小説 カフェインpart27

いつも上機嫌だった、上機嫌なところしか見せないようにしていたカフェイン。
「ハローワークでお前に勤まる職業はないって言われちまいましたよ！なんだあいつら。だから決めました！わたし芸人になります！」とブチ切れていたことがあった。
はぁ？何言ってんの。施設で宣言したカフェインにみんなはいつも通りの軽口だろうと笑った。
「本気っすよ、ネタ作ってオーディション受けますよ。仕事がないなら作るしかないじゃないっすか！」
どんなネタをやるのかみんな興味があったが、カフェインは恥ずかしっすと発表することはなかった。実際Ｒ―１に応募して海浜幕張のよしもと幕張イオンモール劇場の舞台に立ったと自慢していた。
「一回戦落ちでしたけど時間オーバーもしなかったし、だせぇ真似はしませんでしたからよかったっす。」

どうやらネタらしきものが出てきた。
 
ファッションアイコニスタ　瑠璃
「どうもー、ファッションアイコニスタの瑠璃でーす。(一回転)
今日のファッションは、黒のタートルに黒のパンツそして素足に黒の
パンプスです。
これがいつものりーるースタイルです。
銀幕の妖精・オードリーに憧れてるってこともあるんだけど、
瑠璃若い頃からスタイリストしてるじゃない？
すてきなラブリーボーイ、ちょっとＨなミルキーっ子とか？
鮮やかなものを身に着けてもらいたいって気持ちがあったの。
そうすると自分に色があるのって (一拍)邪魔なのね。
でも三輪明宏様には怒られたー、「このカラス族が」って。
え、カラス族知らない？(一拍)お勉強しましょ！
持ち物チェック？瑠璃は断然小バック派です。
お財布？持ってなーい。
マネークリップに挟んでポケッツにいれる。小銭はバラまきながら歩くのがマストよ。
これはホルスタイン柄のお手帳フランフランで発見しました。
瑠璃、乳牛って尊敬してるのね。だってあんなに搾取されてるのにモーモーモーモー楽しそうじゃない？
だから瑠璃の中ではオードリーと乳牛は同じ引き出しにいれています。
え、これホルスタイン柄じゃない？何柄？ダルメシアン？
いやーだー１０月から気が付かないで使ってた。
瑠璃、今声楽やってるのね。
だから、浅田飴、浅田飴、トローチ挟んで浅田飴。
(バックから浅田飴を取り出しながら)
あら、図らずしも権藤、権藤、雨、権藤のリズムだったわよね、
オマージュー！
え、権藤を知らない？権藤は球界のマストアイテムよ！
あなた西暦何年生まれ？
お勉強しましょ！
声楽の先生にはね、絶対音感があるって、それと声帯が強靭だって。
めざせマリア・カラスよね。
瑠璃ね、空気の読めない女って呼ばれています。
でも空気って読むものじゃなくて吸うものじゃない？
じゃなきゃ死んじゃうじゃなーい。
趣味はうーん元素周期表を眺めることかな。
押し元素は元素番号４１番、ニオブです。
ニオブってすごくロマンティックな名前の付け方されてるのね。
ニホニウムとは大違い。
好きなアーティストは椎名林檎ちゃまと、ある男の子ちゃんバンド、イエナーイ。言ったらバッハがやきもち焼く。
ちゃんちゃん。」
 
おーいカフェイン、はっきり言って面白くねぇぞ、このネタ。一回戦で落ちたのもわかるよ。あんたは身の回りの人を笑わせる天才だったけども芸人の素質はなかったんだね。わたしたちの前では頑なにネタを見せるのを拒んだのに、大舞台によく立てたものだ。足がすくんだりはしなかった？声が震えたりはしなかったか？
仕事なんてできるやつがやればいいんだよ、あんた病気が寛解状態じゃなかったんだからさ、無理に働くことはなかったんじゃないの？カフェインは施設に来てみんなと馬鹿やるのが仕事だって割り切ればよかったのに。
終わっているわたしは働く気なんてこれっぽっちもないからさ、あんたの気持ちよくわかんないよ。心の中で最近はいつもカフェインに話しかけている。