抑制帯との戦い

11月17日 抑制帯をつけないか、と打診される。

父親は昨日よりも大きく暴れ、点滴の針も今日だけで2回挿し直した。看護師からは、「ご家族もそろそろお休みが必要かと思いますし、抑制帯をつけてみませんか?」と打診されたが、私はそれを断った。

ここ2週間の間、一日中病室にいる。夜9時〜10時の間に一度家に帰り、風呂に入り夕食を食べる。そして、また病室へ行く。こうしてほぼ病院にいるのには、理由がある。

2週間前に再入院した際、「ご家族の付き添いがない時は、抑制帯をつけさせて頂きます」と言われた。抑制帯とは身体拘束具の一種で、父親のベッドには胸のあたりにベルトが用意されていた。父親はふとしたことで大暴れしてしまうので、ベッドから落ちて出血でもしたら大変なことになる。それを防ぐために、暴れた時に必ず家族が鎮めるか、じゃなかったら抑制帯をつけましょう、ということだ。

再入院の初日、つまり救急搬送された日の夜に、抑制帯を使う同意書にサインをした。救急病棟は個室と違い家族の待機ができないので、初日に父親は胸のあたりと手首を拘束された。筋肉が勝手に動いて、勝手に抑制されて、もがいている姿を見ていられなかった。この時から家族は、誰かしらが病室にいるように決めた。

病院では家族用の寝具の貸し出しもあり、夜間も出入りして交代で寝泊まりすることができる。基本は私が泊まり、サポートで伯母か叔母が泊まる。パイプに布を張っただけの簡易ベッドかソファで寝て、音がしたら飛び起きて15分ほどかけてやっと父親を落ち着かせる。そんな生活だが、父親が拘束されるよりは何倍もマシだった。

身体拘束は、患者本人の安全を守るために行われるものだ。それを重々承知した上で、目に焼き付いた光景は、やはりショックだった。明後日から介護施設に移るが、そこでも基本は家族が寝泊まりすることにした。医療の観点から見れば、場所がどこであれ体格が良い父親には、身体拘束あるいは見守る家族が必要だからだ。

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