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アメリカ自然食レストラン「PPP」チャレンジ8週間記録 -2-時間を止めた

私達の事業は、①デルタ航空ポートランド→成田行き(現在は羽田行き)デイリーフライトの機内食(エコノミーとビジネスクラス)の和食を提供、実際にお店のキッチンで毎日作っている。②会社の各種パーティー、結婚式等の大型ケータリング、③お弁当ケータリング、④週4日、しずくランチ営業、⑤週3日、しずく完全予約制おまかせディナー営業(プライベートダイニング等を含む)の5本柱の事業をこれまで行っていたが3月14日土曜日を最後に全て止まってしまった。

「お店を閉めよう」

3月13日金曜日の満席で迎えたディナー、中盤だったかご年配夫妻の男性が食事の途中でむせて咳込んでしまった。他のお客様がぎょっとした顔で彼を見た、男性は大きな声で「俺はコロナじゃないよ」と言った。同席の奥様が「冗談でもそんな事言わないで」と切ない口調で言われた。我々は普通にお水を取り替えて「落ち着かれましたか」と対応した。キッチンまでそれらの英語のやり取りが聴こえて来た時、ふと前日に見たイタリアの惨状が脳裏に映った。翌日の土曜ランチは通常は激込みするのだがこの日はいつもの半分程の来客数、その中の常連のお客様が、「事業は大丈夫ですか?僕達は来ることしか出来ないけど毎週来ますから頑張って下さい」と。その日のディナーはキャンセルが少し出たがそのキャンセルもJames beard award のお蔭もあってすぐに埋まった。お客様には恵まれていて素敵な人ばかり、昼間のお客様同様に「どうやったら助けられますか?毎日来たら困りますか?」と言って下さる方々に声が震えた。でも同時にもうここに「楽しい、美味しい」だけの単純な喜びを与える事は出来ないとも思った。もし誰かが保菌者だったら…この人達にも広げてしまう。スタッフはどうなる?家族達は?「閉めよう」コロナをオレゴンに広げない、健全な未来を戻す為に今すぐお店を閉めよう…もうそれしかない。翌15日の日曜日の昼、すべてのスタッフに電話でお店を閉める、全員を解雇する旨を伝えた。それから数時間後、オレゴン州知事からレストラン閉店のオーダーが出された。 つづく


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