2024.6.28 北海道議会 予算特別委員会(第1分科会:保健福祉部所管事項)質問
皆さん、こんにちは。
北海道議会議員の千葉真裕です。
令和6年6月28日、第2定例道議会の予算特別委員会(第1分科会)において、質問を行いました。
一 子ども施策について
はじめに、子ども施策について伺います。
(一) 児童相談所の体制強化について
まず、児童相談所の体制強化についてであります。
令和元年6月、札幌市内のマンションにおいて、当時2歳の女の子が、食事も与えられず、母やその交際相手からの激しい暴行を受け、衰弱死するという極めて残酷で、痛ましい事件が起きてから5年が経過しました。
令和2年3月に、札幌市は検証報告書をまとめましたが、そのなかでも、札幌市の児童相談所への通報が何度もあったにも拘わらず、虐待と判断されず、子どもの命を守る一時保護等の対応が行われなかったことや、近隣住民からの通報を受けた警察からの児童相談所職員の同行要請にも応じなかったなどの問題が指摘されました。
この児童相談所の対応が少しでも違っていれば、尊い命が失われるという最悪の事態を防ぐことができたと考えられ、こうした悲劇は決して繰り返されないよう、事件を風化させてはならないと考えます。
児童虐待による痛ましい死亡事案が、令和3年度、全国では、心中以外の虐待死事案では50例、心中による虐待死事案は18例となっております。
また、令和4年度に全国の児童相談所が対応した児童虐待相談の件数は、
21万9,170件と、10年前と比べると3倍以上に増えています。
国では、こうした虐待の増加等に対し、児童福祉司の増員や、子どもへのカウンセリング等の充実を図るため、児童心理司の増員などを行ってきています。
このように痛ましい子どもの死亡事例や減ることのない虐待相談に対しては、適正な一時保護等の対応がより重要となるなど、児童相談所の体制強化が必要と考えますので、以下、伺います。
1 一時保護の件数について
道の児童相談所において、一時保護を行ったケースはどのくらいあるのか、また、その保護理由の割合はどのくらいなのか伺います。
【答弁:野邊 保健福祉部子ども政策局虐待防止対策担当課長】
一時保護の件数などについてでありますが、令和4年度の北海道の児童相談所における一時保護の件数は1,644件であり、そのうち、児童相談所に併設の一時保護所で保護したものが933件、里親や児童福祉施設へ委託したものが711件となっております。
また、一時保護の理由としては、虐待が全体の45.6%と最も多くなっており、次いで保護者の傷病などの養護に関する事情36.2%、子どもの性格行動や適性に関するアセスメント10.9%、子どもの非行6.6%となっております。
2 一時保護を行うケースについて
一時保護は、子どもの安全確保のために行うものと考えますが、具体的にどのような場合に保護を行っているのか、伺います。
【答弁:野邊 保健福祉部子ども政策局虐待防止対策担当課長】
一時保護に至る事例などについてでありますが、一時保護は、子どもの安全を迅速に確保し適切な保護を図ること、又は、子どもの心身の状況その置かれている環境その他の状況を把握することを目的に行われるものです。
一時保護に至る主な事例としては、迅速な保護を目的とするものとして、虐待等の理由により家庭から一時的に引き離す場合、保護者の死亡や逮捕、入院など適当な保護者がいないために緊急保護する場合、子どもの行動が自己又は他人に危害を及ぼす恐れがある場合、また、子どもの心身の状況把握などを目的とするものとして、施設などに措置入所後、施設に馴染めないなどの理由から、改めて判定を行う必要がある場合、子どもの精神的問題を軽減、改善するために指導を行う場合などがあります。
3 一時保護所での生活について
一時保護が行われると、虐待をする親から隔離され、子どもの安全は確保されますが、家庭での生活とは異なり、様々な制約があると思います。児童相談所に併設されている一時保護所での生活はどのような状況なのか伺います。
【答弁:野邊 保健福祉部子ども政策局虐待防止対策担当課長】
一時保護所での生活についてでありますが、一時保護所では、子どもの権利擁護の観点から、制約は必要最小限としつつも、集団生活となるため、危険物や貴重品等の子どもの福祉を損なう恐れがある物の持ち込みを禁止するなど、安全面等に配慮した一定のルールを定めているほか、規則正しい生活リズムを身につけるため、起床や就寝、食事や入浴などの時間が定められ、日課に沿った生活を送ることになります。
一時保護所に入所する子どもたちは、一時保護を要する背景も虐待や非行など様々であり、また、年齢も幅広いことから、児童相談所では、食事や入浴など生活面における支援や、家庭から離れた慣れない生活に不安を抱える子どもの心のケアなど、子どもの状況に応じた支援に努めております。
また、一時保護所では、意見箱を設置したり、外部の意見表明支援員が定期的に訪問し、子どもの意見形成や意見表明を支援する活動を行うなど、子どもに寄り添った取組みを行っております。
4 一時保護所の環境整備について
子どもたちは、虐待や保護者の傷病等の事情によって、一時保護所で生活することになり、決して短くない期間を過ごさなくてはならなくなるため、居住スペースの環境は重要であると考えます。
これまで、道の児童相談所では改築等によって、環境改善等に取り組んでいますが、今年度予定されていた旭川と室蘭の児童相談所の増改築工事について、国への交付金申請が不採択となったため、遅れがでていると聞いているところです。
児童の養育環境等の改善を図るためには、指令前着手を含め、早急に工事を進めることが必要と考えますが、道としては、どのように対応していくのか伺います。
【答弁:野澤 保健福祉部子ども応援社会推進監】
旭川及び室蘭児童相談所の増改築工事についてでございますが、道では、今年度の旭川、室蘭児童相談所の増改築経費の一部に充てられる交付金を特定財源として得られるよう、国に対して申請しておりましたが、当該交付金に対する全国自治体の要望が多く、国の想定を大きく上回り、予算額が不足することとなりました結果、国への申請が不採択となり、増改築工事に遅れが生じているところでございます。
道では、現在計画しております旭川、室蘭児童相談所の増改築が進められないと、一時保護所をはじめ、子どもの養育環境や職員の執務にも影響がありますことから、国に対し、予算の確保等について申し入れますとともに、全国知事会とも連携いたしまして、早期の補正予算対応により、令和6年度予算枠を確保することなどの、緊急提言を行ったところです。
一時保護は、子どもたちにとりまして、不安が大きい状況でございまして、個別ケアなど、より手厚い対応が求められることから、今議会終了後、速やかに、道として、国に対し、強く令和6年度補正予算の確保等を要望し、令和7年度当初予算編成に際しましても、同じ事態を引き起こすことのないよう申し入れ、旭川、室蘭児童相談所の増改築が進められますよう、取り組んでまいります。
(指摘:千葉 真裕)
旭川と室蘭の児童相談所の増改築については、いずれも相当な費用がかかるとのことで、道単費による対応は難しいようでありますので、国へ粘り強く働きかけ、一刻も早く増改築が進むようご対応いただきたいと思います。
5 今後の対応について
次に、道としては、環境整備を含め、児童相談所の体制強化に向けて、どのように取り組んで行くのか、今後の対応について伺います。
【答弁:野澤 保健福祉部子ども応援社会推進監】
児童相談所の体制強化に向けました今後の対応についてでございますが、道ではこれまで、「児童虐待防止対策体制総合強化プラン」や「一時保護ガイドライン」等の国の指針に基づき、児童福祉司や児童心理司の増員による体制強化や、実践的なカリキュラムに基づく研修を通じました職員の専門性・対応能力の向上などを図ってきたところでございます。
また、施設の老朽化に加えまして、一時保護児童の権利擁護と個別支援の実施、強化プランに基づく職員の増員などによる執務室等の狭隘化への対応等のため、中央、函館、北見の各児童相談所につきまして、計画的に改修工事を行い、入所児童等の環境改善を図ってきたところです。
道といたしましては、今後も、国の指針等に基づきまして、適切な職員体制の確保や専門性の強化に努めますとともに、今般、国から示されました一時保護施設の設備・運営基準を踏まえまして、子どもたちが生活する環境の整備を進めるなど、児童相談体制を強化し、子どもたちが社会から守られ、安心して、かつ健やかに生活できる地域づくりを推進してまいります。
(二) 里親制度について
次に、里親制度についてであります。
何らかの事情により、家庭での養育が困難となった子どもに対し、温かい愛情のある家庭環境のもとで、養育を提供する里親制度は、里親宅における家庭での生活を通じて、里親との絆や繋がりを形成するなど、子どもたちの健やかな成長を支える重要な制度であると考えます。
平成28年の児童福祉法の改正では、施設、里親などの社会的養護については、「家庭養育の優先」、すなわち、家庭的な環境である里親のもとで養育していくことを優先することが原則とされ、また、様々な特性をもった子どもを養育する里親に対する相談支援や養育に関する研修のほか、里親の新規開拓など、里親を支援する業務、いわゆるフォスタリング業務を、都道府県が実施することとされました。
さらに、本年4月1日に施行された改正児童福祉法では、里親に対する支援を強化するため、里親支援を専門的に行う児童福祉施設として、「里親支援センター」が、新たに創設されることとなりました。
虐待件数が高止まりする中、社会的養護を必要とする子どもは、親との絆や繋がりをうまく築けないことはもとより、他者との関係が適切に築けない、学校等への集団にうまく適応できないなど様々な課題を抱えています。
また、予期せぬ妊娠で生まれた子どもで、親が養育できないなど、こうした子どもを家庭に迎え入れて養育を行う里親委託は、これまで以上に活用されるべきと考えます。
先月には、総務省の行政評価局が、里親の保育所優先利用が現場に浸透していない実態があるなど、里親への支援が不十分として、子ども家庭庁に勧告をするなど、里親を積極的に活用することが求められており、里親への包括的な支援が必要と考えますので、以下、伺います。
1 里親登録数等の現状について
はじめに、里親の現状について、里親の登録数と施設や里親等のもとで生活している子どものうち、里親等で生活している子どもの割合を表す、里親委託率が、どの程度進んでいるのか、それぞれの平成28年の法改正時点と直近の状況を伺います。
【答弁:野邊 保健福祉部子ども政策局虐待防止対策担当課長】
里親の登録数と里親委託率についてでありますが、道内の登録数は、道立の児童相談所分は、平成28年度末で532世帯、令和4年度末で605世帯、札幌市の児童相談所分は、平成28年度末で247世帯、令和4年度で411世帯と、全道合計で、779世帯から1,016世帯と237世帯の増加となっております。
次に、里親委託率についてでございますが、道立の児童相談所分の委託率は、平成28年度末で30.9%、令和4年度末で34.8%と、3.9%の増加、札幌市の児童相談所分は平成28年度末で24.7%、令和4年度で37.5%と2.8%の増加、全道の委託率は、28.5%から35.8%と7.3%の増加となっております。
2 道の里親に対する支援について
児童福祉法では、里親を支援する業務、いわゆるフォスタリング業務を、都道府県が実施するよう定めていますが、現在、道は里親に対してどのような支援を行っているのか伺います。
【答弁:野邊 保健福祉部子ども政策局虐待防止対策担当課長】
里親に対する支援についてでありますが、道では、児童相談所職員が里親宅を定期的に訪問し、里親や子どもと面接し、生活状況等を把握のうえ、子どもの養育に関する助言や、里親が孤立しないよう里親同士の相互交流を目的とした里親サロンを開催しております。
また、毎年10月の里親月間における重点的な周知・広報活動などの普及啓発の取組みのほか、児童養護施設と連携した専門性向上のための研修や北海道里親会連合会と連携した里親の新規開拓などの取組みを行っております。
令和2年度から各児童相談所に里親支援を専門とする児童福祉司を配置し、組織体制の強化を図ったところでございます。
3 現状の課題について
里親登録数、里親委託率と道の里親に対する支援について伺いましたが、それらを踏まえ、現状の課題について、どのように認識しているのか伺います。
【答弁:野邊 保健福祉部子ども政策局虐待防止対策担当課長】
現状の課題についてでありますが、道では、これまで児童相談所に配置した里親支援専門の児童福祉司の活動を通じて、関係機関と連携しながら、里親支援に取り組んでおりますが、里親登録数については、一定程度、増加しているものの、全体の約4割が、60代以上と高齢化が進んでおり、また、里親委託率が、平成28年の法改正後、6年間で3.9%の増加となっておりますが、近年は、横ばいで推移している状況にあります。
こうしたことから、道といたしましては、里親登録数の増加や里親委託率の向上に向け、里親制度の普及啓発や里親の新規開拓のほか、里親が、様々な特性を持つ子どもを受け入れることができるよう、養育技術の向上に向けた研修や養育に対する不安を解消するための訪問支援などの取組みを一層、進めることが重要と考えているところでございます。
4 里親支援センターの概要について
全国的に、里親委託が更に進められている中、本年4月1日に施行された改正児童福祉法により、新たに創設されることとなった「里親支援センター」は、保育所、児童養護施設などと同じく、児童福祉施設の1つとして位置づけられたことから、本定例会でも、里親支援センターの設備や運営に関する基準を条例で定めるため、「北海道児童福祉施設の設備及び運営に関する基準を定める条例の一部を改正する条例案」が提案されています。
このセンターの体制や業務内容など、概要について伺います。
【答弁:野邊 保健福祉部子ども政策局虐待防止対策担当課長】
里親支援センターについてでありますが、センターは、児童相談所の業務負荷が著しく増大する中で、里親支援の強化を図る必要があることや里親や子どもが、相談しやすい環境を整え、一貫した体制で、継続的に里親への支援を提供するため、今般の児童福祉法の改正により、新たに創設されることとなったものです。
センターの設置及び運営の主体は、地方公共団体、または社会福祉法人等とされており、職員は、センター長、里親リクルーター、里親等支援員、里親トレーナーの4つの職種を専任で配置することとされております。
また、業務の内容につきましては、里親制度の普及促進及びリクルート業務、里親への研修業務、里親と子どものマッチングなどの委託推進業務、里親への訪問支援などの養育支援業務、子どもの自立を見据えた相談援助などの自立支援業務を行うこととされております。
5 里親支援センターに対する認識について
センターが設置されることにより、里親への支援に対して、どのようなことが期待されるか伺います。
【答弁:堤 保健福祉部子ども政策局子育て支援担当局長】
里親支援センターの設置についてでありますが、道では、これまで、児童相談所や北海道里親会連合会、児童養護施設などの関係機関が連携して、里親の新規開拓、里親の養育技術の向上に向けた研修、里親宅への定期的な訪問等による里親、子どもへの相談支援などの里親支援を実施してきたところでございます。
センターを設置することで、センター長、里親リクルーター、里親トレーナー、里親等支援員が、専従のチームとして、こうした取組みを担うことにより、これまで以上に、包括的かつ重層的な支援の提供が可能となるものと考えております。
また、センターは、委託決定の権限を持つ児童相談所とは異なる立場にあるため、里親にとって、より相談しやすい環境となり、里親や子どもたちの思いに寄り添ったサポートにつながるものと捉えており、センターの活動により、里親の新規開拓、里親の養育技術の向上や養育不安の解消が図られ、より一層の里親委託の推進に寄与するものと考えております。
6 里親のもとを離れ自立を目指す子どもへの支援について
これまでは、里親に対する支援について伺いましたが、一方、里親のもとを離れ自立を目指す子どものなかには、生活に不安を抱えている方々も多いと聞くところです。こうした方々に対する支援について伺います。
【答弁:野邊 保健福祉部子ども政策局虐待防止対策担当課長】
措置解除後の子どもたちに対する支援についてでありますが、里親に委託された子どもたちは、委託措置を解除された後も、家族に頼ることができず、社会の中で自立して生活していく中で、経済的なことや、仕事、人間関係など、生活の様々な場面で困難を抱える場合が多いものと認識しております。
道では、これまで、自立のために支援が必要な子どもたちに対し、個々の状況に応じて、生活費や家賃などの経済面での支援や就職相談など、様々な支援を実施してきたほか、本人の希望や関係機関の意見を踏まえ、支援コーディネーターが、社会的な自立に向けた計画を立て、継続した支援を実施してきたところです。
また、本年度から、社会的養護を経験した方や虐待経験などがありながらもこれまで公的支援につながらなかった子どもたちを含め、相互に交流を行う場所を開設し、情報の提供、相談及び助言、支援に関する関係機関との連絡調整、その他、必要な事業を行う社会的養護自立支援拠点事業に取り組んでいるところです。
7 今後の里親制度の推進について
平成28年度の児童福祉法の改正による家庭養育優先の考え方のもと、里親制度の推進に取り組んできたと承知していますが、今般の児童福祉法の改正による里親支援センターの新設等を踏まえ、道は、今後どのように、里親や里親のもとを離れ自立を目指す子どもたちへの支援に取り組んでいくのか伺います。
【答弁:野澤 保健福祉部子ども応援社会推進監】
今後の取組みについてでございますが、虐待など、様々な事情により、親と暮らすことができない子どもたちを家庭に迎え入れて養育していただく里親制度は、里親との愛着関係の中で養育を行うことにより、子どもたちの健やかな成長を支える、重要な制度であると認識しております。
また、年齢等により、里親への措置が解除される子どもたちが、社会の中で、自立できるよう、支援していく必要があるものと考えております。
このため、これまでの里親支援の取組みを着実に行いますとともに、今後は、里親へのより効果的な支援を行うための、里親支援センターのあり方の検討をスピード感を持って進めますほか、本年度から実施している社会的養護自立支援拠点事業により、措置解除された子どもたちの孤立を防ぎ、必要な支援に適切につなげる取組みを着実に進めてまいります。
(三) 児童扶養手当に係る不適切な事務処理について
次に、児童扶養手当に係る不適切な事務処理についてであります。
先日、釧路総合振興局において、2019年度から2024年度までの間、児童扶養手当の支給要件の確認が不十分のまま、要件を満たしていないと思われる10名に対して手当が支給されていたとの発表がありました。
受給者が返還を求められるなど、大きな影響を受けることが考えられることから、今後の対応などについて伺います。
1 児童扶養手当制度について
児童扶養手当は、ひとり親家庭等の生活の安定と自立の促進に寄与するための手当と承知していますが、この児童扶養手当とはどのような制度なのか、その概要を伺います。
【答弁:和田 保健福祉部子ども政策局子ども家庭支援課長】
児童扶養手当制度についてでございますが、児童扶養手当は、ひとり親家庭等の生活の安定と自立の促進に寄与し、子どもの福祉の増進を図ることを目的とし、児童を監護している父または母等の養育者に支給される制度であります。
支給対象は、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの児童となりますが、対象児童が政令で定める程度の、重い障がいの状態にある場合は、20歳に達する日まで支給されるものでございます。
支給額につきましては、家庭の所得に応じて決定され、子どもが一人の場合は、最大で月額45,500円、二人目以降には、さらに加算額が設定されており、年6回支給されているところです。
2 今回の事案について
今回発覚に至った経緯や過大支給となった主な原因は何なのか、また、現時点で把握している過大支給額はどのくらいになるのか、伺います。
また、今回対象となった受給者によっては、一括で返還することが困難な方もいらっしゃると思いますが、こういった場合の対応についてどのように考えているのか伺います。
【答弁:和田 保健福祉部子ども政策局子ども家庭支援課長】
事案の発生原因などについてでございますが、今回の事案は、釧路総合振興局において、18歳到達以降も、政令で定める程度の障がいの有無について、診断書など関係書類の確認が不十分なまま、引き続き手当を支給していたもので、釧路管内から転居した手当受給者について、転入先管内の振興局による精査で発覚したものであります。
釧路総合振興局における過大支給の状況は、対象者10名、過支給額の総額は約300万円、一人当たりの最大額は約90万円となっております。
釧路総合振興局においては、対象者に速やかに謝罪した上で、過支給となった手当について、できるだけ対象者のご負担の少ない方法で返還いただけるよう、調整を進めていくこととしているところでございます。
(指摘:千葉 真裕)
ただいまの答弁で、「確認が不十分」とのことでありましたが、再発防止につなげるためにも、今回の事案発生の原因については、しっかり調査を行っていただくよう、指摘をいたします。
3 今後の対応について
次に、このような事案が発生する可能性は釧路に限った話ではないと考えますが、本件事案発生後、道としてはどのように対応しているのかを伺うとともに、今後、同様の事案を発生させないために、実効性のある再発防止策を講じる必要があると考えますが、どのように対応する考えなのか伺います。
【答弁:野澤 保健福祉部子ども応援社会推進監】
今後の対応についてでございますが、道では、今回の事案発生後、直ちに全ての振興局に対し、同様の事案が発生していないか調査を行い、現在、確認しているところでございまして、結果を踏まえまして必要な対応を行っていく考えです。
今般の事案につきましては、振興局における担当者の制度の理解不足や業務のチェック体制、本庁との連携不足などが主な発生要因でありますことから、改めまして、事務処理方法を精査し、道が作成しております「事務取扱に関する留意事項」の見直しを行いますとともに、各振興局と本庁との十分な連携、情報共有や、繁忙期等におけます特定職員への業務集中の適正化を図りますほか、今後、早期に国の協力のもと、各振興局の事務担当者を対象といたしました実務研修を新たに実施するなど、二度とこのような事案を発生させることのないよう、再発防止に努めてまいります。
(指摘:千葉 真裕)
ただいまの答弁で、「繁忙期等における特定職員への業務集中の適正化を図る」との答弁がありましたが、繁忙期等に限らず、業務の経験年数等も踏まえ、職員の業務量が適正であるかについてもしっかり検討いただくよう、指摘をいたします。
二 医療体制について
(一)医療DXの推進について
次に、医療体制について伺います。
国は、「骨太方針2023」において、デジタル社会の実現に不可欠なデータ基盤の強化を図るとし、医療分野においても、診断や治療、薬剤処方等の情報を共有化できるよう、医療DXの取組みを推進しています。
道においても、本年3月に策定した「第四期・北海道医療費適正化計画」において、医療の効率化や安全の確保、質の向上の観点から、個人情報の保護に十分配慮しつつ、医療DXの取組みや地域特性を踏まえてICT化の取組みを支援するとしていますので、以下、医療DXの取組みについて伺います。
1 電子カルテの導入状況について
国は、医療DXの一環として、いわゆる「マイナ保険証」のオンライン資格確認システムを拡充して医療情報プラットフォームを構築し、電子カルテ情報の共有が可能となるよう検討を進めています。
診断や治療に関する情報をデジタル化する上で、医療機関における電子カルテの導入が不可欠となりますが、本道における電子カルテの導入割合は、全国と比較してどのような状況にあるのか伺います。
また、医療機関において、電子カルテを導入した場合の効果についても併せて伺います。
【答弁:川上 保健福祉部地域医療推進局地域医療課長】
電子カルテシステムの導入状況などについてでありますが、国が3年ごとに実施している医療施設静態調査によると、道内における導入率は、令和2年10月1日現在、病院は46.1%で、全国の54.1%と比べ8ポイント下回っており、診療所は46.6%で、全国の49.9%と比べ3.3ポイント下回っております。
導入の効果としては、診療情報の管理や検索が容易になるなど、医療機関における業務の効率化が図られるとともに、患者の方々にとっては、受診待ち時間の短縮につながるなど、医療サービスの向上が見込まれているところでございます。
2 電子処方箋の導入状況について
次に、電子処方箋は、従来、紙で発行していた処方箋を電子化するもので、医療提供体制の効率化はもとより、医療安全の向上にも有効であるとされています。
国は、令和5年1月から電子処方箋管理サービスの運用を開始したと承知していますが、道内の医療機関と薬局は、どの程度、導入しているのか伺います。
また、電子処方箋の導入によって、具体的にどのようなメリットがあるのか併せて伺います。
【答弁:吉田 保健福祉部地域医療推進局医務薬務課長】
電子処方箋の導入状況などについてでございますが、導入施設数とその割合について、施設種別毎に申し上げますと、本年6月2日現在、病院は2施設で全体の0.4%、医科診療所は79施設で2.9%、歯科診療所は3施設で0.1%、薬局は704施設で30.8%となっております。電子処方箋を導入する医療機関や薬局では、「電子処方箋管理サービス」システムに登録された個々の患者の処方履歴を確認することで、処方時や調剤時に併用できない薬や重複投薬を防止することができ、医療安全の向上に繋がるほか、患者の方々にとっては、紙の処方箋やお薬手帳の持ち運びが不要になる、といったメリットがあるところでございます。
また、オンラインによる診療と組み合わせた場合は、診療から調剤までオンラインでの対応が可能となりますことから、自宅で医療が受けやすくなるなど、患者の利便性向上にも繋がることが期待されるところでございます。
3 電子処方箋の活用・普及促進事業について
国は、医療機関や薬局における電子処方箋の導入を促進するため、令和5年2月から、医療情報化支援基金(いわゆるICT基金)による補助を行っていますが、さらに、令和6年度からは、ICT基金補助に加え、都道府県が電子処方箋の導入費用を補助した場合、国が、その3分の2を補助する「電子処方箋の活用・普及促進事業」を創設しました。
現在、道では、「電子処方箋の活用・普及促進事業」を未だ実施していないと承知していますが、補助制度の内容と他県の取組状況について伺います。
【答弁:吉田 保健福祉部地域医療推進局医務薬務課長】
電子処方箋の活用・普及促進事業についてでありますが、国が、今年度から開始したこの事業は、病院、医科診療所、歯科診療所、薬局を対象とし、電子処方箋を初めて導入する場合や、既に導入している施設が一度の処方で複数回使用可能なリフィル処方箋に対応する場合などのシステム改修等を補助するものでございます。
また、補助率は、病院の場合は6分の1、診療所と薬局の場合は4分の1とされており、補助上限額は、施設の区分や導入内容により異なり、例えば、初期導入と機能追加導入を同時に行う200床以上の病院では100万3,000円、薬局では、13万8,000円となります。
なお、他県の取組状況につきましては、現在、東京都をはじめ19の都府県におきまして今年度中の事業開始が予定されているところでございます。
4 道における取組みについて
医療提供体制の効率化はもとより、患者さんの利便性向上や医療安全の向上を図るためにも、本道における電子処方箋の導入を積極的に推進する必要があると考えますが、道は、今後、どのように取り組んで行くのか伺います。
【答弁:東 保健福祉部地域医療推進局長】
今後の取組みについてでございますが、電子処方箋は、医療提供体制の効率化はもとより、併用できない薬や重複投薬を防止することができるなど、医療安全の向上にも資するものであり、医療機関や薬局、患者の方々双方にとって有益なものと考えております。
こうした中、導入に当たり、システム改修等を行う事業者の対応の遅れや事業者への発注が込み合うことで、医療機関が速やかに導入できないことが懸念される、といった声が聞かれますことから、道では、現在、約8,300施設を対象に電子処方箋の導入時期などに関する意向調査を実施しているところでございます。
道といたしましては、今後、医療機関等に対し、導入による効果などの周知に努めながら、意向調査の結果を踏まえ、導入を進める上での課題について国に改善を要望するとともに、希望する施設が早期に導入できるよう適切に対応してまいります。
三 孤独・孤立対策について
最後に、孤独・孤立対策について伺います。
我が国では、人口減少や未婚化、晩婚化などを背景に、今後、単身世帯や単身高齢者世帯の増加が見込まれることから、深刻化が懸念される孤独・孤立問題に総合的に対応するため、昨年、孤独・孤立対策推進法が制定され、本年4月から施行されました。
さらに、6月11日には、国の対策推進本部において、同法に基づき、基本的な方針や施策を定める重点計画が決定されています。
道では、同法施行前の令和4年度から国のモデル事業を活用し、いち早く対策に取り組んでおり、令和5年10月には孤独・孤立対策官民連携プラットフォームを立ち上げるなど、孤独・孤立対策を推進してきたと承知しています。
孤独・孤立対策については、昨年の第3定例道議会の一般質問でも伺ったところですが、その後の経過も含め、以下、道の孤独・孤立対策に関する取組みについて、伺います。
(一)孤独・孤立の実態について
国は、孤独・孤立の実態を把握することを目的として、令和3年から毎年全国調査を実施していますが、孤独を強く感じている方がどれぐらいおられるのか、この3年間の推移について伺います。
【答弁:秋田 保健福祉部福祉局地域福祉課長】
孤独・孤立の実態把握に関する全国調査についてでございますが、国では、令和3年から、毎年、全国の満16歳以上の個人2万人を対象に、無作為抽出による調査を実施しております。
この調査の中で、「どの程度孤独と感じるか」を尋ねる質問に対して、孤独感が「しばしばある・常にある」と回答した方の全体に占める割合は、令和3年が4.5%、 令和4年が4.9%、令和5年が4.8%となっており、概ね横ばいの状況で推移をしております。
(二)これまでの取組みについて
令和4年度に道が実施したアンケート調査では、国の調査項目と同じ孤独感を強く感じているとする回答が7.5%となっており、対象が異なるので単純に比較はできませんが、国の調査結果の傾向に照らしても、道内の状況も大きく変わらないと考えます。
孤独・孤立対策について、道のこれまでの取組状況を伺います。
【答弁:秋田 保健福祉部福祉局地域福祉課長】
道のこれまでの取組みについてでございますが、道では、法施行前の令和5年度に、孤独・孤立対策に取り組む全道の行政機関とNPO等民間支援団体で構成する「ほっかいどう孤独・孤立対策官民連携プラットフォーム」を立ち上げたところでございまして、本年5月末現在、411団体の参画をいただき、孤独・孤立の問題に関する理解促進や、構成団体における取組みの好事例の共有のほか、業務連携の機会の提供などを図ってきているところでございます。
また、道の主催により実施した主な取組みを申し上げますと、令和5年度に、当事者や家族の相談に応じる支援者の資質向上を目的としたセミナーの実施や、札幌市の大型ショッピングモールで、休日に啓発イベントを開催しましたほか、今年度は、国が設定している5月の孤独・孤立対策強化月間に合わせ、道庁内の広報スペースでの展示や、全道展開するコンビニエンスストアの店内放送による広報を行うなど広く道民に向けた普及啓発に取り組んでいるところでございます。
(三)地域における孤独・孤立対策の推進について
全道規模の取組みを進めていることは承知しましたが、住民に身近な市町村において、孤独・孤立に悩む方々を支援することも必要と考えます。
道として、今後、どのように対応していくのか、伺います。
【答弁:山谷 保健福祉部福祉局長】
地域における取組みの促進についてでございますが、道ではこれまで、市町村に対しまして、高齢者や障がいのある方、子ども等を含む地域住民が互いに交流できる「場」として、カフェや喫茶店、サロンの開設といった活動を実施する共生型地域福祉拠点の整備を支援してきたほか、孤立死防止のため、「要援護者を地域で支える関係機関連携マニュアル」を作成の上、市町村などに配付し、見守り体制の整備を促してきたところでございます。
こうした取組みに加えまして、今後は、孤独・孤立に悩む方々へ必要な支援が行き届くよう、市町村や市町村社会福祉協議会、身近な相談者である民生委員、民間支援団体などが、それぞれの地域における問題をしっかりと共有できる顔の見える関係づくりがより重要になりますことから、本年度、こうした関係づくりを進めるため、振興局ごとのプラットフォームの設置を働きかけることとしておりまして、地域の関係者に対し、孤独・孤立対策の重要性を丁寧に説明しながら、連携強化につなげてまいります。
(四)単身高齢者を対象とした取組みについて
一方、高齢者人口が増加していく中、高齢者の孤独・孤立への対策も重要と考えます。孤独・孤立の状態は世代を問わず、誰にも生じうるものですが、特に単身高齢者は、外出機会の減少などにより孤独・孤立の状態に陥りやすいと考えます。国勢調査の結果では、令和2年において、世帯主が65歳以上である高齢世帯のうち、単身高齢世帯数は約36万2,000世帯で、高齢世帯全体に占める割合は約37.3%となっており、国の推計では今後も増加が見込まれています。
高齢者が地域とのつながりを保ち、生きがいをもって暮らしていくために、これまで道はどのような取組みを行ってきたのか伺います。
【答弁:菊谷 保健福祉部福祉局高齢者保健福祉課長】
単身高齢者の孤独・孤立状態の予防に向けた取組みについてでございますが、高齢者の悩みや困りごとが深刻化・複雑化しないようにするためには、ご本人や近隣住民、関係機関等からの相談を受けて必要なサービスにつなぐ地域包括支援センターの機能強化や、身近な社会参加の場であります「通いの場」の設置促進が重要です。
このため、道では、地域包括支援センター職員の相談対応力向上のための研修会や、センター間の連携を図るための意見交換会を開催するとともに、個別具体的な課題解決には、振興局職員が直接センターへ出向き、リハビリや口腔ケア等に関する専門的助言を行うなどの技術的支援を行っております。
また、地域の実態や状況に応じて体操や運動、料理教室等の趣味活動などを行う「通いの場」の設置を進めるため、市町村職員等の関係者に対する研修会の開催や、リハビリテーション専門職の派遣による立ち上げ支援等に取り組んできているところでございます。
(五)孤独・孤立対策推進に当たっての課題について
道は、これまでの取組みを通じて、今後、孤独・孤立対策を推進していくに当たり、どのような課題があると認識しているか、伺います。
【答弁:山谷 保健福祉部福祉局長】
孤独・孤立対策推進上の課題認識などについてでございますが、孤独・孤立の問題は、生活環境や雇用環境の変化などにより、年齢や属性にかかわらず、誰にでも起こりうるものであり、当事者の自助努力に委ねられる問題ではなく、社会全体で対応しなければならない問題であることに加えまして、我々一人ひとりが身の回りの人に関心を持ち、できる範囲で困っている人をサポートするといった予防の観点からの取組みも重要と考えているところでございます。
また、孤独・孤立に悩む方々が、可能な限り速やかにご本人の望む生活に戻れるよう、官民が連携・協働し、地域における支援体制を構築することも重要でありまして、そうした様々な課題に取り組む上で、人間関係を築くことが容易ではない社会になりつつある中、何よりも道民の皆様の関心を高め、理解を深めていただくことが大切であると認識しております。
(六)今後の取組みについて
ただいま答弁のあった対策推進上の課題、更には、国の動向も踏まえて、道としては、孤独・孤立対策に、今後、どのように取り組んでいくのか、伺います。
【答弁:古岡 保健福祉部長兼感染症対策監】
今後の取組みについてでございますが、孤独・孤立の状態は、人生のあらゆる段階におきまして、誰にでも生じうるものであり、社会全体の課題として対策を推進することが重要でございます。
このため、道では、道民の皆様の理解増進に向け、各種広報媒体などによる普及啓発に努めてまいりましたほか、様々な関係者が連携・協働し、孤独・孤立対策を推進すべく、官民連携による全道域のプラットフォーム設置などに取り組んでまいりました。
今後は、法の施行を受けまして、国が新たに策定した重点計画に基づき、道として、市町村や民間支援団体などとも協力し、効果的な普及啓発を行っていくため、全道域のプラットフォームの参加団体をさらに増やしてまいります。また、広域・分散という本道の地域特性も踏まえまして、官民連携のもと、孤独・孤立の問題を地域の方々と共有をし、取組みを検討、推進するため、それぞれの地域におきましてもプラットフォームの設置に向けた取組みを進めるなどして、支援を求める声を上げやすく、また、声を掛けやすい環境づくりを進め、相互に支え合い、人と人とのつながりが生まれる社会を目指した取組みを着実に進めてまいります。(了)
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