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地域資源のストーリー化~地域資源を見つけて観光資源に昇華するために その4~

写真について
(一社)佐賀市観光協会の「幕末・維新の佐賀の賢人たちの人物相関図」。一人ひとりの偉人を、その関係性を調べて一覧にしたことで、そこから物語が見えてくるような構成に仕上げました。2010年に完成した後、後任のスタッフの方に多少修正を施していただいた上で現在もHPにアップされています。ちなみに歴史寸劇脚本作りに大いに参考になりました。
全体図はこちら↓
義祭同盟とは? 佐賀市観光協会公式ポータルサイト サガバイドットコム [sagabai.com]

日本各地の観光振興策を企画する人たちの間で最近流行り言葉のように口にされるのが、「ストーリー化」です。このわかるようでわからない内容をすっきり理解して、実践できるようになりますように!そういう思いで少し記します。
■なぜストーリー化が叫ばれるのか?
ストーリー化が急に脚光を浴びている理由。それは下記の3つと私は見ております。

①   ものが売れなくなってきたから。
「ものからことへ」。物質そのものではなく、その物質が私たちに提供してくれる価値に注目されてきているから。

②   マスよりもリピートの重視
多くの人に商品を買ってもらうよりは、気に入ってくれた人に何度も通ってほしい、買ってほしい、というトレンドが顕著になってきたので、そのためには惹きつける強い魅力が必要。この流れはファンベースマーケティングと合流し、向かう先はブランドの確立です。

③   本物・オリジナリティの訴求を志向
競争に勝つための差別化戦略としても不可欠。そのものならではのことを提供するには、なにかしらのお話をするのが手っ取り早い。そして、それがその商品に対する思いだったり、作り方だったりすると、プロセスエコノミーにも直結します。
おおよそ上記3つが昨今のビジネス環境の変化に起因するものでしょう。

■ストーリー化には一長一短がある

「ストーリーなんて難しいよ、作家じゃないし、文章苦手だし」という人が多いと思います。実際私が向き合った観光業界関係者の多くがここを悩んでいます。
私個人は地域の観光振興とシビックプライドの醸成のための歴史劇の脚本を、まちあるきを含めれば100本以上創作して実施してきて、ストーリーの効果はいやというほど知っているつもりです。しかし同時に上記のようなお嘆きも痛いくらい感じています。なぜなら私も最初から脚本を書きたくて書いたんじゃなく、地域資源を活用してシビックプライド醸成と観光客集客を同時に成立させるために、必要に迫られて物語を作ってきた側だからです。ですから、本音を言えば「ストーリー化」を広く提案はしたくないほうです。
ひとつの物語作品(脚本)を仕上げるには人並以上の忍耐力、集中力が必要で、自分がやっても「しんどい」ことがわかっているからです。
このストーリー化は、確かな見識をもたずに、無理やり作り出したり、やみくもに行うと、「単なる自慢話」や「どうでもいいトリビア」になって、むしろ価値を落としてしまう危険性があることも、私が心から推奨しずらい理由です。
そこで、「ストーリー化」に頼らず、本質に戻ってその提供価値は何かということを考えてみました。その結論でいうと、「ストーリー化」は「感動を生む」ための手段に過ぎないということでした。「感動」には多かれ少なかれ必ずあるのが「驚き」です。では、「物語」を作らなくても、「感動」を、つまり「驚き」を創出しても、用は足りるのでは?と考えてみましょう。

以下、考察を進めます。

ストーリーの構成要素は、
■テーマ
■主人公
■起承転結(話の流れ)
の3つです。きわめてシンプルですね。そしてこれら3つを「感動創出」が目的であることをしっかり認識しながら観光振興の現場に落とし込むと
■テーマ・・・・伝えたい価値(ここがいいよ!)
■主人公・・・・作中の「私」→伝え手(話者・・感動の発見者であり伝導者)
■起承転結・・・より効果的に伝えるためのスタイル(「なぜいいのか?」の説明案内)
となります。そう、大事なことは、「起承転結」がいかに「効果」的に人の心を強く刺激できるか、です。ストーリー化とは、「いかにお客がその気になるように感動させられるか?を考えて実現すること」の言い換えに過ぎないのです。
■大切なことは、「伝えたいこと×伝える人(発信者)×伝え方」
「え?だったら、それって普段自分がやっていることじゃん」と思ってくれたらうれしいです。そう、SNSで何かを発信することだって、ストーリー化していると言えるのです。物語化・ストーリー化という言葉に翻弄されて難しく考えないでください。なぜなら、あなたはすでにそれをやっている!しかし、ここで一つだけ認識をしっかり持ってほしい点があります。それは

あなたはなぜ発信したいのか?

です。その答えは一言でいえば「共感を得たい」からでしょう。
つまり、自分が「いい」(←こう思った瞬間にすでにあなたは驚いている)と思ったものを、「ねぇ、これ見て!」と言いたいからです。この思いがぶれない限り、あなたが発信する情報は「ストーリー化」していると言えましょう。

■ストーリー化を簡単に行う!

さて、最後に、10のプロセスでそんなストーリー化を簡単に行う順番を記します。前半5つがご自分でできたら、6以降は少し考え方が必要になってきます(この文の最後に手引書をご紹介しました)

■ストーリー化を簡単に行う手順10

1)伝えたい何かを見つける(何かが見つかる)

2)なぜ自分はそう思ったのかを考える(どんな驚きをもったか)

3)自分はそれを知ってどんな気持ちになったかを考える(喜怒哀楽)

4)上記(3)を簡単な単語で表す (例)気持ちよかった、楽しかった、ありがたかった、わくわくした等なるべく日常使っている言葉で表すことが肝心です。

5)その時のことを骨子としてまとめておく(5W1H) いつ どこで、 誰が、なにを、どうした→だから私は感動した とまとめておいてください

ここまでが前半です。事実の確認です。
ここからが「後半」です。その事実を「
人に伝える(ナラティブ)」フェーズです。

6)コンセプトワークを行う
(誰に)(何を)(どう伝えるか)(それはなぜか?)(伝わる前と伝わった後では、伝えられた人はどうかわるか)をちゃんとイメージする

7)(4)の気持ちをより推し進めるためにどうするか考える
※これは「性欲」が深化する法則として「知る」→「やる」→「なる」に則るといいです。これこそが「ブラッシュアップ」と呼ばれるフェーズです。

8)発信する機会の設定を行う(例:体験型観光プラン作り)

9)演出を行う(誰がどんな形で表現すると、より効果的になるか)

10)実際に披露すると新たなストーリーが生まれるので、それを盛り込みさらに魅力を強化する

以上です。

■最後に

手順(4)と(7)については千葉経済大学教職向けの学術論文募集に応じて書いた「体験型観光プラン造成時におけるストーリー化についての一考察」に記されたいます。この論文は短いものですが、講義用に抜き刷り冊子にしておりますので、お入り用の方には先着10名様に無料でお送りいたします。メッセージでお名前、ご住所(郵便番号)、電話番号を教えてくだされば郵送いたします。ひとことコメントなどいただけたらうれしいです。


先着10名様に無料でご郵送いたします!

お申込み先(桜井メアド):cherrybravo2001@yahoo.co.jp 
2024年1月追記)ここからPDFで御覧いただけるようになりました。


・後半戦の6-10はそれぞれ、ちょっとノウハウが必要だと思います。拙書『まちの魅力を引き出す編集力』の以下の章・ページを御覧いただければより深くご理解いただけると思います!
(6)・・第3章「ターゲットイメージの想起」のうちP97-111
(7)・・第5章「ブラッシュアップ」のうちP149-160
また、(8)(9)(10)については、7月10日刊行の『元リクルートのすごいまちづくり3』(発行元:CAPエンタテイメント)に事例として掲出しておりますのであわせて御覧いただければ幸いです。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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観光振興・魅力発掘 ~ 株式会社チェリー企画 │ 公式サイト (cherrybravo.com)

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