体力の衰え

12月15日 目を開けている時間が殆ど無くなる

ここ3日間、父親ははっきりと目を開けなくなった。以前のように大きく目を見開いてびっくりしたような顔もあまりしなくなった。そのような表情らしい表情は、1日のうちに5分見られるか見られないかだ。こちらが話す内容をわかってリアクションをとることも、一切無くなった。あるといえばある気もするのだが、それはきっと希望を持っているからそう見えるだけだろう。看護師は、この病気は末期に差し掛かっても耳は聞こえるが、環境音としてしか捉えられないという。つまり、内容は理解できていないのだ。その段階まで、あっという間に来てしまった。

目を瞑り、口を少し開けて寝ているかぼーっとしている時間が増えたので、口は常に乾燥するようになった。出血もするようになり、プロペトという皮膚を保護する軟膏の塗布が欠かせなくなった。

私たちは私たちで、父親のいなくなった後のことを、嫌でも考えさせられるようになった。お金や所有物について、それとなく家族間で話が出るようになってきた。以前なら父親が亡くなった後の話をするのは、何となく不謹慎だという空気が漂っていて、誰も話を切り出さなかった。しかし父親がこの状態になり、ついに覚悟を決める時が近づいてきたのだ、と全員が認めた。父親は離婚していて妻がおらず、妹も今は自分の家庭を持っているので、色々なことについて最終的な決定権を持つのは子の私になる。父親が残してくれたものに感謝して、正しい判断と決定ができれば、と思う。

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