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男同士サランラップ越しにキスをした

大人になってから、ああ…そういえばあの人って…変質者だったのか…と思い当たった幼い頃の記憶がある。


小学1年生の頃、近所の公園で友達と二人で遊んでいた時、大学生くらいの年齢に見える男から声を掛けられた。「ねぇ君たちキスしたことある?」僕たちはケラケラと笑いながら「ないよ!」と答えた。すると「じゃあ今二人でキスしてみてよ」と言われ、僕たちは「えぇ〜!嫌だよ!僕たち二人とも男だよ!」と笑った。

それから彼は頻繁に公園にやってくるようになり、僕たちはすぐに彼に懐いた。お菓子をくれたり、こっそり鍵を外して忍び込める高層ビルの屋上を教えてくれたりした。小学生の僕たちは、大人といえば親と先生くらいしか知らない。急に優しいお兄ちゃんができたみたいですごく嬉しかった。

その人の家にも遊びに行った。あまりよく覚えていないが、ゲームをしたり、漫画を読んだりしながら、僕は男の膝の上に座っていた記憶がある。

服を脱がされたり、体を触られたりはしなかったと思うが、彼はいつも僕と友達がキスするのを見たがった。「サランラップ越しならどう?」と提案され、僕と友達はふざけながら実際にサランラップを挟んでキスをして見せたこともあった。


半月くらい毎日ように遊んでいたお兄さんは、ある日突然僕たちの前に姿を見せなくなり、僕と友達も三日間くらい今日はお兄ちゃん来ないね〜なんて話をしたが、その後は特に思い出すこともなかった。

大学生くらいの時に本当になんの脈略もなく記憶が蘇り、あの人は変質者だったのだと気づいた。特別被害を受けたわけでもなく、やらされたことは友達とサランラップ越しのキスをしたことくらいだけど、大人になった今、あの人が胸の中に抱いていたもの、突然に僕らの前から姿を消した理由をあれこれ想像してしまう。

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