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やさしいビニール傘

「やさしさの循環」のお話。


JR神戸線に揺られていると雨が降ってきた。

傘を持っていなかったので、駅でコンビニに寄ろうと思ったら、目的地の塩屋にはコンビニがなかった。どしゃ降りの雨。


このまま歩けばびしょ濡れになる。小さな商店でもあれば傘が買えるかもと思い、ひとまずカフェで傘が買える場所を聞いてみることにした。


「近くで傘が買える場所ありますか?」


カウンターから出てきてくださったお兄さんは「スーパーもコンビニもないので…待っててくださいね」とビニール傘を持ってきてくれた


はじめての方に傘を借りるわけにもいかない。お断りするも「何本もあるので!」と固辞される。


帰りがけにチョコレートケーキを買い、カフェにもう一度立ち寄った。


お礼を伝えてケーキと傘をお渡しすると

「まだ降ってるので、差して帰ってください。お風邪引かれないように。」と笑顔で見送ってくださった。寒い夜に、ほのりとあたたかくなった。



電車にのって乗り換え駅に着くと、次の電車が運転見合わせになっていた。


駅にはあふれるような人、人、ひと。

改札の前には長蛇の列。対応を続ける駅員さんもおつかれの様子。


駅員さんの対応の順番が回ってきたとき、さっきもらったやさしさを誰かに返したくなり、「大変なときにありがとうございます」と後で食べるつもりだったクッキー袋を差し出した。


駅員さんはすこしおどろいていた。でもすぐに、ちょっとほどけた顔で「ありがとうございます」と微笑んでくれた。なんだかうれしかった。



私はもらった傘をなくすかもしれないし、駅員さんはクッキーを食べずに捨ててしまうかもしれない。


それでも、お兄さんのやさしさや、駅員さんのほどけた顔はずっとこころに残っている。



雨と運転見合わせ、

ハプニングがやさしい思い出になりました。



やさしさは循環する。やさしい世界をつくりたいなら、まずやさしさを配る。

あなたがよんでくださって心がポカポカしています☕