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コラボレーションコーディネート~地域資源を見つけて観光資源に昇華するために その3~

コラボレーションコディネート(以下CC)は、2つ以上のものごとや2者以上の人々をつなげることで、新たな動きを生み出し、それによって新たな提供価値を生じることを目的として行います。
よく言われる「点から線へ、線から面へ」という地域観光振興における地域資源の掘り起こしから集客装置創出までの典型的な手法がこのCCです。
一方で魅力発掘プロデュースをしていて、もっとも心躍る業務プロセスがこのCCでもあります。
この項では、CC実現に至る各段階を示し、あわせて上手に行うコツを挙げましょう。

タイトル写真:縄文時代の貝塚の貝が5000年ぶりにイタリアンとして復活!
「オリエンタルキッチンイタリアーナ」千葉遊び2014-15冬号


それは縄文時代の貝の収穫からはじまった(笑)
提供「Bay Wave」


1:ひとつの対象のことを考え抜く
AとBをつなげる、という行為なのですが、たいていの場合は、AB同時ではなくて、Aという単体の対象に向かいあっている時にそのAをどうやって売り出すかをとことん考えた末に、Bというパートナーが候補に浮上するケースが多いのです。ですので、おすすめは、最初からCCを考えるのではなく、Aに真摯に向き合い、その課題を解決するために誠心誠意考えることです。(最近の事業では「まず連携ありき」というお達しからスタートすることが増えていますが、その主旨からスタートはしないほうがいいです。企画が散漫になりがちです)

2:Aの魅力を高めることを考える
あなたが魅力を発掘したいと考える対象にAを置いているには、必ず理由があるはずです。つまり、あなたはAの魅力をうっすらかもしれまえんが、なにかしら必ず感じ取っている。ですので、そこを大事にしましょう。そのAの魅力を「さらに強くするには?」と推し進めていきましょう。そう難しいことではないと思います。

3:Aの魅力を表出するために不足しているものを考える
人的資源、予算、機会、場所、時間など。近い将来の具体的な商品化を先に見据えるとその不足分をどうやって解決できるかを考えられるようになります。いわゆる「アウトプットのイメージ」をもつことでリアルな不足部分が見えてきます。蛇足ですが、この段階でのイメージの解像度が高ければ高いほど、後工程が楽になります。

4:Aのパートナーとして候補Bに行きつく
どんなパートナーがふさわしいか、そして、その要件を満たすパートナー候補のうち、どの候補を選ぶか?ここがCCを担う者のセンスや価値観がもっとも問われるフェーズです。そして、多くの事業の成否はこのフェーズでほぼ決定すると言っていいでしょう。方向性が決まったら、候補をリストアップして打電する順番を決めていきましょう。

5:AとBのお互いを紹介し、話しをまとめる
この時には、前述の1-3を行った結果、世の中に出す価値は決まっていることが多いはずです。ここでBにその価値を共有し、Bをお誘いします。なお、この時は三者が同じ場に集って会合することが理想です。そして、必ず「目指す方向性」を語り、価値観を共有すべきです。あなたはここでBさんという新しい仲間を得たことになりますから、意識的にBさんの意見を傾聴しましょう。一度作っていた青写真のディテールなどはいったん捨てたくなるような、もっと良い企画が生まれるケースもままあります。またこの場で大切なことは、話しを持ち掛けた側がAさんのために働くあなただとしても、両者を平等に扱うこと。どちらかに肩入れをしてはいけません。なぜなら、ここで依怙贔屓すると、そこに上下関係あや優先順位が生じて、あとでぎくしゃくしたり不満のもととなります。対等な立場としての認識を三者で揃えましょう。AさんのこともBさんのこともしっかり尊重してください!義務も権利もしっかり話し合いをして均等にしておきます。Bさんの意向を確認したら、契約書やルールなどに盛り込む内容もこの段階で挙げておくといいです。

以上が大まかな流れです。
おわかりかと思いますが、CCを担う者にとっては、上記の4が最も大事です。ですから、普段からAについてはもちろん、Bとなる候補を数多くストックして、気軽に会話ができるような、なんらかの関係性をもっておくといいです。そして、実はBとなりえる候補それぞれに対する自然な尊敬心と愛情があれば、理解も深められ、企画はより研ぎ澄まされ、提供価値も高めていくに違いありません。。

貝塚ジュレー 横からみると貝塚模様に

【私がCCした具体例】
「古代の貝の研究者」×「海辺のイタリアンレストランのオーナー」=縄文時代の貝がイタリア料理として5000年ぶりに復活!!

経緯
2013年民間より千葉市観光課に採用された私は、千葉市の魅力を創出するため精力的に様々な方にお会いして回っていました。その方々が打ち込んでいることを聞いて回っていた中で、学芸員のAさんが、市内の貝塚、加曾利貝塚の貝の大半が「イボキサゴ」という巻貝であり、実はこの貝が、現代もある場所である時期に採れることを教えてくれました。Aさんは有志とともにこの貝を採って、縄文時代の方の食べ方などを研究していたことを知りました。
背景
加曾利貝塚には、できた年代が異なる2つの代表的な貝塚があるのですが、それぞれで堆積した貝の形状が違います。一つの貝塚では巻貝の形そのままが見て取れますが、もう片方の貝塚では、貝のかけらが砕けているのです。これは、学芸員さんの見解だと、貝の食べ方の違いだと推測されるとのこと。そう、私はこの時、加曾利貝塚の本質は「貝」であり、加曾利貝塚をプロモーションするにはイボキサゴが鍵だと感じたんですね。この貝を主人公に「食べる・買う・観る・体験する」の観光の4要素のどこかの魅力を引き出したいと考えた結果、「食」に焦点を絞りました。

進捗

▲BayWaveより https://www.baywave.co.jp/modules/special/index.php?id=19


最初にAさんに随行してメディアの方にイボキサゴ採集を体験してもらい、その様子をレポート。こちらです↓
2014年7月
第7回縄文時代の主役の貝「イボキサゴ採取会・試食会」の1:BayWave

結果
Aさんから貝の形状や味などを詳しく聞いて、以前別の企画でお世話になったことがあるイタリアンレストランのオーナーBさんに話を打電。Bさんは「イボキサゴ」のイタリア料理レシピを数種類開発しコース料理として完成してくれました。アサリに加えてイボキサゴを混ぜたボンゴレパスタから、貝塚の地層をイメージしたデザートのジュレー(写真)まで。Bさんのお店で提供する体験プランを生み出し、リリースしました。当日はAさんにもコメンテーターとしてイボキサゴのことや加曾利貝塚のことなどを、食事中に談話をしてもらい、参加客の興味をさらに搔き立てるひとときとなりました。

発表
発表は、
体験型観光プラン集「千葉あそび2014-15冬号」内のプランとしてリリースしました。

2015年
「縄文の味」イタリアンで復活 「イボキサゴ」貝でフルコース 千葉 - 産経ニュース (sankei.com)

反響・レガシー
千葉市の都市アイデンティティとして「海辺」「加曾利貝塚」があげられていますが、この2つをはじめて結び付けることができたのも大きな手ごたえでした。また、イボキサゴの紹介が博物館以外で本格的に始めたのはこの時が最初で、新聞報道含め、認知度が急速に高まりました。上述のレストランでイボキサゴを使ったメニューが定番になったほか、その後加曾利貝塚独自の主催による体験型プランでもよく取り上げられました。さらに2021年には市内有志による「縄文グルメ推進委員会」が結成され、2023年にはあるプランナーの方のクリエイティビティを刺激し、創作対戦ゲーム「イボキサ碁」として開発され話題となっています。思えば、貝塚のPRのためイボキサゴを見出し、Bさんとのコラボをスタートしたことで、体験型観光プランを作り出したことが、現在につづく縄文グルメプロモーションの先鞭をつけた形となりました。
2018年のプラン

次々と拡大展開してきた「イボキサゴ」を「食材」として生かす取り組み
【千葉あそび(2018秋・冬号)No.13】祝!国「特別史跡」指定1周年記念企画 “イタリアン”で身近に感じる縄文文化(10月13日から) | 千葉市観光協会公式サイト/千葉市観光ガイド (chibacity-ta.or.jp)
2021年
「イボキサゴ」は最古の調味料? 貝塚にちなみ縄文グルメ開発へ:朝日新聞デジタル (asahi.com)
2022年1月
縄文グルメ「千葉市の新名物に」 加曽利貝塚で大量出土の巻き貝・イボキサゴ 現代料理へアレンジ | 千葉日報オンライン (chibanippo.co.jp)
2022年4月
縄文グルメ「千葉市の新名物に」 加曽利貝塚で大量出土の巻き貝・イボキサゴ 現代料理へアレンジ | 千葉日報オンライン (chibanippo.co.jp)
2023年
イボキサ碁(ゴ) - 加曽利貝塚体験プログラム 加曽利JOMONアカデミア (kasorijomon.com)

最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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