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駆ける

男はひどく疲れていた。

チームで抱える案件の納品直前に無茶な仕様変更の要請があり、膨大な量の作業に追われていたからだ。

男「(明日からは残業続きだな…)」

男は電車に深く体重を預けて座り込み、明日からの日々を憂いた。

男の姿は暗雲たるオーラを放っており、人間よりかは海底に沈殿するヘドロであった。

男「どこで間違ったんだろうなぁ…」

ヘドロのような男は人目もはばからず呟き、頭をかき上げる。

ぎょっとした乗客のいくつかは目をこちらに向けるが、彼はもう深く目を閉じた後だった。

周りのことはつゆ知らず、男は揺れる振動に心地よくなり眠りに入っていく。

男を乗せた電車は数分走ると次の停車駅に到着した。

そして電車は仕事終わりのサラリーマンをがぷがぷと飲み込んでいく。

しかし乗り込んできたのはなぜか






大勢の


ワドルディ達



であった……







ざっと100はくだらない数のワドルディ達は空いた座席をわにゃわにゃと埋めていく。

すると必然的にワドルディたちが擦れ合い、車内は強烈なアンモニアの匂いが充満していった。


「ウゴっ!ゲェエエっっ!!!」


夢の中にいた男はたまらず吐瀉物を散乱させながら飛び起きる。

そしてパニックを起こしてしまったのか、足元にいた数匹のワドルディをあわてて蹴り飛ばしてしまい、

車内はバウンドするワドルティが高速で弾けまくる死の棺へと変貌させてしまった。

男「ギャー!!ごめんなさいいい!!!」

男は慌てて立ち上がって謝罪するが時すでに遅しである。

トウモコロシが熱されてポップコーンになるように、激しい勢いでワドルディ達は弾ける。

そしてワドルディ同士がぶつかり合い新たな熱エネルギーは車両の温度を急速に上げていった。さながら高速で走る暴走オーブンレンジである。

また、車窓には、車内一面に広がる肉片や内臓が映し出されており、それはまさに地獄絵図そのものであった。

不運なことに、それを見てしまった男は一日中溜め込んでいた排泄物をたまらず外へ放流してしまった。
新しい地獄絵図の誕生、高温炸裂下痢便電車のイザナミとイザナギである。

「オゲーッ!!!(ブリリリリッリリリリリリリュリュリュリリリリチチチッッッッッッ!!)」

男が精神的ショックと激臭に苛まれ、嘔吐と排便をしながら振り返ると先程まで隣に座っていた乗客達が沈黙していることに気づいた。
それも1人だけではない。全員である。

男はハッとして車内を見渡すと、他の車両でも同じような光景が広がっていた。

すると

「王が来る…」

乗客の一人が怯えた様子でそう呟いた。

男「王?」

乗客「ああ……俺たちの国を支配している王様だ……。この国の王は部下の言うことを聞かずに、自分の思い通りにならないものは何でも壊してしまうんだ……。」

男「そんな王が……来るだと?なぜ今なんだ!?」

乗客「知らんよ……。俺だってこんなの初めて見るんだからな!」

乗客たちは怯えながらも、自分たちを逃さないように取り囲むワドルディ達に恐怖を感じていた。
彼らは皆、王に殺されたくはなかったのだ。


すると突然、ドアが開いて大きな声が響いた。

「○○○△✕✕○○◎▲□○✕○△○○□○!!!□○△○○□△○!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!✕☒✕□△○✕!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


そこには
赤い半纏を羽織った大柄なペンギンのようなものが立っていたーーーー

男は知る由もないのだがーーーー
そう、この日本国の実質的支配者である


デデデ大王、その御人である。


御姿をみた乗客とワドルディ達は一斉にひれ伏した。

「ああっ!大王様!どうかお許しくださいぃいい!!」


「大王様!どうか命だけは!!」

沈黙を保っていた、ワドルディ達は悲鳴に近い絶叫をした。


男「(日本語を!?つまりワドルディ達はは日本国民…………?)」

大王は静かに呟いた。


「OK」


その瞬間列車は爆発し、四次元空間に転送された。

そして、男と乗客達は永い時間四次元空間を漂流することが決定した…


幾星霜、雨だれ石を穿つような時間が過ぎ、
乗客達が意志を持たぬモノと成りかける寸前で、

列車はある王国に流れ着いた。

そう、皆様もご存知である

プププランド


である。





エンドナンバー4 星の片隅で