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笑顔の退任会見 ブーイングなしで反町監督が山雅と別れることができた理由

 11日に松本市内のホテルで松本山雅を8年間指揮した反町康治監督の退任会見が行われた。反町監督にも笑顔が多く見られ、会見は和やかな雰囲気で行われた。反町監督も「本来、こういう会見というのはあまり行われないものではないのかなと正直思っております。私の職業というのは追われるように夜逃げをする職業ですので不思議な気持ちですが、こうしてメディアの方々に集まっていただき、ある意味うれしく思っています。」と照れながら語った。反町監督が夜逃げと表現したようにJリーグの監督が退任する際には、成績不振の責任を追及され、サポーターとの関係も悪くなり、追われるようにクラブを去っていくことも珍しくない。しかし、この会見からは、反町監督と松本山雅が良好な関係を維持してきたことがよく分かる。では、なぜ反町監督は、8年もの長きにわたって円満な関係を持ち続け、笑顔でクラブと別れることができたのか。

 1つ目の要素としては、反町監督のチームづくりにある。反町監督は山雅を率いた初年のシーズン終盤に次のように語った。「自分自身も海外ならバルセロナやローマの試合を好んで見るように、見るなら攻撃の方が楽しいし、誰もがゴールシーンを見たいものだ。しかし理想と現実は違う。現実を見つめ、チームに必要なことに着手しなければ監督業はできない。好きなことばかりやっているチームは順位が下がってくる。選手が違えば戦い方も変わるし、並びも変わる。練習を見ながら、選手のよさを120%出せるようにやっているつもりだ。」このように反町監督は、自分の理想を捨て、現実を見つめながらその時にいる選手の力を120%引き出し、そのチームにとってベストな戦いをするのだ。しかし、それ故にこの現実的なサッカーを退屈という人もいるかもしれない。そのことは反町監督も自覚しており、退任会見でも「会見では、「ブーイングされてもおかしくない試合なのに」という枕詞から始まった監督コメントが多かったのかもしれません。本当にストレスの溜まるようなゲームをしたりとか、特に今年はそういう試合が多かったのかなと思っています。」と話している。

 そこで重要になるもうひとつの要素が、理解ある松本山雅サポーターの存在である。山雅サポは、敗戦後のチームに対してブーイングを浴びせることはない。それはJ1を舞台とし、6勝13分15敗とかなり厳しい戦績であった今季も同じであった。その理由は、山雅サポが謙虚な姿勢で松本山雅というチームをよく理解しているところにある。松本は地方都市であり、チームのスポンサーになってくれるような大企業は少なく、J1が舞台となるとその財政規模は厳しい状況である。そして、地方を好まない選手も少なくないため、J1で活躍するようなタレントの獲得も難しい。山雅サポはこのような状況を十分に理解しており、反町監督や選手に対しても「厳しい台所事情の中でベストを尽くしてくれている。」という思いが強いのだ。また、山雅は2012年にJ2に昇格したばかりで歴史もまだまだ浅い。よってJリーグでの黄金時代というものはなく、過去の栄光にすがり「あの頃は強かったのに今はな、、」という思いをすることもないのだ。山雅サポは、J1昇格にも奢ることなく、常に謙虚な姿勢でチームを見つめている。

 現実を見つめ、ベストを尽くすために手堅いチームづくりをする反町監督とそれに対する山雅サポの理解と謙虚な姿勢。それこそが反町監督が、8年もの長きにわたって円満な関係を持ち続け、笑顔でクラブと別れることができた理由だと筆者は思う。

#松本山雅FC   #反町康治 #反町監督 #Jリーグ #サッカー

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