見出し画像

『わんこの母ちゃん』 【保護犬猫活動】

ぼくはゴンタって名前のワンコ。
おじいさんがつけてくれた名前だ。
優しいおじいさんと、ぼくと、クロって名前の最近うちにやってきたネコと3人で暮らしている。

小さなクロは、雨の日に、ミィミィ鳴いておじいさんの家の庭に入ってきた。
優しいおじいさんは、クロを家に入れて、おふろにいれて、ご飯を食べさせた。

おじいさんがその時こんなふうに言っていた。
「ゴンタや。おまえに出会ったのも、雨の日だったなぁ。
いつも散歩に行くあの公園で、段ボールに入れられて、きゃんきゃん鳴いとったなあ。
このくろんぼも、おまえとおんなじで、可哀想な迷い猫だから、仲良くな。」

ぼくがおじいさんのとこに来たのは、15年前だって。

最近、ちょっと心配なのは、おじいさんが、散歩に連れてってくれる時、脚が痛そうで、胸も苦しそうで、何回も止まるんだ。
ぼくは、おじいさんが痛いなら、散歩なんて行かなくたっていいんだ。
けど、おじいさんは、こんなふうに言うんだ。
「ゴンタや。おまえもわしも、もう歳だなぁ。だから、毎日歩いて鍛えなきゃな。
どっちが長生きするか競争だな。」

ある朝、いつも早起きのおじいさんは、全然起きて来ない。
おじいさんの布団まで行って、吠えてみても、起きない。
近寄って、顔を舐めてみた。
おじいさんの顔は、氷みたいに冷たかった。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
おじいさんの家に僕を迎えに来た人たちが、僕をその日檻の中に閉じ込めた。
檻には、他にもたくさんのワンコがいる。
そう言えば、クロはどうしたんだろう。おじいさんが冷たくなった日からいないんだよな。
でも猫は自由にどこへでも行けるから、きっとまた優しい誰かのところに行ったんだよね。
僕はおじいさんを待つしかなかったんだ。
けど、おじいさんは帰ってこなかった、、、、、、、
代わりに、もう少し若いおじさんたちが迎えに来てくれたから、ここに来るしかなかったんだけどね。

それにしても、たくさんワンコがいるけれど、毎日、一檻ごとにどこかへ連れて行かれて、戻ってこないのは、どうしてだろう。

それから、たまに、人が来て、僕たちを順番に見て、気に入ったワンコを連れて行く。
小さくって可愛い子が連れて行かれるんだ。
きっと、可愛いから、連れて帰って、一緒に住むんだろうな。
僕も誰かが連れて帰ってくれたらいいのにな。
ここにいればご飯はもらえるけど、狭いし息苦しいや。それに寒くて、、、
だけど、僕は、もうおじいちゃんだし、足だって、最近痛くて、ちゃんと歩けないから、そんな僕を連れてってくれる人っていないのかも、、、、、、

そう言えば、誰にももらわれない、年寄りか、体の悪いワンコはしばらくここにいて、つまり、余りもののワンコが、昨日みたいに集団でどこかへ連れて行かれるんだ、、、、、、

そこは、どんなところなんだろう、、、、、、

「こんにちは〜。さあ、母ちゃんのところにおいで!」
ある日、母ちゃんって人が、僕を迎えに来てくれたんだ。

おんなじ檻にいた、片足のないワンコと、僕とおんなじくらいのおじいさんワンコと一緒に、母ちゃんの家に連れて帰ってもらったんだ。
「いらっしゃい。よく来たね。母ちゃんもみんなもおるから、もう大丈夫やで!ちょっと賑やかやけどな。おっちゃんみたいな母ちゃんやけど(笑)スタッフさんたちは、みんな逞しくて優しくって、とにかく愛情たっぷりやで!」

母ちゃんのところには、30頭もワンコがいた。猫もいた。
広い庭があって、暖かい部屋があって、優しい母ちゃんや他にも優しいスタッフさんがいて、天国みたいなところなんだ。
年寄りのワンコ、動けない病気や怪我をしたワンコがたくさんいる。
でもみんな母ちゃんが大好きで幸せなんだ。
母ちゃんの膝は毎日取り合いになるんだから。
母ちゃんは、毎日、笑顔でずっと僕たちの世話をしてくれる。
体を拭いてくれたり、美味しいご飯をくれたり、添い寝してくれる。
お風呂にも入れてくれる。母ちゃんは僕らの世話で忙しすぎて自分はお風呂にもあんまり入れないのに、、、
寝ずに病気のワンコをずっと撫でたりしてくれるんだ。
でも時々、悲しい顔で泣いてるんだ。
年寄りのワンコや病気のワンコが、天国に行く日だ。
「虹の橋を渡っていったね。」と他のスタッフさんたちと涙を流して見送ってるんだ。
だけど、涙をすぐに拭いて、また笑顔で、僕たちの世話に戻ってくる母ちゃん。
また新しい年寄りのワンコを連れて帰ってくる母ちゃん。
母ちゃんは、本当にすごいや。
ずっと母ちゃんと一緒にいたいよ。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
僕ももうだいぶ年だから、最近は、起き上がれないんだ。ご飯もあんまり食べれない。
母ちゃんが心配そうに僕の背中をさすりながら、一生懸命話しかけてくれる。
「しんどいか?しんどいよな。頑張れ。母ちゃんがそばにいるから。寒くないかい?さあ毛布にくるまって、、、」

母ちゃんに抱っこされて、背中を摩ってもらってるから、ちっともしんどくない。ただ眠いんだ。疲れてるんだよ。
眠ればきっと元気になるから、、、、母ちゃん心配しないで。

気がついた時、僕は少し高いところに浮いて、母ちゃんが下に見えた。
僕の眠った体を抱いて、母ちゃんは、号泣している。
あんなに悲しそうな母ちゃんを見ると僕も悲しい。
母ちゃん、僕はここにいるよ!こっちを見て!

目の前に、キラキラした虹の橋が現れたんだ。向こう側には光の束で出来たような島が見える。
あっ!!おじいさんだ!
先にあっちに行ってたおじいさんが迎えに来てくたんだ。

ああ、あっちに渡ればいいんだね。僕が虹の橋を渡る時が来たんだ。

母ちゃんを見下ろすと、涙を拭いて空を見上げていた。
母ちゃん、僕も虹の橋を渡るよ。
母ちゃん大好きだよ。
でも、虹の橋を渡って、あの光り輝く綺麗な世界に行くからね。
おじいさんにもまた会えるんだよ。
母ちゃんに会えて、本当に幸せだったよ。
僕みたいに、たくさんのワンコが母ちゃんのところで、最期まで幸せに過ごして、こうやって、虹の橋を渡って、素敵なところに行けるんだ。
母ちゃんのところが最高の天国だったよ。
だからこの虹の橋は、母ちゃん天国から天国につながる橋だったんだ。
母ちゃん、本当にありがとう。





〜あとがき〜
この物語は 『Protect you 』という、奈良県にある犬猫の保護シェルターを運営されている岸田真紀さんの活動のお話を、風乃がチャリティパーティーに参加した際に聞いた時、あまりに感動したので、帰ったその日に一気に書いた物語です。

年間約10万頭の犬猫が殺処分されている現状に、何かできることはないかと老犬を迎え入れたことが活動のきっかけだったと言われる代表の岸田真紀さんは、殺処分される寸前の、老犬、病気の犬猫、障がいのある犬、気性の激しい犬など、特に譲渡の難しい子達を中心に保護活動を9年続けられています。

愛情たっぷりでも、維持、運営には資金がかなり必要です。
私も、わずかではありますが継続支援をすぐに申し込みました。

この物語を読んでくださった方の中にも、賛同者がいらっしゃいましたら、ぜひ、岸田真紀さんの活動の様子をインスタグラムで見ていただき、そのプロフののリンクより、支援のほどよろしくお願い申し上げます。






岸田真紀さんのInstagramはこちら👇


よろしくお願いします。いただいたサポート費用はクリエイターとして、レベルアップするための活動に役立てるようにいたします。ありがとうございます🥰