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近松門左衛門

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岩波『近松全集』の読書記録
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記事一覧

丹波与作待夜のこむろぶし

今年の上方文化講座のテーマでもある作品。日程が合わず、応募さえできず。

上之巻では、江戸行きを承知しない姫君を道中双六で宥める。双六を見せた三吉=与之介と、姫君の乳母の滋野井の親子関係が明らかになるが、姫君への遠慮から堂々と名乗れない。
作中で江戸まで行くわけでもないし、道中双六は地名の折り込みを楽しむ場面なのかな。
物語の悲劇の1つである、与作/滋野井/与之介の親子問題。元々、与作と滋野井の許

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心中重井筒

岩波文庫にも収録だがわ文楽では思ったよりやっていないようで。2016年にながと近松文楽で道行血潮の朧染を復曲公開だったそう。

上之巻の徳兵衛は、人を騙して金を借り、それを庇ったおたつの不義まで疑い始めるどうしようもない男。あれこれ迷いながらも結局重井筒屋に足が向く場面は、冥途の飛脚を想起した。発表の順序では、勿論こちらが先行だけれども。

中之巻では、おふさの不幸が明らかになり、おふさは独りで死

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五十年忌歌念仏

久し振りの浄瑠璃読書タイム。
飽きて積んだ訳じゃないぜ!!

タイトルの「五十年忌」は本文を読んだだけでは分からないが、実際の事件で処刑された清十郎の五十年忌。
史実のおなつは狂ってその後どうなったのか?

上之巻ではおなつ清十郎は登場せず、勘十郎と左治右衛門(清十郎の父)のやり取りから、清十郎が主人の娘=おなつに手を出したらしいことが分かる。同時に、勘十郎が左治右衛門を騙していると伸べられる。

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卯月の潤色

「いろあげ」って知らなきゃ読めないよな。

上巻は卯月紅葉の末期の道行ほぼそのまま。最後の発見されて与兵衛だけ生き残る所が少し書き足されている。

中之巻では、伯母らがおかめの口寄せを頼む。おかめは伝三(伝三郎)らの悪事を非難するとともに、与兵衛が試し物になることを恐れ、出家させることを願う。
出家した与兵衛のもとにおかめが現れて、呼び出してもくれないなんてと責める。おかめが去った後、与兵衛は後を

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堀川波鼓

先日の卯月紅葉に続けて卯月の潤色を読もうかなとも思ったのだが、収録順に堀川波鼓を。文庫でも読んでいるので再読。
世話物だけピックアップして年代順で読んでいるのだが、成立年が資料によって異なる影響で、どの順で読むべきか分からなくなっている。素直に全集の収録順に従えばよかったかな。

姦通物の中でも一番リアルというか、酒の勢いで姦通、しかも妊娠までするのがその名も「おたね」である。
「姦通しました」が

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卯月紅葉

「廿二社廻り」から始まる構成は、曾根崎心中を彷彿とさせるが、こちらは片生きの心中に終わる。
まず、片生きの心中という表現があると知ったので使ってみたくなっただけである。
題に心中とないのに心中に向かう時点で察することができるわけだが、生き残った方のことを思うと堪らないな。

陥れられて信用を失った後、蔵に閉じ込められて脱出したために放火の疑いをかけられ、更には心中に及んで脇差しを落とす与兵衛、不運

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心中二枚絵草紙

第4巻に戻って心中二枚絵草紙。
題に心中とあると安心するのは何だろう。

曾根崎心中と用明天皇職人鑑が用いられている。観客は、あぁ先日観たな!!となったのだろうな。
用明天皇職人鑑は心中二枚絵草紙の1つ前に収録されているのだが、ついでに読むには長そうなので見送る。

弟の策略にはまり、親の金を盗んだとみなされて勘当される市郎右衛門。天満屋通いで半分勘当のようなものだったというので、盗人となれば勘当

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薩摩歌

世話物2作目、のつもりだが、第6巻まで飛んだ。
初演年の特定が難しいという話は、月報で触れているようだ。月報だけでもちょっとした読み物なので保留して薩摩歌へ。

導入があっさりしている感じはしたものの、登場人物の事情が一通り説明され終わるまでが長い。
地名を折り込むのはよくあるけれど、薬を折り込むのは面白いなと思っていたら、最後に繋がっているということかな?
華佗が名前だけ出て来て三国志が懐かしく

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曾根崎心中

とりあえず世話物24作を先に読んでいこうということで、まずは曾根崎心中。
心中に関して疑問に思うことは色々あるので、その辺も少しずつ整理しつつ読んで行きたい。

近松全集では第4巻の1作目。
作品自体は文庫で読んでいるので、もう何回目だろう。

近松を何作か読んだ中でも、曾根崎心中は確かに面白いと思う。といっても、思い入れがあって、一番好きなのは冥途の飛脚なのだが。

天満屋を抜け出す際の緊迫感、

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出世景清

全集2作目。
わりと分かりやすかったな。やはり、事前の知識が物を言うか。
登場人物が基本的に潔く行動するのも読みやすさの要因だと思う。

阿古屋と言えば壇浦兜軍記の方が有名だろうか。
出世景清においては、嫉妬により景清訴人を後押ししてしまう(迷ってはいるけれど)ので、女の浅ましさ、救われなさを表現する役割のよう。
この嫉妬を引き起こしたのは、小野姫と阿古屋の双方に良い顔をする景清の態度が根本的な原

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世継曽我

近松全集1作目は時代物。忠孝要素満載。
道行はやっぱり語りで聞きたくなるね。真似したくなるのも分かる。地名の折り込みが凄いが、既にこの時代からこんな感じなのだなと。

登場人物がよく分からん。歴史知識が足りないと、浄瑠璃単体では飲み込みにくいのが時代物が難しく感じる原因か。歴史を手玉に取るのが浄瑠璃の面白さだとは思うのだけれども。
朝比奈はねぶた頻出の力持ちだよね?くらいの知識で読みきってしまった

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