値化や欧米等の市場開拓などを重点的に進めることとしており、毎年度実施している観光客満足度調査のほか、上海やシンガポール等の道事務所や、イギリスやアメリカに設置している現地パートナー、JNTOのレポートやインターネットから得られる情報などをもとに、各国・地域の旅行者のニーズ等を把握しながら、プロモーションの実施する時期や内容等を検討し、効果的な取組みとなるよう努めている。

 2 コロナ禍を経てのプロモーションの戦略性の変化について
 本委員会でも繰り返し指摘しているところですが、コロナ禍を経て、われわれの価値観・ライフスタイルは大きく変容したところです。このことは、観光プロモーションの戦略性にも影響するものと考えます。この点、道はどのように認識し、取り組まれておられるのか、併せて伺います。
【答弁:大須賀 経済部観光局誘客担当課長】
・コロナ禍を経て、旅行の少人数化や、いわゆる「モノ消費」から「コト消費」への転換、アドベンチャートラベルに代表される高付加価値型観光への関心の高まりなど、国内外を問わず、観光へのニーズは一層多様化しているほか、求められる水準が高まってきており、こうした状況に対応することが重要。
・道では、これまでコロナ禍においても、SNS等を通じ、HOKKAIDO LOVE!をスローガンに、海外向けの情報発信を継続的に行ってきたほか、水際対策の緩和に伴い、韓国やタイ、中国など、直行便が再開された国・地域を順次訪問し、現地旅行会社へのセールスコール等を行っており、今後も道事務所や現地パートナーからの情報等をもとに、コロナ禍における各国の旅行需要の変化等を踏まえたプロモーションを効果的に実施してまいる。

 3 プロモーションといわゆる「着地整備」の関係性について
 次に、プロモーションといわゆる「着地整備」についてであります。
 地域の観光資源の磨き上げや受入環境の整備などを「着地整備」と呼びます。
 道の、観光にかかる着地整備の取組み等については、改めて議論をしたいと思いますが、道は、観光にかかる「プロモーション」と「着地整備」の関係性について、どのように認識しているか、伺います。
【答弁:近藤 経済部観光局長】
・本道は、豊かな自然や食、様々な体験メニューが楽しめるアウトドアなど魅力的な観光資源に恵まれ、海外市場の動向やニーズを踏まえ、これらの資源をさらに磨き上げ効果的に発信していくことで、インバウンドの新たな取込みも期待できると考えている。
・そのためには、道や関係機関が有する機能やオープンデータなどを効果的に活用し、各国・地域、階層などに応じた、きめ細かいマーケティングを行うとともに、それをもとに旅行者のニーズを踏まえたプロモーションと観光地づくりを一体的に実施しながら、それぞれの取組みを高め合っていくことが重要と認識。

 4 プロモーションの効果測定について
 プロモーションに戦略性を持たせる以上、そのプロモーションの効果について検証し、その結果を次の取組みに反映させていくことは必要不可欠と考えます。
 現在、道では、観光プロモーションの成果指標(アウトカム)をどのように設定されているのか、また、具体的な効果測定の手法を採っているかについて、併せて伺います。
【答弁:槇 経済部観光振興監】
 
テレビCMやネット広告事業については、延べ視聴率や視聴回数、SNS情報発信事業では登録者数、現地パートナー事業では、旅行会社による旅行商品造成数などをKPIとして設定し、事業の実績や成果の検証に役立てている。
 計画の目標指標として設定している観光消費額単価、観光入込客数、満足度などの状況を踏まえながら、各種事業の検証を行い、より効果的なプロモーションとなるよう努めてまいる。 

(指摘:千葉 真裕)
 今回は、観光プロモーションについて伺ってまいりました。
 プロモーションは、マーケティングの重要な要素のひとつではありますが、一方で、コストが青天井となってしまう危険性を孕むものです。 プロモーションを効果的に実施するためには、しっかりした戦略に基づく必要があるわけですが、今回の1問目・2問目の答弁は、実質的には「北海道観光のくにづくり行動計画を基にプロモーションを行う」といった内容にとどまり、プロモーション戦略の具体について語られなかったことは誠に残念です。
 次に、プロモーションと着地整備の関係について、答弁では、「プロモーションと観光地づくりを一体的に実施する」とのことでしたが、いくらプロモーションを頑張っても、肝心の中身が充実していなければ、旅行者に選ばれない、或いは、リピーターにつながらないという認識、言い換えれば、着地整備はプロモーションを行う前提であるという認識をしっかり持っていただきたいと思います。
 次に、プロモーションの効果測定について、現状の成果指標(アウトカム)は、延べ視聴率や視聴回数、SNS登録者数、旅行会社による旅行商品造成数などをKPIとして設定しているとの答弁でしたが、これらが増加すればターゲットの来道や道内での消費が増加すると、道が考えているのだとすれば、その考えには論理の飛躍があると言わざるを得ません。
 私は、今回の一連の答弁を通じて、道が「戦略的プロモーション」という言葉を多用しながら、「プロモーション戦略」を十分に描き切れていないのではないかという印象を持ちました。
 「戦略的プロモーション」を標榜するのであれば、戦略目標が明確でなければなりません。これは、プロモーションという手段によって実現できる範囲のものでなければ事後的な効果検証ができないことから、おのずと「北海道観光のくにづくり行動計画」の外国人関連指標の数値目標とは別のものになるはずであります。しかしながら、道が、この点について十分な検討や整理ができているとはいいがたいと考えます。
 プロモーション戦略について、外部有識者等のお力も借りながら、しっかり検討・整理し、明確なプロモーション戦略のもと、文字どおり戦略的プロモーションを行っていただくよう強く指摘して、今回の私の質問を終わります。(了)


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