夜間の痰吸引

11月2日 夜間に何度も痰吸引を行う。

父親は、「れろれろれろ」のような謎の言葉をしゃべる。一昨日ぐらいまではなんて言っているか大体わかったのだが、今日は完全わからなくなっていた。調子が良い時は、孫のあこちゃんを前にしてよく喋るが、その孫の名前も発音できなくなっていた。

ほとんどの日常動作が自力でできなくなった父親は、カテーテルをつけ、リハビリパンツをし、精神安定剤を飲んで寝る。いくらか自由な左手でカテーテルを抜いてしまったら、尿道を傷つけ尿路感染がおこる可能性があるため、交替で見守りながら夜を過ごす。私は12時から3時半まで寝て、その後6時まで父親を見守る当番だ。

見守るときは、左手を繋いで勝手にカテーテルを抜かないようにすることと、痰が出たらすぐに吸引することが大切だ。夜中の起きている時間で、大体3から5回はいつも痰吸引を行う。痰が出た音がしたら、すぐに口をこじ開けて吸引歯ブラシで吸い出す。初めは慣れなかったが、今は回数をこなしてうまく吸い出せるようになった。35年間煙草を吸っていた父親は、もともと痰が出やすかったから、意外と大変だ。

今日は痰が出る頻度が特別高かった。うまく吸い出し布団に戻ると、またすぐ痰の絡んだ咳の音がする。なんだかんだで、当番の時間を過ぎた6時半になっても痰吸引を行い続けた。父親は目的を理解できず、歯ブラシを噛んでしまって離せない時も多かった。父親は確実に、一つ一つのことを忘れて行っている。

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