見出し画像

みんなの気持ちが未来に向かうように|THE GREAT BURGER 車田 篤さん

緊急事態宣言が発令され、外出自粛が呼びかけられた5月。STAY HOMEでおうち時間を過ごす方々に、少しでもCHEESE STANDらしいメッセージを届けできないかと考えて、私たちのチーズを使ってくださっているシェフの方々をお招きしたインスタライブを企画しました。テーマは「with coronavirus 飲食店の未来を語りましょう」。手前味噌ながら、自由な感性で料理を創造するシェフにご愛用いただいていることもあり、コロナ禍でもしっかりとしたビジョンで、芯のある内容になったと思っています。
 全7回のシリーズの第6回目は、原宿にある「THE GREAT BURGER」のオーナーで、「The Little BAKERY Tokyo」や「GOOD TOWN DOUGHNUTS」などのアメリカンスタイルの人気店を展開する車田篤さんです。5月26日に行ったCHEESE STAND代表の藤川真至とのインスタライブから3カ月が経って、現在の状況やコロナ禍の取り組みなどを聞きました。(インタビュー:2020年9月5日、青山一丁目「The Burn」にて)

画像1

飲食店は「求められている歓び」がエネルギーになる

――5月26日にインスタライブでお会いして以来ですから、もう3カ月も経ったんですよ。(藤川、以下同)

あの時は、東京の緊急事態宣言が解除された翌日でしたね。営業が終わった原宿の「THE GREAT BURGER」で話したのを覚えています。

――あのときから原宿の状況はどうですか?

6月末から都知事選(7月5日)くらいまでは、少しずつお客様も戻ってきたのですが、7月23日からの4連休前に小池百合子都知事から外出自粛要請が出て以降、ガンと落ちてきました。例年だと人が増えるお盆も、平日に毛が生えたくらいの人出でしたね。

人の流れが変わった印象はないのですが、流れの”水かさ”が減って、時々干からびてるみたいな(笑)。店の売り上げでいったら、平日は以前の半分、休日は2/3くらい、トータルでは例年の6割に届かないくらいです。

――SHIBUYA CHEESE STANDも同じような状況です。厳しいですよね。インスタライブの時はパンケーキやハンバーガーのミールキットを販売されていましたが、今はどうでしょうか?

緊急事態宣言中は、STAY HOMEでご家庭にいる時間が増えたこともあり、パンケーキのキットが3000箱以上もご購入いただけました。ちょうどスーパーなどの小売店の棚からパンケーキの粉がなくなったりしていましたからね。

パンケーキは、4袋、8袋、12袋のパックで売っていたのと、消費期限1年あるということでおまとめ買いをされた方も多く、今は注文が落ち着いています。

一方で、ハンバーガーキットが、今は動いていますね。月に100~150箱くらいでしょうか。先日、コロナ前に収録していたテレビ番組が放送されてました。その中でコロナ後の取り組みとしてハンバーガーを取り上げてくださって、その反響で注文がドンと入った感じです。先週2000個くらい発送させていただきました。

――テレビの効果はやっぱりすごいですね。ちなみに、都内からの注文が多いですか?

都内からのご注文は1/3くらいです。残りの2/3は、北海道から沖縄まで全国からご注文いただいています。お店に来られないけど知ってくださっている方がたくさんいらっしゃるんですよね。

お店を休業して、僕らがやるべきことができなくなったときに、何のためにこの仕事をしていたのかという存在意義を見失いかけていた時期もあったのです。だけど、通販を始めてこうやって全国から注文がくると「俺たち求められているんだ」と、精神的に救われました。飲食店にとっては、やっぱり求められているのが歓びですからね。

――僕たちもオンラインの注文がふだんの6倍くらいに増えました。ほかにも、さとなおさんにクラウドファンディングもしていただいたし。コロナになって、なんだかお店側がお客様に助けていただきましたよね。

画像4

「モチベーションコントロール」をどうしていくか

――インスタライブの時に篤さんがご自身で、ブランドのビジュアルデザインもやっているという話を聞いて驚きました。

もちろん、いろんな人が関わって生まれた化学変化も素晴らしいと思っています。ですが、それには強力なクリエイティブディレクターが必要で、そうじゃないとなかなかきちんとまとまらない。

僕は、オーナーでシェフもやりながら、さらにデザイナーでクリエイティブディレクターまで全部やる。そのため面白さが出にくいというデメリットがあるかもしれないですけど、ブランドを作った人が全部やった方が、テイストも出しやすいんじゃないかと思っています。

――CHEESE STANDには、季刊で発行しているCHEESE PAPERがあるんですけど、そこはプロフェッショナルな人たちが集まってくれて、バンバンとやってくれているから、僕はほとんど何もしてない(笑)。

いいなぁ、それを僕は自分でやってる(笑)。

緊急事態宣言が出てからは、スタッフを集め「最低限6割のお給料を出すので、家でおとなしくしてくれ」と話しました。スタッフたちは、店をクビになる話だと思っていたみたいで、みんなよろこんでいました。

それもあって緊急事態宣言中はスタッフがいないので、朝からお店に立って接客して、料理も作って。店を閉めた夕方からは、通販の梱包や伝票制作などの発送作業をしていました。STAY HOMEとはまったくいかなかったです(笑)。

――通販はこれからも続けていく予定ですか?

そうですね。最近、焼き立てパンの発送も始めました。朝焼いたパンを急冷してその日のうちに発送するんです。THE GREAT BURGERの通販サイトで毎日10箱くらい販売しているのですが、ありがたいことに開始から数分で売り切れてしまいます。

新商品を出さないと、元からある商品も売れていかないので、ちょっとずつ商品を増やしていこうと思っています。

――新しい仕事が増えてくると、現場のスタッフの対応も難しくなってきませんか?

最初は、やっぱりみんなも戸惑いますよね。じつは営業を再開して大変だったのは、スタッフの「モチベーションコントロール」でした。

THE GREAT BURGERは、ありがたいことに忙しい店だったので、みんなそれに慣れているというか、どちらかというと忙しい方が好きなタイプが多いんですね。だから、時間を持て余してしまうと、ダラっとしちゃうところもあって。

―――どうやってコントロールしていくんですか?

気持ちを未来に向けてあげるんです。

たとえば、THE GREAT BURGERThe Little BAKERY TokyoGOOD TOWN DOUGHNUTSの3店は横並びに並んでいます。The Little BAKERY TokyoGOOD TOWN DOUGHNUTSは19時で閉店なのですが、THE GREAT BURGERは23時まで営業しているので、19時以降はThe Little BAKERY Tokyoの前にテラス席をセットするようになりました。

それは、コロナだからテラス席が重宝されるというだけじゃなくて、今後お客様が戻ってきたときにTHE GREAT BURGERには、テラス席が使えたよなというイメージ付けをするためなんだよ、ということも説明するようにして、気持ちを未来に向けさせてあげるんです。

――すごいなぁ、篤さん。僕もスタッフにきちんと話していかないとって思いました。

営業を再開して、事業を見直ししてスリム化できたのも良かったですね。

たとえば代々木上原にあるGOOD TOWN BAKEHOUSEは、コロナ前は朝から夜まで営業している店でした。ですが今は、朝食を土日だけにして、スタッフを1人少なくして営業しています。

だけど店の売り上げは9割くらいまで戻ってきている。つまり店が以前より効率的にまわっているわけです。そういう実体験をスタッフに与えられたもの大きいですね。スタッフの方からも、このままの人数で続けて、プラス100万円くらいいきたいと言ってくれていて、心強いですね。

お客様の期待を超え続けられる店が繁盛店になる

――これからの飲食業界ってどうなっていくと思いますか?

非接触のサービスが増えるということはそれほどないんじゃないかなぁ。極端な意見では、イートインの飲食店がなくなるという人もいますけど、僕は新しいものが本流にはならないと思うんです。生活様式の基本ベースは変わらず、新たにオプションができるぐらいのイメージ。何百年も人間が続けてきたことは、それほど大きくは変わらないはずです。

ただ、コロナのインパクトは大きかったので、この状況を利用して新しいサービスはできるかもしれないですよね。すでにデリバリーとか、Uber Eatsのようなものが都心ではすでに充実していきています。それが地方に広がっていきますよね。

――THE GREAT BURGERとしては、変わることってありますか?

THE GREAT BURGERとしての軸は変わりません。大好きなアメリカを表現し続けること。もう一方で飲食店として大事にしているのは、お客様の期待を何度も超えていくことです。

初めての人はワクワクしながら来てくださって、2回目以降は前もよかったから期待を高めてきてくださる。飲食店はいろいろな細かい要素があるけど、そうやって期待を超え続けていけばお店は繁盛する。ですから、お店にいかに来てもらうか、そして店でどう過ごしてもらうかという僕らの軸は変わらないと思っています。

――最後に、篤さん流CHEESE STANDのチーズのおいしい食べ方を教えてください!

フルーツと東京ブッラータの組み合わせかな。僕自身がフルーツが好きっていうのもあるけど、季節のフルーツに、さらに濃い目のジャムとかソースをつけるとより合うと思います。

画像2

あと新商品の「さけるモッツァレラ」もおいしいですよね!

――今度、「さけるモッツァレラ」は、JR新宿駅構内にあるMiNi by FOOD&COMPANYで置いてもらえるようになりました。旅行や出張帰りの方が車内のおつまみで買ってもらえたらと思ってます。

今は、商売として都心部でやっているけど、自分の人生をみた場合、東京を近い将来離れたいなと思ってます。じつは、3年前くらいからぼんやり考えていたんですけど、コロナでより加速した感じです。

――篤さん、いつも言ってることが変わらないの本当に素晴らしいと思います。また、いろいろとお話させてください!スタッフにいうこととか、おれもいっていかなとな。

画像3

Atsushi Kurumada

株式会社LDFS/株式会社GUIDING LIGHT 代表取締役。1977年生まれ。愛知県出身。21歳で上京し様々な飲食店で経験を積む。2002年、24歳の時に独立開業し現在は東京・原宿「THE GREAT BURGER」を核に「GOOD TOWN DOUGHNUTS」「GOOD TOWN BAKEHOUSE」「THE GREAT BURGER STAND」「The Little BAKERY Tokyo」といった東京を代表するアメリカン業態の飲食店の他、和食業態の「THE TEISYOKU SHOP」など様々な飲食店を手がける。2016年には、「GOOD TOWN DOUGHNUTS」でカリフォルニアに進出も果たした。

文・構成=江六前一郎

ーーーーーーーー

次回の「with coronavirus 飲食店の未来を語りましょう」(第7回)は、渋谷のモダンタイ料理「chompoo」の森枝 幹さんです。CHEESE STAND公式noteをフォローしていただいて、次回もお見逃しないようにしてくださいね!

with coronavirus 飲食店の未来を語りましょう」の記事をまとめたマガジンの登録もお願いいたします!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?