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矛盾だらけの森保ジャパン 〜名波浩の攻撃担当コーチ就任〜

 サッカー日本代表の新コーチに、昨年までJ3松本山雅を率いた名波浩が就任することが日本サッカー協会より正式発表された。カタールW杯後にそれまで森保ジャパンでコーチを務め、主に攻撃を担当していた横内・上野の両コーチがチームを離れたことを受けての就任であるので、攻撃担当のコーチとしての就任である。しかし、この人事については先月の森保監督続投会見の内容から考えると矛盾が多く疑問が多いにある。そのため、山雅サポーターで昨年まで名波監督の采配を見てきた筆者なりに整理していきたい。

続投会見で語った森保ジャパンが次のW杯に向けて積み上げるべきこと

先月の森保監督続投が発表された会見にて、次のW杯に向けて森保ジャパンはどう歩んでいくべきか質問があった。森保監督の回答は「特に上積みが必要なのはボールを握って試合をコントールしながら得点を奪うこと」というものであった。これは、カタールW杯までの森保ジャパンを見ていれば違和感のない回答である。森保ジャパンといえば、「いい守備からいい攻撃」をモットーとしており、自分たちが主体的にボールを握って圧倒する攻撃というよりは守備ベースの攻撃である。そのため、カタールW杯本番も含めチームとしての攻撃での特徴はほとんど出せていなかった。そのため、アジア最終予選のアウェイ中国・ベトナムにともに1−0など、格下相手にも攻撃で特徴が出ず塩試合になっていた。W杯本番はドイツ・スペインが同組なので致し方ない部分もあるが5−4−1ブロックがベースであり、ボールを握った攻撃が見られる時間帯は少なかった。比較的ボールを持てたコスタリカ戦でも攻め手がなく、最後は相手にワンチャンスをモノにされて敗れている。こういった経緯を踏まえて、森保ジャパンが次のW杯に向けて積み上げるべきことは、ボールを握っての攻撃であるのは納得ができる。そして、森保監督はそれを具現化できるコーチを就任させたいとも同会見で語った。ここで名波浩が森保監督の求める攻撃担当コーチにふさわしいのかが問題になるので、昨年まで監督として采配をしていたJ3松本山雅のサッカーから考えていきたい。

指導者としての直近の名波浩

 名波浩が松本山雅の監督に就任したのは2021年シーズンの途中で、当時チームは不調で残留争いに足を一歩踏み入れているという状況だった。そんな中でどんな采配をしたのかというと筆者の印象になってしまうが、残留仕様の引いてカウンターというわけでもなく、新たな試みを導入したということもなく無策だったように思える。本当にどんなサッカーがしたいのか、残留を目指すのか上を目指すのか分からない状態であったと思う。結局チームはJ2上位の人件費をもちながら最下位で降格した。この時点で筆者は名波監督の指導者としての手腕に疑問をもっていた。そして、2022シーズンはJ3での戦いで名波監督は続投。キャンプからチーム作りを行い、1年でのJ2復帰が求められる中でどのようなサッカーをするのか注目が集まったが、期待を大きく裏切るものであった。シーズン当初は守備時4-4-2から攻撃時5-3-2への可変システムなど試したが定着せず、結局行き着いたのは快速FW横山歩夢(今シーズンJ1サガン鳥栖に完全移籍)と怪物FWルカオの2トップ頼りの3-5-2の縦ポンサッカーであった。これには多くのサポーターがガッカリした。そしてJ3では圧倒できるはずの戦力を持ちながらボール保持率が全チームで最下位というのも衝撃的であった。J2昇格が最優先で内容には目をつぶったという言い訳もできるがなかなか厳しい内容であった。結局チームも昇格争いに最後までは絡んだが4位でJ2復帰を果たせず、名波監督もシーズン終了とともに退任となった。

 以上のことを踏まえると今回の人事には大きな矛盾があることに気づくと思う。森保監督は、ボールを握って試合をコントールしながら得点を奪うことを具現化できる攻撃担当コーチが欲しいはずなのに、選ばれたのがJ3で潤沢な選手層を持ちながら年間通してリーグ最下位のボール保持率で縦ポンサッカーをしていた名波浩ということだ。反町技術委員長もコーチの人選について監督の意向を最優先したと言っていたのでこれは森保監督の意向なのだろう。森保監督は本当に何を基準に選んだのかが疑問で仕方ない。ちゃんと山雅のサッカーを見ていれば今回の人事はないはずだが、日本代表監督がW杯イヤーにJ3のチームを見るとは考えにくい。活動前からすでに不信感しかない新森保ジャパンであるが、またまた選手主体の戦術決定で次のW杯で結果を出していくのか、筆者の予想とは反対に名波コーチが手腕を発揮し森保監督の想い通りのチームに進化するのか見守りたい。


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