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マルジェラが語る“マルタン・マルジェラ”

※ネタバレ(?)あります!
9月下旬に見てすぐ書いたのに下書きに入っていたので、公開しちゃう。

映画「マルジェラが語る“マルタン・マルジェラ”」を見た。

ちなみにホワイトシネクイントで見たのだけれど、パルコカード割引があるの知らなかった!
祝日でも1,500円で見ることができてラッキーだった。

ファッションにそこまで興味があるわけではなく、ブランドにも疎いけれど、こういうドキュメンタリーが好きなのだ。
事件を追いかける社会派ものというより、一見淡々としている、裏側を覗くようなドキュメンタリー。

マルタン・マルジェラについてもほぼ知らないまま見に行った。
お店に入ったことはあるけれど買ったことはない。
レプリカというシリーズの香水をかいだことがあって、ちょっとほしいなくらい。

映画のサイトや予告編を見て知ったのだけど、マルタン・マルジェラは顔も明かさずメディア露出を全くしていないらしい。
そしてブランド20周年のタイミングで引退しているらしい。

このドキュメンタリーは、監督がこれまでインタビューを受けなかったマルタン・マルジェラの信頼を得て撮ることができたそう。
名前知ってるのジャン=ポール・ゴルチエくらいだったけど、ファッション界の重鎮らしき人やマルタン・マルジェラと一緒に働いていた人もたびたび登場した。
デビューから順にコレクションの映像を見せつつ、メゾン マルタン マルジェラがいかに新規性の高い存在であったかが語られた。

中でも印象的だった場面が3つあったのでメモ。

まず、ショーのモデルを務めた女性たちへのインタビュー。
ランウェイに出る前にマルジェラが衣装をそっと直してくれる、その手つきが優しいと。
中には乱暴な人もいて、さわられたくないと思うこともあるけれど、マルジェラは違った。
マネキンではなく人間として扱ってくれていた、という言葉。

次に、いくつも出てきたコレクションの映像。
有名ブランドのショーというと、何人ものモデルがランウェイを真顔で淡々と歩いて踵を返して去っていくというイメージだった。
もちろんそういう姿もあったのだけれど、開催地の地元の子どもたちが紛れたり(小さい子を肩車しているモデルがいた)、好きに歩いて観客に笑ってとマルジェラが指示したりと、思わず見ているこちらも笑顔になってしまうシーンもあった。

そしてなんといっても、幼少期の頃。
テレビで見たサマードレスにロングブーツというスタイルに衝撃を受けて、バービーのブーツのつま先をカットしたらしい(その番組がきっかけでパリのファッションデザイナーという夢を持ったとのこと)
そして、服を作っていたおばあさんに多大な影響を受けたという、
スケッチブックに人の絵を描き、おばあさんからもらった端切れで服やバッグや靴を作って貼って遊んでいたそう。
絵も上手なのだけれど、なんというか本当にこのことが好きなのだなと伝わってきて感動してしまった。

前述のとおり私はマルジェラというブランドのファンでもないし(ちなみに映画館にはファンなんだろうなという感じの人がたくさんいた)
ファッションが示すメッセージ性について普段全く考えてもいないけれど、
純粋に好きなことを一途に続けていた人、そして純粋な人と感じた。
奇抜なスタイルは彼の思想のアウトプットなのだろうけれど、自ら語ることはせず解釈は受け手に任せる。
匿名であることで自分を守っているけれど、同時に他人のことも尊重している。

ディーゼル傘下に入ってしばらくして、メゾン・マルタン・マルジェラというブランドから去った時を振り返っての言葉がよかった。(ニュアンスだけど)
僕は指示をだすディレクターではない。
ファッションデザイナーであり、作るのが仕事だ。

これに尽きそう。
もちろんどっちもうまくやれる人もいるのだろうけれど、作ることを使命として生まれてきた人というのも世の中にはいるんだろうな。

今は自分のアトリエでいろいろ描いたり作ったりしているみたい。
おもしろかったなあ。

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