【書評】科学者の自由な楽園 ​

第二回目は「科学の自由な楽園」

概要

日本人で2人のノーベル物理学賞を受賞した朝永振一郎博士の随筆や紀行文を集めた本ですので、数式がでたり、難しい理論について話しているわけではありません。職場が変わったり、上司が変わったり、その時、朝永博士がどう感じていたか、についての本です。

一般に、科学者に対して無機質なイメージをお持ちかもしれません。しかし、人間臭い朝永博士のお話読んでみてはいかがでしょうか。

現在の私にどのような影響を与えたか

これを呼んだのが博士後期課程2年になったときでした。
ノーベル賞をとった人も学生時代、そして、仕事をはじめてからの、海外留学においての、精神的な面での苦労は抱えるものなんだ、と少し安心したのを覚えています。

感想

皆さん、朝永振一郎をご存知でしょうか。日本人科学者であり、私の尊敬するリチャード・ファインマンと共同でノーベル物理学賞を受賞してます。

扱っていたテーマは?

研究分野は量子電磁力学。
難しそう。。。。
軽く説明すると、それまである物理現象について説明するために、原子一個一個に大して方程式を、立てようとしてました。しかし、それでは上手くいかないので、アインシュタインの相対性理論を考慮して、超多時間理論を報告します。

大丈夫です。この本では、難しい話なんて何も出てきません。

ファインマンは日本の科学者が自分よりも数年前に同じ答えを出していることに驚いています。その当時、無茶な戦争をしている、粗悪品を売る、発展途上国、という印象を持たれていたのでしょう。

いくら、日露戦争、日清戦争で明治期に躍動したとはいえ、アジアの科学技術の評価はそう高くなかったのでしょう。

お茶目な先生?

ノーベル賞を受賞して、ファインマンとは対照的にたいへん喜んだ朝永先生は人間味溢れる話がたくさんこの本では載っています。そんな、朝永先生はノーベル賞授賞式に出席できませんでした。

なぜか?

その理由は、風呂場で転んで肋骨を折ったからです。
この辺のエピソードも人間味あふれるところだと思います。

一生のライバル

朝永先生は湯川秀樹博士とは同級生です。そうです、日本人ではじめてノーベル物理学を受賞したあの湯川秀樹です。

実際には、湯川博士は後輩だったのですが、飛び級をしたり、朝永博士が体調をくずしたりで、結局、京都大学時代から教員になってからもずっと同期として切磋琢磨されてたようです。
朝永博士は体調を崩して、湯川博士の能力にまた、精神的なダメージもあったようです。

これらのあたりの、昭和の大学の雰囲気、ライバル、そして、葛藤が描かれています。

注目するところ

注目するところは、ドイツ留学(ハイゼンベルクという科学界のスーパースターのもとで研究してます)時代に仁科博士(この方も日本科学界の重鎮です。いまだに理化学研究所の仁科加速器科学研究センターと名前のついたセンターもあります。)との手紙とのやりとりはとても印象に残っています。朝永博士の青年期の悩みや葛藤が描かれています。

私個人としては、学生の頃指導教員の先生(すみません、ドイツには本をもってこなかったので名前が出てきません)が、いろいろな分野ですばらしい結果を残していた。どれか一つに絞っていればブレイクスルーを生むような仕事もできていた、という内容を書いていたのが印象的でした。
この件に関して、他分野に手を出せる科学者って非常に少ないんです。
朝永博士が認めるほどの先生だったんだ、っていう驚き。
また、そんな科学者が今後出てきたらどんなに日本の未来は明るいだろうという、ちょっと想像してもらったので。

最後に

まず、一般教養として読んでもいい本だと思います。科学者のこういった本は、ノーベル賞を受賞しないとそうそう出版されないのですけど。どれもこれも面白いです。是非、読んでみると、お酒の席ですぐに使える話題になると思います。ノーベル賞は日本人としての誇りですしね。

もちろん、著作集もたくさんあります。

前回の記事も載せときます。興味があれば読んでみてください。

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