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三浦春馬さんを語ろう。 静と動の24歳

単発ドラマ『殺人偏差値70』の撮影中に迎えた24歳の誕生日。城田優さんとの狂気がかった演技が印象的な、ちょっと不思議な西村京太郎さんのサスペンス。

民放地上波で初めて4Kカメラで撮影された他、プロジェクションマッピングによる演出もテレビドラマ初だそう。春馬くんの作品には何かと「業界初」が多くありました。それだけ期待されていたのでしょうね。

昨年は2本の連ドラが大きな話題になりましたが、24歳でのテレビは7月に放映されたこの単発ドラマのみ。前半の大部分を『進撃の巨人』の撮影に費やされ、11月にキャスト発表があると公開までまだ半年以上あるにも関わらず大きな話題になりました。

スタントマンなしのワイヤーアクション

撮影期間は5月11日から8月17日、その1か月前くらいからリハーサル。『僕のいた時間』ですっかり痩せ筋肉も落ちていたので、撮影終了直後から身体を鍛え始めるところからスタート。どんなオーダーや変則的な動きにも対応できるように、徹底的に体幹を鍛えたそうです。

撮影にスタントマンを使わなかったことも話題になりました。スタント関係のスタッフさんが後に「アクションサミット」でこの時の春馬くんについて語ってくださっています。

今の日本のスタントマンは分かっておいたほうがいいと思うのは、「みんなは彼(三浦)に勝ってるのか?」ということですね。
   <中略>
彼がやる動きの自由度は、誰にも真似できなくてスゴイですよ。ワイヤーが切れることなんてまず考えないし、落っこちて、マットがあろうがなかろうが関係ない。自分自身の動きをやるだけだから、ほぼ一発OK。しかも、ノーテストでやっています。「スタンドインである程度引き手の練習だけはしたんだけど。三浦くん、どうしよう? 一発でカメラ回してみようか?」と言って、実際にやったら誰も勝てなかった。 (SPICE 記事より)

アクションの撮影は通常、俳優さんが怪我したら大変なので、顔が映る部分だけ役者さんが同じ体勢をして撮影し、体全体の動きはスタントマンで撮影するのだけど、リアルじゃない動きで演技をするのが納得できなくて、全部自分でやっちゃった様子。

30年前は俳優でバク宙ができる人はJACにしかいなかった、とインタビュー中にありますが、確かに、ハリウッドでもトム・クルーズがスタントなしでミッション・イン・ポッシブルを撮影していると話題になりました。

佐藤健さんの話題も出てますが、またもや、良き仲間、良きライバル、ですね。
もっと評価されても良い部分だと思います。

想像の中での演技

何かのインタビューの中で、「草原で15mの巨人がこの方向から近づいてきています、みたいな指示で、その景色を想像しながら演技していた。巨人が実際にないから3人の目線を合わせるのも大変だった」という話をしていたことがありました。

──スタジオでの撮影はどうでしたか?
僕たちはホントに見えない場所で見えないものと毎日戦ってました。ほぼグリーンバックの壁とじゅうたんのなかで撮影していたので。だから、完成した映画を観たとき、こんな映像になってるんだって驚きました。お客さんとは全然違う種類の感動が味わえました。
──あれがこうなってる的な?
“あれ”っていうものがそもそもないんです(笑)。
──なるほど(笑)。
ちょっとでも“ある”ものの話をすると、アルミンを助けるために巨人に食べられるシーンでは、歯の部分のない巨大な入れ歯の中でアルミンと一緒にヨダレまみれというかローションまみれになって「アルミン!」「エレン!」とやっていたんです。                    (映画ナタリーさん記事より)

すごい撮影ですね。

「今の演技良かったよ」と言われても、実際の映像(完成型)が見えないから不安になった、と。

相手との距離感や間あいや空気感といったものがお芝居で大事になる部分だと思うのですが、それがなくほとんど一人芝居で、間合いや相手との関係性は編集任せ、というのは役者さんにとってどうなんだろう?
膨大なCG編集が必要なため、公開は1年後でした。

ギャラクシー賞とアカデミー賞 

2013年度の『ラストシンデレラ』と『僕のいた時間』の演技が評価され、選ばれた「ギャラクシー賞 個人賞」の表彰式が6月に。
年が明けた2月に『永遠の0』でアカデミー賞 優秀助演男優賞 の授賞式があり、昨年の3作品が評価を受けた年でした。

ギャラクシー賞は当日参加することを前提の選出だったそうですが、進撃の巨人の撮影の為欠席し、フジテレビの2作のプロデューサーさんが代理出席、受賞されました。

出席が前提だったのに欠席するのは確かに良くないとは思いますが、この時のネット書き込みがきつかったのを覚えています。
視聴者が書くことでしょうか?匿名の記者によるニュース記事や、コメントの書き込めるサイトのあり方について考えた時期でした。

映画  『真夜中の五分前』

昨年、『ラストシンデレラ』と『僕のいた時間』の間、2013年11月頃に撮影された映画なので、スクリーン内の良(リョウ)を演じる春馬くんは23歳。ヒロト→拓人と見ると別人のようですが、ヒロト→リョウ→拓人、と見ると納得です。

当初は日本で撮影する予定だったものの、資金が集まらず中国のコンペに出して上海の会社の出資が決まり、中国上海で撮影することになったそうで、春馬くん以外は全員中国人の俳優さん。

古時計のゆったりとしたリズムの中で時間と光がゆらめいているような、とても心地よい作品。1人2役のリウ・シーシーさんも美しく、前半の双子の演じ分けから、後半は本当に2人が混ざったような演技も素晴らしく、見る人に解釈を委ねるような、映画らしい曖昧さがとても好きです。

『ラストシンデレラ』の後、中国語を勉強し、時計修理職人に実際に学びに行き、準備をしたという春馬くん。春馬くんの中国語は(英語もですが)滑らかで、チェロの音色みたいで心地よい。

中国語の先生によると、集中力が素晴らしく、当初セリフはカタコトの中国語で日本語と混ざる予定だったのが、冒頭のプールで出会った時のシーンの発音が完璧すぎて、ほとんどの台詞を中国語に変更したそう。

「まずは中国語でセリフを言葉として覚えて、さらにそこに気持ちを乗せてセリフにする、という通常の倍以上の手間がかかる、骨の折れる作業だった」そうです。

「ドライバーをずっと握ってタコまでリアルに作ったのに映らなかった」、と残念がっていましたが、タコは映らずとも時計を修理する手元だけで十分綺麗。猫背の姿勢がとてもリアルです。

何度も出てくるバイクに乗っているシーンで、猫背だったり、姿勢が良くなっていたり、その加減が絶妙。セリフのないシーンで表情と姿勢、手のかすかな動きでリョウの心境や、彼女との関係性を語っているように感じました。

行定監督は『東京公園』を見て春馬くんに依頼したそうですが、とても納得。『東京公園』が昼の光、『真夜中の五分前』が夜の光、というイメージがあります。

白い肌が光を吸収して溶け込んで見えたり、時には乱反射して浮かび上がって見える、不思議な肌色。夜のわずかなオレンジの光や、ガラス越しの優しい朝陽に映えるお顔と瞳の輝きがとても綺麗。

双子それぞれとの関わり方と距離感がとても優しく、寄り添うような、包み込むような空気感は、リョウというより春馬くん自身の資質のように思います。

自分も傷があってどこか心を閉ざしているようなところがあるのに、相手のことは全て受け止めてしまう、大きい風には見せないけど懐は深いリョウ。
逆に、家柄も仕事も恵まれていて、器の大きな大人だったティエルンが、目先のことに囚われ、疑い、相手も自分も傷つけて行く。

1人2役ということは、当然2人が揃っているシーンの撮影は、実際にはどちらかは居なく、同じシーンを複数回撮影しているということ。そんなことも考えると、内容も映像もとても興味深く、何度も見返したくなる映画です。

「がちゃがちゃした(イメージの)中国で、この静謐さと静寂が作れたというのは、三浦春馬という俳優がそこにぶれないでいるということだったのではと思う」(行定監督)

中国の撮影は、許可をとっているのに突然撮影NGになったり、と、想定外のことがあって大変だったそうですが、じっと待って自分の本番の時に集中していた、と。春馬くんは偉ぶらないことで知られていますが、スタッフも俳優も「同じ作品を作る仲間」と思っているのではないかと思います。

第19回釜山国際映画祭でワールドプレミア上映が決まり、監督と一緒に2日にオープニングレッドカーペットを歩き、3日舞台挨拶。その後、香港、台湾などアジア各国で上映されたあと、日本で公開になったのは12月27日。

中国では興行収入も良かったようですが、日本では宣伝も少なく、上映期間もあまり長くなかった記憶があります。気づいたら終わっていたような。

はっきりスッキリ結末を知りたい方には、最後もやっとする感じがあり、好き嫌いが分かれるかもしれません。私は一番回数見ている作品です。

いつだったか記憶が定かではありませんが「好きなキャラクター(作品?)アンケート」みたいな時に春馬くんが「あれ?真夜中の五分前は?」と言っていたことがあるので、多分、春馬くんもこの映画、結構お気に入りだったのではないかと思います。

良について言えば、彼自身、どちらの女性を愛していたのか…そして自分の中の愛とは何なのか? という問題に焦点が当たっている作品なんじゃないかと感じました。でも現実的な問題が後半に出てくる。後半、いろいろなことが起きて、自分の愛と現実の狭間で揺れる感情が面白い。観ている方にも、自分の愛とは何なのか、ということを考えていただけたら嬉しいですね。上海の街並や、登場人物たちの持つ空気にゆったり包まれながら、自分の愛は打算もあるのか、本当の愛なのか、ということを含めて、愛するとは…ということを考えていただけたら、嬉しいです。」


CM「東京シティ競馬」

2014年度の大井競馬場のイメージキャラクターに選ばれた春馬くん。
昨年の『ラストシンデレラ』のキャンペーンで訪れたご縁かと思いますが、午年の年男、という意味もあったようで。

5月28日から12月まで5パターンくらい、大きなレースがある度に「夜遊びしようぜ」とか、「帝王は一人でいい」と言ったキメキメセリフのスタイリッシュなCMが流れました。

最初に気づいたのはTVCMではなく駅のポスターかデジタル看板だったと思います。あまりのオーラにギョッとして見て「もしや春馬くん?」と二度見したのでした。

「馬の化身となった三浦春馬」という設定で、馬のように走ったり、馬とアップで対峙するのだけど、まあ、なんとかっこよく、美しいこと。普段のニコニコから、目力入れるだけで、一瞬でこんなに表情が変わるのもすごいです。

顔を褒められるのはあまり好きではないと思うけれど、良すぎるのですよ。
もちろん、演技も性格も認めますが、そのお顔はもう神が作った平成の傑作だと思うのです。

そういえば、馬もとても優しくて、障害者とか子供など弱い人に本能的に寄り添ってくれる。身体能力抜群だけど、ちょっとビビりで急な物音に弱い。
ちょっと似てますね。

静と動

24歳の最後は、3月29日に地球ゴージャスの20周年ガラコンサート。昼、夜2公演で『海盗セブン』と『星の大地に降る涙』の曲を披露した模様。

春馬くん自身は1年通してかなり動いているし、『進撃の巨人』の撮影のため激しく「動」の年だったと思いますが、撮影期間が長くテレビ出演も少なかったので、一般人の私から見ると23歳と25歳の華やかな「動」に対し、24歳は「静」の印象があります。

春馬くん自身、舞台やアクションシーンで見せる「動」と、映像作品で魅せる繊細な表情の「静」、両方の魅力があると思うのですが『真夜中の五分前』は「静」の代表作ではないかと思います。

静の年に発表された、静の作品。勝手にそんなイメージ。

行定監督が中国のコンペに出してまで撮った作品。2020年10月に熊本復興映画祭で上映され、監督が舞台挨拶されるなど、最近になって再び注目されてきたように思います。作り手の思い入れのある作品は長く残るものですね。








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この内容は以前「三浦春馬さんを語ろう。13年間の思い出とこれから」を書いた際、大幅に削った私の記憶と思い出です。個人的な見解になりますこと、ご了承ください。

17歳から年齢別に綴っています。
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一部分の抜粋は誤解を招く表現もございます。
引用、転載の際は事前にご連絡いただけましたら幸いです。

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