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葬儀が終わって

12月29日 父親の葬儀が終わり、日常が帰ってくる

父は、死んだのではなく、生まれ変わった。「終わった」のではなく、「新しく始まった」のだと思う。

私たちの身体は、この世で生きるための入れ物だ。身体が運悪く使い物にならなくなってしまっても、あの世で別の身体をもらって、また元気に暮らし続けることができるのだと思う。

新宿でバイトをしていた時、女の子の魂を持つのに男の子の身体に生まれてしまった人や、その逆の人を沢山見てきた。そういう人を見ると、やっぱり魂と身体は全くの別物であると感じる。

だから、今お線香をあげるとき、ご飯を分けて食べるとき、好きだったお菓子をお供えするとき、父親の魂はそばにいるような気がして、ちっとも悲しくなくなった。私たちが忘れなければ、父親はずっと私たちの中で生き続ける。身体はダメになったとしても、生きる世界を変えて、父親はずっと生きている。

喪主としてきちんと葬儀を行うことで、父親が別の世界で心機一転して、人生をやり直す準備をしっかりと行えたんだ、と自信がついた。私たちは、父親に「いってらっしゃい」を言えて、旅支度を整えて送り出すことができたんだと思う。

葬儀に来ていただいた方々から、「よく娘さんのことを自慢していましたよ」と聞いた。正直、驚いた。私は今までで3回しか父親に褒められたことがなかったからだ。1度目は中学で学年一位の成績を取ったとき。2度目は父が本当は行きたかったという国立大学に合格したとき。3度目は父が本当は目指していた業界に就職したとき。私は父にとって、意外と大きな存在だったみたいで、自分で驚いたし、それに、なによりも嬉しかった。会話ができるうちに、もっと褒めてくれればよかったのに、と思った。でも、それが聞けたので、葬儀の場で沢山の父の同僚や友人に会えて、本当に良かったと思う。

実は父が旅立った日、父が可愛がっていたうさぎも天国へ旅立った。実は、父が病気になってからこれから世話をどうしようだとか、大阪に連れて帰ろうだとか、里親を探そうだとか、家族内で多少の混乱が起きていた。もしかしたら父は「しょうがないな、だったら連れてくよ」と世話役を買って出たのかもしれない。

父の旅立ちを家族皆で送ることができて、私たち家族も前を向いて進む準備ができた。だから、父のことで心を痛めている人は、父の魂はずっと生きていて、しばらくは会えないけれど、私たちもあちらに行けばまた必ず会えると思ってほしい。そしてクリスマスイブには父のことを思い出して、クリスマスケーキにろうそくを立ててほしい。私もいずれあちらに行ったら、うまくいかなかった家庭もまた一からやり直したい。

あちらには、父がお世話になった英数塾の塾長、うさぎの蘭丸、愛犬の海、インコたちもいるから、安心してほしい。私たちは、違う世界で父に聞かせるための土産話を沢山作らなければいけない。ふさぎこんでいる暇はない。前を向いて生きることが、こちらの世界に残された私たちの使命だと思う。

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