意識レベルの急激な低下

12月23日 呼吸が正常でなくなり、意識レベルが低下する。

おむつに大量の血がついていたことから、腸が通常の機能を失い、出血が起こっていることがわかった。そして、頻脈や高熱が起き、血圧が測定できないなど、普段起こらなかった事態が沢山起きた。ミオクローヌスもほとんど消失し、目も開かなくなってきた。酸素濃度もかなり低下していた。その時が確実に、一歩一歩近づいていることは、誰の目にも明らかだった。

肺炎を起こしている可能性があるので、抗生剤を点滴で落とすことになった。ここまで意識のレベルが落ちていると、効くか効かないかも分からないという。瞳にペンライトを当てた時の反応も、今までとは一変していた。

本当に最期の時は、自宅で看取る計画を立てていた。しかし、少しでも姿勢を変えただけで呼吸が苦しくなったり、脈が変動したりする父親を、家まで車で移動させることは現実的ではなかった。下手すれば車内で移動中に、ということも考えられるので、自宅での看取りを熱望していた祖父母と叔母も、積極的に意見を変えた。

左足の甲に挿していた点滴は、使えなくなってしまった。3日間は保ったが、ついに血で固まってしまった。左腕の内側に脈を探したが見つからず、5回目の挿し直しでやっと右腕の内側にルートを確保できた。今までは不随運動で腕を大きく動かしていたため、出血のおそれから絶対に点滴を刺さなかった場所だ。針が刺さるたびに、苦しそうなうめき声を出していた。伯母はその度に「ごめんね」と呟いていた。

今、父親はしっかりと息をしている。苦しそうなときもあるが、自分の力で息をしている。プライドが高く、一生懸命頑張る人をどこか冷めた目で見たり、からかったりしていた父親が、こんなに必死に生きようとしている姿を初めて見た。父親は頑張れる人だったんだ、と思った。珍しく感情が溢れて、「必死に生きてくれてありがとう」と何度も声をかけた。反応は無かったが、分かってくれているような気がした。

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