久々の反応
12月11日 父親の意識がはっきりする時間が長く続く
夜中ぐっすりと寝ていた父親は、朝の5時半ごろに飛び起き、下半身がベッドから落ちてしまうほどだった。まだこんなに動けるとは思わなかったので、驚くのと同時に嬉しかった。看護師と一緒に体を整えると、それから7時ぐらいまでまたよく寝ていた。
7時ぐらいから唸ったり動いたりし始め、9時頃にははっきりと目を開けていた。私の方を見てニカッと笑ったり、「誰だかわかる?」と聞くと頷いたりした。こんなにはっきりした反応が返ってくるのは、3日ぶりぐらいだった。
ふと、父親とのラインを見返してしまった。質問や連絡事項以外のラインを、私が何度も無視した形跡が残っていた。父親への接し方がわからなくなっていた私は、仕事が忙しいことをよく盾に取って、父親への返信から逃げていた。父親も父親で、何と返したらいいのか分からない内容のラインばかり送ってきていたので、言い逃れするのには都合が良かった。読み返して、この人は本当にコミュニケーションが苦手なんだな、と思った。私の返信は全て、まるで仕事の相手に送るような無味乾燥なものだった。久しぶりに、涙が止まらなくなった。
泣いている私に気づいて、父親がぎこちなく首を回してこちらを向いた。「ごめんね」と何度も謝った。父親は「だい...」と言った。大丈夫、と言いたかったのだろうか。こうしてはっきりと意味のある言葉を発したのも、久しぶりだった。
父方の親戚には内緒で、仕事帰りの母親を施設に呼んだ。「もうすぐママがくるよ」と言うと、「ママ」と真似をした。母親が来てからも、調子が良いようだった。
父親は完全な寝たきりに日に日に近づいている。言ってしまえば、最近はほとんど書くことがなくなり、日記も休みがちになった。痰を吸引し、顔を拭き、歯磨きをし、おむつをチェックして、点滴を取り替えて...と看護師や介護士と一緒にできる限りで身の回りの世話をするだけで、気づいたら一日が終わっているのだ。しかし、こういった反応があった時や、誰かが訪ねてきた時などは、状況を書こうと思う。父親のことやこの病気のことを少しでも気にしてくれている人がいるならば、私は書く義務があるからだ。