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東大生が東大を訴えてみた【第6回】


10月24日の次回第3回口頭弁論に向けて、準備を進めていきます。
東京地裁419号法廷1130-です。

ヘッダーは久しぶりに開放されていた赤門です。
東大の組織も風通しをよくしていきたいですね。

被告準備書面

前回期日でこちらがした質問などを受けて被告から「準備書面2」が提出されました。
こちらからの質問は3点です。

  1. 甲4号証の差別メールを本物と認めるのか

  2. 差別メールは危機管理業務として行われたのか

  3. 原告がメールを「被告の学生として既に保有」とはどういう意味か

差別メールの全文は第0回の記事に載せてあります。東京帝大が違法に収集したアイヌのご遺骨の元あった場所への原状回復を求める市民団体に対し危険団体のレッテルを貼り、また参加しているアイヌの方々の存在を無視する、卑劣極まりない文章です。

準備書面2はざっくりこういう回答でした。全文は有料部分に載せておきます。

  1. 甲4号証を本物と認める

  2. 無回答(一般論を繰り返す)

  3. 何らかの方法により入手したと解する

1に関して、東大が差別メールが本物と認めたことは大きな成果でした!
甲4号証は筆者が非正規のルートで入手したものであり、それをもとに大学のアイヌ差別を追及しても「怪文書」として一蹴されてしまう可能性がありました。しかしこちらの原告不適格を主張するためとはいえ東大はメールが本物であると認めました。これだけでも裁判を提起した意義があったと思います。

2に関しては、全く質問への回答とならない一般論の繰り返しでした。全く不誠実な対応だと思います。この点についてこちら側の準備書面で触れていきます。

3に関しては実質的に何も言っていないと思いますが、元々こちらの原告適格を崩すために、つまり「裁判手続きに訴えなくとも失われる利益(メールが見られない)がない」と言うためにとりあえず言ってみたという類の主張と思われるので、ここまで後退した以上もはや無視できると思います。

原告準備書面

さて、原告から準備書面を出すのは初めてです。
こちらの主張の大部分は訴状「請求の趣旨」「請求の原因」に書いているので、被告から「答弁書」「準備書面1」「準備書面2」で反論された内容への再反論が中心になります。

ところで、準備書面のナンバリングを考えたときに、「乙」とか「被告」みたいな記号が入っていないのはいささか不都合な気がします。
こちらが次に出す準備書面は「準備書面3」になるのでしょうか。

調べてみると、原告が出す準備書面には「第n準備書面」、被告が出す準備書面には「準備書面(n)」というタイトルをつける慣習があるらしいです……。なんだそのわかりにくいローカルルール。

ということで、「第1準備書面」を書きます。

第1 「答弁書」について

まず、答弁書への反論や、こちらの補充的な主張を述べていきます。

1 同・第2「令和6年4月12日付訴状『請求の原因』に対する認否及び被告の主張等について」1「同・第1段落及び第2段落について」について

同(1)乃至(3)について、被告はまず2023年9月1日付にて本件第1不開示決定(甲1)を行い、原告が同21日付にて本件第2開示請求(乙2)を行ったのちに、同10月19日付にて本件第1不開示修正決定(甲3)を行った。ここまでの事実に争いはない。
原告は被告に本件第1不開示決定を通知されてから本件第1不開示修正決定を通知されるまでの期間、本件第1不開示決定について被告に対し、行政不服審査法に基づく審査請求、その他法的効力をもたない申し入れなど、本件第1不開示決定を取消し、または修正することを求める行為の一切を行っていない。
したがって本件第1不開示修正決定の形成は、本件第2開示請求を起点に行われたと解される。
また、本件第1開示請求(乙1)において原告は「総務部総務課危機管理チームが送受信したメール『アイヌ系団体』に関するもの過去3年分」と記載して法人文書の開示を請求した。この事実についても争いはない。
甲第4号証のとおり、被告は市民団体「ピリカ全国実」に対し「自称アイヌ系団体」という差別的呼称を内部で用いており、本件請求対象メールのタイトルも「自称アイヌ系団体の来訪について」である。
したがって、被告は本件第1開示請求につき、本件請求対象の法人文書を容易に特定し得た。
ところが本件第1不開示決定において被告は「不開示とした部分とその理由」に「該当する文書は保有しておらず不存在。」と虚偽の記載を行い、さらにこれを原告に通知して原告が本件請求対象の開示を受けられない状況ならしめた。これは国立大学法人法第19条に基づくみなし公務員の行為として、刑法第165条及び同第158条に定める虚偽公文書作成、同行使に問われる犯罪行為である。
被告が本件第1不開示修正決定を行う意志を形成したのは、原告がより詳細に本件請求対象の送信経路や日付等を本件第2開示請求に記載し、被告が原告の本件請求対象に関する知悉を認識したことによる。

要するに、「最初に『不存在』って言ったのはウソですよね。こっちを騙せないと知って慌てて『不開示』にしましたよね。」という趣旨です。

2 同・第2「令和6年4月12日付訴状『請求の原因』に対する認否及び被告の主張等について」2「同・第3段落及び第4段落について」について

「請求の原因」に補充して予備的に答弁する。
法第5条第4号に定める不開示理由は、関連する事務がまさに「適正」に行われていることが前提である。
しかしながら甲第4号証のとおり、被告は市民団体「ピリカ全国実」に対し「自称アイヌ系団体」という差別的呼称を内部で用いている。
事実としてピリカ全国実はアイヌとシャモ(和人)の双方からなる組織である。ピリカ全国実による被告への申し入れにはアイヌも参加しており、被告もこの事実を認識している。
「自称アイヌ系団体」という呼称は、ピリカ全国実におけるアイヌの存在を積極的に無視することにほかならない。存在を無視されることは、現代においてアイヌをはじめとする国内外の少数民族が受ける差別のうち最も典型的かつ悪質なものである。被告がそのような差別に加担することは、かつて帝国大学がアイヌ差別の中心的役割を担っていたことに対する反省が表面的であることの顕れであり、そのような姿勢は甲第4号証の全体に見られる。これら被告によるアイヌ差別は日本国憲法第14条に照らして、また被告の構成員である原告の良心に照らして、到底容認できるものではない。
国民は、国民の負託を受けた国立大学法人によるこのような「不正」、社会的不正義について知り、これを正す責務を負う。そのために、本件請求対象は法第1条の趣旨に基づき開示されなければならない。被告の主張は法第5条第4号の濫用である。

続く部分では、東大が不開示理由として挙げる「関連する事務の適正な遂行」について指摘していきます。
東大の言う”危機管理業務”がアイヌ差別を再生産している以上、この事務が適正に行われているとは既に言い難い状況です。
「知る権利」はこうした行政の暴走を国民が止めるための前提となるものであって、したがってむしろ本件メールは開示されるべきだと言えるでしょう。

第2 「準備書面1」について

同・第1「本件回答書記載の訂正後の請求の趣旨に対する本案前の答弁及び予備的答弁」2「本案前の答弁の理由」について

否認し争う。
甲第4号証は原告が知人を介して入手したものである。被告が訴訟においてその真正性を認める姿勢をとるといえども、それは訴訟における被告の利益の最大化を目的とした行為であると解される。原告としては当該メールの写しの真贋について、法に基づき同一の文書が開示されなければ公的な保証を得た真正の文書を入手したとはいえない。
当該箇所についてはすでに「準備書面2」において訂正されていると解するが、念の為答弁する。

ここはどうでもいいですが、前回被告が言ってきた訴えの利益の部分について一応反論しておきました。

第3 「準備書面2」について

被告の主張は、危機管理基本規則(乙3)第5条第2項における「必要な情報提供」に関する情報が法第5条第4号柱書の不開示情報にあたるという、三段論法における大前提、また本件請求対象が法第5条第4号柱書の不開示情報にあたるという結論については述べているものの、本件請求対象が危機管理基本規則第5条第2項における「必要な情報提供」であるという、想定される小前提を読み取ることができず、これを欠いていると解される。
この点について前回期日において口頭にて質問したものの、被告は「準備書面2」において従来の主張を繰り返すばかりで、質問への回答をなしていない。
よって原告は以下主張する。
ピリカによる被告への申し入れは危機管理基本規則第2条第1号における「危機事象」又は「危機管理」の対象となる潜在的な危機事象(以下、リスクと呼ぶ。)には該当せず、よって被告においても危機事象あるいはリスクとして取り扱いをしていない。
したがって本件請求対象は危機管理基本規則第5条第2項における「必要な情報提供」に関連する文書ではない。
ゆえに「答弁書」における「本件第1開示請求及び本件第2開示請求にかかる対象文書に関しては、いずれも、関連する事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあり、法第5条第4号柱書に該当するため不開示となるものである。」との被告の主張は認められない。

最後に三段論法の件です。

この点は前回の記事で詳しく書きましたが、簡単に言うと東大は「メールは危機管理業務の一環である」とは直接名言していません。
前回期日でそこを質問し、今回の準備書面2で回答するという約束でしたが、これが果たされることはありませんでした。
今回期日でまた聞いたとしてもいたずらに裁判が長引き、裁判官の心象もよくないでしょうから、相手の主張を待って反論するのではなくこちらから主張してしまいましょう。

こちらの主張は「差別メールは危機管理業務ではない」です。
もし東大が反論してくるなら、しかるべき証拠が提出されると思います。楽しみですね。

第3回口頭弁論直前編はここまでです。
木曜日、法廷でお会いしましょう!

以下、有料部分には「準備書面2」を掲載しておきます。

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