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はんなり???!!!着付師物語 第7章③異常な移動距離!!

予定より長いニューヨーク出張を終えた未来は、帰りの飛行機の中だ。フルフラットの座席は小さめの未来には十分大きく、手足を伸ばしてご機嫌さんでくつろいでいると隣の外国人男性が声をかけてきた。
「あなたは日本人ですか?ニューヨークへは観光?」
「いいえ、仕事だったの。」
「へー、どんなビジネス?」
「着物よ。日本の伝統文化、着物の着付のお仕事なの。」
そう言いながら、自分の着付た人たちの写真を嬉しそうに見せた。
「ビューティフル!!」着物姿の女性たちの写真、パーティーの写真、撮影の着付けを頼まれた花嫁の写真などを興味深い様子で見入ってた紳士は、こんなことを聞いてきた。
「実は、私は日本人女性と結婚して娘がいる。今はパリに住んでいるんだけれど、娘にはフランス人のフィアンセがいて、半年後に結婚するんだよ。こんな装いで、パリでウェディングの撮影が出来たら、妻も娘も、それにパリジャンの彼も絶対に喜ぶ。パリまでこんなふうに着物を着せに来てくれないか?それを私からのプレゼントにしようと思うんだ。良いアイデアだろ?」
「パリ!!最高。私は呼ばれればどこへでも行く着付師なの。ついにヨーロッパ上陸!!では、早速、お話進めましょう。」

未来がファーストクラスに、少し無理してでも頑張って乗る理由は、ここにあるのだ。自分がやりたいことは、着物という文化を世界中に広め闊歩することだ。アメリカやヨーロッパやスカンジナビア半島や南半球にでも呼んでくれる顧客がいれば喜んで行くわけで、ファーストクラスに乗ればチャンスがやってくる。

 帰国してすぐに未来はSNSを使って、パリ在住のヘアメイクとフォトグラファーを探した。未来がフォローしている人に、同じ着付師はいない。自分以外の職業で活躍している異業種の人たちに興味があるし、友達になりたいと思っている。
そんなふうにして結婚式の前撮りをするためのスタッフを自分で集め、日程が決まると今度は、またSNSで『5月30日から、ヨーロッパにいきます!!その期間ならどこにでも行くので連絡待ってまーす!』と自らアナウンスしてみる。
すると、例えば現地のヘアメイクやフォトグラファー、着物に興味のある一般人が、連絡をして来る。また、それだけではなく、日本中にいる未来の生徒たちも、「先生が行かれるなら、その機会に、ドイツに住んでいる娘のところに行ってください!」という要望がやってくるから、それも旅程に入れていく。
こんなふうにして、未来の着付師の旅オーバーザ・ワールドが始まったのだ。
なんと言っても未来は、そのフットワークの軽さが売りだから、一度のヨーロッパ遠征で、普通では考えられない距離を移動するのだ。
遠征での様子をSNSで流すと、一年分をまとめての時間差投稿かと思うぐらいにいつも違う国や都市にいる。けれどよく見ると、半月ぐらいの出張の間での移動なのだ。それが面白すぎて、未来の生徒さんが移動距離を計算し、ショート動画にしてしてくれたことがあった。その時の未来の移動の仕方とその距離はこんな感じだ。
大阪→ドバイ→パリ12,700km
パリ→ミュンヘン840km
ミュンヘン→ノルウェイの森1,700km
オスロ→ニース2,200km
ニース→モナコ21km
モナコ→パリ458km
パリ→ロンドン480km
ロンドン→パリ480km
パリ→ドバイ→大阪12,700km
総移動距離31,580km
この呆れるほどの移動の距離と、効率を考えない移動の仕方を見て、また顧客たちにこんな印象を与えるのだ。『未来先生ならどこへでも飛んできてくれる!例えそれが北極圏でも!』
その印象こそが、未来の大きな武器なのだ。


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