見出し画像

小説 カフェインpart29

 この文章はノートに比較的整った文字で書かれていた。
感想としては、しでかしって本当大変なんだなってこと。
周りの人々に迷惑をかける、でもそれはカフェインの病気がさせたことだろ?
カフェインが好きでトラブルを起こしてたわけじゃないじゃん?
そのエピソードをきちんと笑いに変えて施設の仲間に語っていたカフェイン。
原付で京葉道路逆走!伝説の女カフェインっす。
レレレのカフェインになったこともあったなぁ。イミフっすか、すいません。
テンションの高いカフェインばっかりわたしは目にしてきた。落ちてるときは施設には来てなかったからカフェインのこと、何も知らなかったわけで。見せたくなかったのかな、明るくなれない自分のことは。
でもさ、悩みながら頑張ってたわけじゃん。
あとライブでユニゾンって一緒に歌ってる人なんか普通にいるっしょ。そんなに気にすることかな?
ノートを盗みに入ったカフェインの部屋にはたくさんの彼女の愛した物たちで溢れてた。
いつも背負っていたぼろぼろのリュックサック、ノースフェイスの紫のラベルが貼ってある。
これ、中古で一万したんすよ埼玉の新秋津ってとこでひとめぼれしたんすよ。だからぼろくても使い倒しますよ。ボンドで修正して使ってるくらいですから。このうっすい花柄が渋くないっすか?
棚にはわたしがカフェインの誕生日にあげたピィアースのハリネズミの宝石入れが置かれていた。ハリネズミ飼いたいんすけど、ちゃんと生き物を育てられるか、多分無理だからあきらめてたんすよ、これかわいいっすね。ありがとうございます!
たくさんのCD、雑誌、マンガも棚に収められていた。ペッツやフィギュアもあとなぜかけん玉も。
涼子さんがプレゼントしたチチカカのストールは机の椅子に掛けられていた。気に入って冬にはよく首に巻いていた。
洋服はポールハンガーに滅茶苦茶にかけられて、たくさんの帽子は段ボールに適当に突っ込まれて溢れていた。
髪短いから冬は頭が寒いじゃないっすか夏はキャップかぶることが多いし、ショートだとまるわかりでしょ、絶壁。これはパフィーのライブ会場で買ったんすよ。やっぱシャレオツだわー、自分は由美ちゃん派なんすけど亜美ちゃんも捨てがたいな、スパイラルパーマかけたことあんだけど全然似合わなかったなぁ。
施設のみんなで撮った写真も飾ってあった。みんなの真ん中にはいつもカフェインの笑顔があった。
ノートはまとめて机の上に置いてあった、直前まで読んでたんじゃないのかな、あの子。人生を振り返っていたのかもね。
これだけの文章を書く集中力があったのなら想像力は?
自分がいなくなった後の世界でこんだけ影響受けてる私たちの立場。うなだれていたあんたの両親や弟や食欲を失って化粧もしないでコメダに来た涼子さんや四十前で一緒に心中しようとか言っといて彼女作って幸せな西門や一緒に音楽の話ができなくなった馬場君。みんなのことはそのままでいいって死ぬ前に少しは想像した?。眠るように死んでいきましたなんて嘘でしょ?ねぇ本当は苦しんだはずでしょ。いっぱい薬飲んだ後で生きてる方がましだって思わなかったの?まだまだ生きてれば楽しいことあるかもって気づいてやっちまったーって叫ばなかったか?
カフェイン地獄で待ってろよ、コーヒーなんて飲めると思ったら大間違いで血の池地獄にどっぷりつからされてる頃だろう。
「あー地獄きちぃっすわ。鬼いかちぃ。」
カフェインがうめいてる声を想像した。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?