嘘のようなホントの話

今日はエイプリルフールです。嘘をついても許される日ですね。(厳密には朝に嘘を言い、夕方頃までに嘘だとネタばらししなければならないようです。)
せっかくなので、化学にまつわるウソのようなホントの小話をひとつさせていただきます。 



その昔、とある身近な物質を題材にした調査が行われました。

以下は実際に行われた調査をもとに、内容を簡略化したものです。
一酸化二水素と呼ばれている物質があります。 この物質は水酸と呼ばれる化学物質のひとつで、ガンでは悪性腫瘍の中からこの物質が検出されています。他にもこの物質が原因で多くの人が毎年亡くなっています。

今出てきた情報をもとに考えて欲しいことが1つあります。それは、この物質、一酸化二水素の使用に関して法律で制限するべきかどうかということです。

結果


この調査の結果、結論を出した人のほぼ全員が法律で規制すべきとなりました。未知の物質のネガティブな面ばかりの情報のみだったので、この結論がでたのは妥当だと言えます。

謎の物質の正体

ところで、一酸化二水素とは一体何だったのでしょうか?
名称を細かくじっくり見ていきましょう。まずは一酸化の部分です。1つの酸素が酸化物になったもので、元素記号のOで表します。酸素が1つあるということです。
次に二水素。水素が2つあることを意味します。Hは水素を表す元素記号で、Hが2つなのでH2 と化学では表します。

一酸化二水素ですが、表記の順番を変えて二水素一酸化物と読めます。二水素一酸化物を先ほどの元素記号で置き換えるとH2 Oとなります。これは水の化学式ですね。

つまり、一酸化二水素とは水をあえて変な呼び方にしたものです。
もちろんこんなヘンテコな呼び方は通常はしません。私もこの話を聞いたときに初めてこのヘンテコな名称を知りました。

調査の振り返り

調査で見た情報を改めて確認します。ガン細胞も細胞の1つなので、ガン細胞から水は検出されます。また、水が原因の事故、つまり水難事故だって毎年起こっています。一酸化二水素と聞いて水のことだと分かればそりゃそうだよね、何のことはないよねと考え、規制はしないと結論をだせます。 

ヒトはよく分からない言葉を使われると思考が停止してしまい、目の前の情報だけをもとに判断する傾向があるそうです。このため規制するのが妥当だという結論が多数になりました。 この調査後、水を難解な言い方にした調査はジョークとして広まっていきます。

ウソのようなホントの話

ただ、このジョークを聞いたアメリカの市議会議員の1人が、真に受けて実際にアメリカの市議会でこの物質を規制しようとする動きが出たようです。 危うく日常生活に欠かせない水の使用が法律で規制される所でした。
幸運にも生活用水の確保に苦労してしまう世界線は何とか回避できました。
化学では一見名前が難しそうでも、名前をパーツに分けてひとつひとつ見ていけば、案外そのひとつひとつは簡単なものです。

変な名前が出たときはこれを思い出してみるといいかもしれません。

最後までお読み頂きありがとうございます。 次回を楽しみにお待ちください!