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夜明け前の暗さの中で


会社に突然行けなくなった日に、というかそれより少し前ぐらいから夜明け前の空を見たことがある。


それまでも、眠れなくて何度かベットに横たわったまま午前4時頃の空をこっそり覗くようにしてカーテンを捲ったことがあった。
白んだ空に奥の方から微かに差し込み始めている太陽の光。
新しい日を生み出しているその光は、当時の私にとっては「今日も眠れなかった」という残酷な光でもあった。
窓ガラスにそっと触れると、ガラスの感触か外の空気なのかひんやりとした冷たさがじわじわと手のひらを浸食していった。

どこかで「夜明け前が一番暗い」と聞いたことがあったけれど本当だろうか。

私にとって夜明け前の世界は何もかもを失ったように無機質な静けさと微かな希望を含んでただそこに存在しているように思えて、ほんの少しだけ怖かった。


夜明け前が一番暗いと思ったその人は、何を思ってこんな時間まで起きていたのだろうか。

いつの時代の誰がそんなことを思ったのか私にはわからないけど、きっと私のように少しの希望を見つけたくて空を覗き込んだのだろうか。

願わくば、悲しいことでないといいなと見ず知らずの人を心配してしまうほどには私も夜明け前の空に浸食されていたと思う。

怖くて冷たくて無機質だけど、次に夜明け前の空を見るときはその光が希望のように私の心が少しでも前向きになっていますように。

今が夜明け前だと信じて。



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