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理想のサッカーを追い求めた先に生まれる究極のチーム

J1最終節、リーグ史上最多の観客で埋め尽くされたホーム日産スタジアムで横浜Fマリノスが15年ぶり4度目の優勝を決めた。この試合は優勝に僅かな望みを残す2位 FC東京との直接対決であり、難しい試合になることが予想されたが、終わってみれば3−0の快勝であった。4点差以上の敗戦でなければ優勝というかなり有利な状況であっただけにマリノスはリスクを回避する手堅いサッカーを選択することもできたが、アンジェ・ポステコグルー監督は、今季を象徴するように最後まで攻撃的なサッカーを貫いた。どのような状況であろうと自らの哲学をピッチで表現するこの姿勢こそまさにポステコグルーらしいと言えるだろう。

理想を追い求めるポステコグルーの印象

 筆者がポステコグルーを認識したのはロシアW杯最終予選でオーストラリア代表と対戦した時であり、あまりいい印象を持っていなかった。ポステコグルーは当時、オーストラリア代表を指揮していたのだが、そこで目指していたのはペップグラウディオラ(現マンチェスタシティー監督)のチームを彷彿とさせるようなボールを持って主導権を握り続けるサッカーであった。オーストラリアの選手といえば強靭な肉体で泥臭くプレーすることを得意とする選手が多く、キック&ラッシュでゴールを脅かして結果を出してきた。そのため、足元の技術が高いタレントは豊富ではなく、ボールを細かく繋いで主導権をもつ戦術は厳しいという見方が多かったが、それでもポジショナルプレーを信仰するポステコグルーはそのスタイルを貫いた。実際、日本戦でもオーストラリアは自陣で慣れないビルドアップをしている際に原口元気のプレスにかかり、そこから失点していた。それもホームとアウェイで2度もだ。体格で劣る日本からしたらゴール前にロングボールをどんどん放り込まれてフィジカル勝負に持ち込まれる方が嫌だったと思う。実際に今までもその戦術でオーストラリアは日本より優位に立つことが多かった。

 このような事象から筆者はポステコグルーに対して、理想を追うことで今いる選手のよさを活かしていないとダメなレッテルを恥ずかしながら勝手に貼っていた。これは筆者が、ジョゼ•モウリーニョ(現トッテナム監督)やハリルホジジッチのように、分析型で理想を追わずに相手の良さを消すことを得意とする監督を好んでいたことから、理想を追い求める監督にアレルギーがあったせいかもしれない。筆者はザ・現実主義の反町監督が率いる松本山雅FCのサポーターですし、、、

けれどそれと同時に、どんな状況でも自分の目指すサッカーを貫く芯の強い監督という印象をもったことを覚えている。

王者マリノスにみるチーム作り

 ポステコグルー が就任した昨シーズンのマリノスは、ポジショナルプレーを目指す過程の中で苦しんでいた。ビルドアップ時のミスによる失点やハイラインを保つことによるゴールキーパーのミスなどが注目され、結果もなかなか出なかった。キャプテンの喜田拓也も優勝後、TVのインタビューで「昨シーズンはうまくいかないことが多く我慢の時間だった。けれど自分たちの目指すサッカーは変えずにやり続けることで今シーズンに形になった。」と語っていた。喜田選手の言うように理想を追い続けたマリノスは、今シーズンになってペップ率いるマンチェスターシティーを彷彿とさせるようなポジショナルプレーをベースとして、圧倒的な攻撃力でライバルチーム達を打ち破った。 

 現実を見つめ手堅く目の前の勝利を最優先するチーム作り、理想を追い求め、時間をかけて行うチーム作り。さまざまな方法があり、どれが正解ともいえないが今回のマリノスの優勝で学んだことがある。たとえ時間がかかり上手くいかない我慢の時があったとしても、チーム全員が目指す理想のサッカーを共有し、優れた戦術眼を持つ監督のもとで適切な努力を続け、それが1つの形となった時、究極のチームが生まれるということだ。前述したように  ポステコグルーのような理想主義の監督に対してよい印象をもっていないかった筆者だが、今シーズンのマリノスの躍進とともに考え方が変わった。

 ペップグラウディオラのチームは優勝した後も常に新たな戦術を加えて進化を続けている。来季はチャンピオンとして多くのライバルチームから研究され、マークされるだろうが、ポステコグルーのもとで1つの形を完成させたマリノスが同じようにアップデートを続けていけば、今後も王者として君臨し続けられるかもしれない。


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