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小説 カフェインpart23

そして一番の妄想は憧れのあの方が私を迎えに来てくれて結婚してくれるという妄想。キャー、はずい。
その一方でこういうことを医師や看護師さんたちに言ったら退院が長引くということ、冷静に判断している自分もいるわけです。
憧れのあの方と結ばれる。
私のツインレイはあの方。
妄想街道暴走中でしたが、私なんかが選ばれるわけがないともはっきりわかっている。
独房の中で冷静に考えながら妄想に耽る。
昔の文豪なら美文をもってして、この囚われの状況を表現してくださるに違いないわね。
ご飯は朝昼晩と看護師さんが運んでくださり、歯磨きや洗顔、シャワーの時だけ、檻から出られるわけです。
床頭台は部屋の外に置かれています。
余りにも暇なので部屋の中で滅茶苦茶に踊っていたら,K看護師に目撃され、「踊るなら日本舞踊にしてね。」とたしなめられてしまいましたとさ。
鉄筋の病院のベッドに脚をぶつけたりしたら骨折は免れません。
精神科しかないうちの病院じゃ対応できません。
あまりにも何もないと人間自分の体を使った遊びに走りがちです。
ベッドに脚をかけての腹筋とか、それも危ないと言って怒られたけどな。
あとは茫然と日が過ぎるのを待ちながらご飯を三食平らげる。
お薬をたーんと飲む。
これが急性期の過ごし方なのでした。
ね、退屈でしょ。
問題がなければ部屋はとんとん拍子に移動になります。
それでもまだおやつは看護師さんに代理で買ってきてもらう。
入院中にも、おやつ、あるんですよ。
お金を預けておいて、そこからおやつ代がでる。人によりますが、三百円か五百円以内。
まだ人の多い所には出られない場合、売店のカタログを見せてもらって、「ポッキーとポカリお願いします。」とお使いに行ってもらう。看護師さんが忙しくなければ午前十時半ごろ。
ポッキーが赤い箱の方じゃなくてアーモンドクラッシュポッキーだった時に「私の好みまで把握しているのか、看護師さんって素晴らしい!」と大興奮だった。
赤いポッキーが売り切れだっただけらしいんだが、嬉しい誤算だ。だんだん自由が増えてきて、看護師さん付きで売店に買い物に行けるようになります。
一病棟はこんな感じ。
個人的な見解として、一病棟の看護師さんたちはそうとうタフじゃないと勤まんない気がします。
からだも大きな人が多いし、緊急性の高い患者が多そうだから的確に動けなきゃ駄目そうだ。また一病棟の看護師さんは恰好いいのよ!
気が利いてて優しくて、女性も男性も面白いです。看護師さんたちと離れがたくて二病棟に移りたくないって患者もいると思われ…、それじゃ意味ないけどね。
さぁ、だんだん調子も整ってきたら二病棟に移動です。
外に出られるように慣らしていく場でもあるし、落ち着いて日中を過ごす場所として二病棟がある。
患者さんも男女で三十名ぐらいいて穏やかな時間が流れている。
テレビがあるよ。
春はセンバツ高校野球、夏は甲子園、夕方は相撲。NHKさん大活躍ですな。
男女解放病棟です、ちなみに。
食べ物のやり取りや個人情報たとえば住所や電話番号の交換は禁止。なぜならトラブルのもとだから。
退院後昼夜電話がかかってきたりする可能性もある。
男女トラブルもなくはないんですよ。
若い人もそうですが、家族に不満を持っている中年男女間の不倫なんかも否定できませんからね。
病院側からトラブルが発生しても責任は持てませんとくぎを刺されておるのです。
一病棟もですが携帯電話、ゲーム機などの持ち込みは禁止、というかほとんどのものが持ち込み不可です。
あ、そうだ洋服にはもれなく名前が書かれます。お気に入りの服は持ち込まないほうがいいでしょう。下着にも書かれるよ。マジックで。
ひも付きのジャージだったらひもは抜かれます。自殺防止の為です。
病院食はおいしいですが出てこないものもある。
刺身やお寿司、ジャンクフード!
娑婆に出たら何を食べたいかというトークでもマックのポテトが大人気だったなぁ。
私の父親はお土産にロッテリアのエビバーガーセットを持ってきたことがある。ナイス!
患者に人気のおやつは何でしょうか?
男子にだんとつ一番人気なのはカップ麺だ!
おかしいな、夕飯が終わったばかりなのにカップ焼きそばの匂いが、ぷーん。太るよね。でも食べたい。ポテトチップスも人気があるね。売り切れになる時もあるぐらいだから。
ほとんど運動はできません。
ラジオ体操、中庭の散歩それぐらいです。
ゲーム類も一応あります。将棋、囲碁、リバーシ、トランプ。
トランプだけはナースステーションで管理されていた。
プラスティック製で武器になるからか?
でも碁石だって思いきりぶつけたら痛いよな。
マンガもありました。
こち亀に夢中になり、のだめに夢中になり。ドラゴンボールも読んだぞ。両さん最高!こんなに男前でスケールがでかい人、他にいるでしょうか。両さんに救われた入院生活、万歳!
雑誌はねー、せめて新しめのものを置いて欲しかったな。
だって、十年前のちばウォーカーって、もう店つぶれてやってないところもあるでしょうに。
ファッション誌も何周しちゃったの、この流行という感じだ。
院内は照明が暗い。
鏡を見るたび不健康な精神状態になってしまうほどです。それにすっぴんだからはずかしいよ。
リップの一本ぐらい許してほしいが、顔色を見る為に仕方がないのかもしれない。
二病棟では洗濯は自分でやります。我が家は遠いので洗濯物を持って帰ってもらうのは気が引けるのでよかったです。
入院生活はのんびりまったり過ぎていきます。
その間だいたい三ヶ月!
つまらないからわざとメンヘラ気取って入院しないほうが身のためだよー。
退院が決まったら入院グッズを家に持って帰って終了です。
洗面器とかシャンプーとかコップとかバスタオルとかティッシュとかパジャマとか。
退院できた時はいつも空ってこんなに広いんだっけと感じます。
中庭とか格子越しの部屋の窓からしか見られないから

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