施設の見学を経て現実を知る

11月9日 ホスピスとしても利用できる施設の見学へ行く

プリオン病のような特殊な感染症は、受け入れてくれる施設が限られてくる。そして、受け入れ態勢を整えるために準備期間も必要だ。来週火曜日にまず在宅看護かそれ以外かを決定して、主治医に伝えなければならない。在宅の場合は、点滴などの医療行為を自宅でやろうとしているのだから、当然感染のリスクを伴う。

施設は、自宅から車で30分ほどの場所にあった。区分としては有料老人ホームだが、特定疾患の受け入れを行なっていて、現在、プリオン病患者もすでに入居している。看護師や介護士が常駐する、病気を持つ人たちのシェアハウスと考えると分かりやすい。

部屋はきれいで家具も備え付けてあり、ターミナルケアも加算なしで色々と行なっているようだった。他にも、週に2回リフトで風呂に入れたり、自分の持ち家を引き払わない限りは、ベッドを持ち込んでの泊まり込みも可能だった。

引っかかることといえば、年齢だ。父親は56歳で、まだ若い。100歳まで生きる時代の中で、未だ折り返し地点をすこし過ぎたところとも言える。その父親が、70代や80代の認知症患者が多くいる場所に入居することは、やはり抵抗があった。たとえ父親がもう抵抗を認識しなくなっていても、家族には抵抗があった。特に、82歳の祖母と86歳の祖父は、自分より先に息子が施設に入ることになれば、大きなショックを受けるだろう。

表向きでは「特定疾患を持つ患者の受け入れ先」ではあるが、蓋を開けてみれば、やはり「老人ホーム」なのだ。

火曜日まで、家族の意見はまとまるのだろうか。祖母は実際に施設を見て、自宅で看護する決意を固めているようだった。しかし、その高齢の祖母にできることは、何もない。自宅で看護するには、私が仕事を休むか辞めるかして、伯母たちが自分の家庭を二の次にして、父親の積み立てた介護保険を全く使わないことになる。そうなることは、果たして本当に父親の真意に沿っているのか?感情だけでは動けない段階まで、いつのまにか私たちは来てしまっていた。

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