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Jクラブの新戦術導入とジレンマ

 新シーズン開幕前の意気込みでは、「今シーズンはより攻撃的に、、」「自分たちが主導権を握る時間を長くして、、」「昨年とは違ったチャレンジをしたい、、」等々の発言がよくある。チームは生き物なので何回もシーズンを重ねていく中で、新しいサッカーにチャレンジする機会がやってくる。しかし、それは茨の道になることがほとんどで結末も残酷なことが多い。今回は筆者の主観で、Jクラブが新しい戦術を導入する際の背景・過程・結末の傾向を記していきたい。

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Jクラブがチーム改革を志す背景

 では、なんで厳しい道のりになるのに新しい戦術を取り入れチーム改革を行うのか。中堅・下位クラブに多い傾向として、例年の残留仕様の戦い方からの脱却がある。毎年、堅守速攻・セットプレー戦術で残留してきたようなチームからするとこのようなシーズンをこの先ずっと送っていても未来がない。いずれ降格する時がやってくると考えるのが普通だろう。残留争いから卒業し、上位進出を考えると大金でタレントを補強することが難しい中堅・下位クラブは、新しい戦術を取り入れる必要性がどうしても出てくる。そうなった時、多くのクラブは上位に行くためにはより多くの得点が必要になると考えるのが自然だ。つまりは、今までのように最小失点で抑えて数少ないチャンスで得点し、勝ち点を拾っていくサッカーではなく、自分たちがボールをもち主導権を握る時間が長くなるようにトライする傾向にある。

新戦術に伴う産みの苦しみ

 新しい戦術をチームに浸透させ、結果に結びつけることは一朝一夕にはできない。いくらキャンプで戦術練習に時間を割いても、プロの世界で勝ち点に繋げることは容易ではないのだ。前述したようなカウンター型のチームがポゼッション型に移行する時はなおさらである。戦術ばかりに意識がいって頭でっかちになると迷いから、今までの武器であった堅守も影を潜めてしまい失点も増える。ジリジリと前のシーズンより成績が落ちていき、気づいたら降格圏なんてことも多々ある。敗戦が重なれば自信を失うだけでなく、チームの雰囲気は悪くなり、新戦術を指揮する監督の求心力も低下するという負のスパイラルに陥ってしまう。これこそJクラブが新戦術を導入する際に多く見られる産みの苦しみである。

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上位進出を目指したはずが、、、辿り着いた残酷な結末

 負のスパイラルに陥り、残留争いに巻き込まれたチームはどうなってしまうのか。まず監督を解任し内部コーチを昇格させて、「もう一度、球際で戦おう」「チームのために走ろう」等々のコメントを発信し、割り切った強度重視のサッカーに方向転換することが多い。このやることがはっきりとした戦術は即効性があるため、チームは自信を取り戻して一定期間は勝ち点が積み重なったりする。これが世にいう解任ブーストなのだろう。こうして残留を果たしたチームは成績だけを見れば、監督交代後のシーズン後半は持ち直したことになる。「最後のほうは勝てるようになったしチームの雰囲気も良くなったね!」なんて声がファンや地元メディア、下手をすると選手からも聞こえてくるかもしれないが、誤解してはならない。上位進出のために新戦術を導入したシーズンなのに結局は昨シーズンと同じような戦い方で残留しただけであり、何も解決していないのである。こうして来シーズン以降も同じ課題が残ってしまう。

 Jクラブの多くが新戦術を導入する際にこのパターンで苦しんでいる。しかし、クラブの未来を考えてこのような取り組みを行うことが間違っているとも言えない。クラブの未来のために、茨の道になると分かっていてもチーム改革は必要なのかもしれない。このジレンマは今後も多くのチームが抱えていくことになるだろう。まさにクラブ経営の難しさが垣間見える現象である。

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