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電話だからこそ。

私の通っていた高校は全寮制であった。

男子寮と女子寮に別れ各部屋に基本、3年生1人・2年生1人・1年生1人の3人で生活していた。1年生は常に先輩二人に気を使い、2年生は部屋の中間管理職として、3年生は部屋のまとめ役として、生活していた。

各部屋には内線のみ繋がる電話があり、男子寮と女子寮の部屋に電話をかけることができた。

平日であれば授業の班のメンバーに宿題の範囲を聞いたり、次の小テストの日程を聞くのに使っていた。しかし、水曜日や木曜日の夜になると、金土の夜に行くデートの誘いの電話をかけている人をよく見た。私の通っていた高校でのデートの誘い方は少し特殊で「散歩行きませんか?」と誘うのである。なぜ「散歩」なのかは知らない。「デート」というと堅苦しいが、「散歩」というと柔らかく聞こえる。そのためなのか、デートの誘いには「散歩」という言葉が使われていた。その「散歩」に3回相手を誘えれば、カップル成立という不文律があった。3年生は1年生に気になる女子がいないのか、何度も何度も聞いていた。それを端でニヤニヤしながら見ている2年生もいた。1年生に気になる女子がいれば、いきなり電話をかけてその女子と話させるということもやっていた。

その「散歩」の誘い方も、直接会って言うのではなく電話を使って言っていた。消灯時間前の1時間30分間の自由時間があったのだが、その間に誘っていた。デートに誘うということで、男子寮の住民は誘っている姿を見るのが好きであった。男子寮の住民、80人近く見ている前で誘う事もあった。非常に緊張感のあるデートの誘いだったと思う。そこで成功すれば皆で喜び、失敗すれば皆で悲しむ。そういうことをして楽しんでいた。

今の社会、LINEやTwitterで文字でコミュニケーションを取るということが増えてきている。今考えるとその年代にこうやって電話で直接しゃべり、相手と会話をするというのは貴重だったのかもしれない。

また、電話はデートの誘いだけではなく、カップルが喋りたいがために使っているところもあったと思う。消灯までの1時間30分、ずっと喋っている人もいた。


今、高校を卒業して5年が経った。高校時代によく電話をかけてた相手とは全く話さなくなってしまった。たまに、Twitterのリプライで話す程度である。

消灯までの1時間30分の間にいきなり電話をかけてしょーもない話をしていたことを日高屋でダブル餃子定食を食べながら思い出し、今回書く次第となった。

LINEに付いている無料通話も、iPhone標準搭載の電話も、あまり使っていない。

誰かの人の声を電話越しに聞きたいなぁとふと思った。

いきなり電話をかけて、しょーもない話をできる高校同期とそういう関係に戻りたい。


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