Bass VIの話(改造と調整)


Bass VI。この記事に向こうではできない多少の脚注と訂正を加えていこうと思う。
https://www.soundhouse.co.jp/contents/column/index?post=1688

現在入手可能なBass VIの系譜は幾つかある。まず記事の通りWarmoth Bass6、Squier Bass VI、Schecter Hellcat VI。Duane Eddy 6-string Bassに再入荷の見通しはない。
追加するのは以下。
Schecter Hellraiser C VI
Schecter Robert Smith Signature Ultracure VI
Harley Benton GuitarBass
Baguley Guitars Bass VI Style
Eastwood Guitars Sidejack Bass VI
La Bella Olinto VI
Pitbull Guitars(30inchカスタム)
これ以外にもFenderのCSやPawn Shop、その他ビザールメーカーなどに存在はするが新品入手性に難があり提示はしない。

ちなみにWarmoth Bass6とBaguley Guitarsの30.00"ネックには互換性があると考えられる。ヒールシェイプがFenderストラト/ジャズマス系となり寸法上は同一。

問題点を幾つか

第一に弦落ちがジャズマス/ジャガーの比ではない。下手にスパイラルサドルを採用すると24ゲージの太弦がネジ山を舐めさせ弦が入る場所がなくなり、最終的に弦は芋ネジの入る穴に落ち着くことになる。溝切り付きスパイラルの場合溝を拡張して処理。
これの解消にはムスタング用サドルを導入するか(落ちはするが、戻すのが楽)マスタリーブリッジを使用するか(高い)Excenter Bushingsを使用する(弦高が馬鹿みたいに上がる)こと。それぞれ問題点があるが長期的に使うつもりならマスタリー一択。
2022年8月追記:オフセットギター用ToMブリッジが幾つかのメーカーから販売されているのを確認。Excenter Bushingsより安いかもしれない。

第二。基本的にペグの選択肢がない。全くない。公式の通りのクルーソンを導入するとアーミングを諦めることになる。アームがプラプラする飾りになる。
かといってロックペグとなると混載必須。Sperzelのベース用Trim-Lokは24ゲージには適切ではない。個体にもよるがロックできずに心線が露出し弾け飛ぶこともあるため注意。ここはギター用Trim-Lokの混載で諦めること。弦のワウンドを剥いてもいいが結構な割合でそのままほつれる。冒頭の記事でも言っている通りBass VIを作っておきながら弦を終売ディスコンしたFenderが主犯なので「重機でBass VI粉砕すんぞ」などの脅迫・怪文書はそっちに出すこと。

第三、楽器それぞれのパーツ互換性。
スライドスイッチプレートに4穴を採用しているのはSquierとFenderのものしかない。3穴タイプなら通常のジャガー用やカートコバーンスタイルと互換性がある。面倒だが自作も視野に入れた方がいい。Aliexpressはあまりにも怪しい。
ちなみに'60s FenderやCustom ShopやJapan製のBass VIにはジャガー用ミュートパッドが付属するが、これもまた終売しているので旋盤を扱うことになる。是非ともFenderには掛けた梯子を地盤ごと吹き飛ばすような真似はやめてほしいものである。
2023年1月追記:ミュートパッド入手可

第四。主にSquier Bass VIの問題点。
これはフォロワー談だが現行のサポートロッドの入っていないSquire Bass VIにLa Bellaのステンレスセットを使用するとネックが容赦なく曲がる。
サポートスチールロッドを持つWarmoth Bass6には致命的な順反りは起こらなかったのでメーカー各々の問題ではあるが、入手しやすいBass VI系では曲がりやすいとだけ言っておく。

どれもギター用パーツをベース構造に流用したレオ・フェンダー氏のやらかしでしかないので(いないと思うが)Bass VIオリジナル信奉者以外は魔改造の徒となることを勧める。あるいは楽器か自分かどっちが先に死ぬかのチキンレースを始める羽目になる。

弦の選考

現状Bass VI用セットとして現状最安となるのはD'AddarioのEXL156 Nickel Wound Fender Bass VI 24-84(曲がらない)、次点で価格が跳ね上がりLa Bella 767-6N Bass VI Nickel Rounds 26-95(曲がりづらいが、ねじれに注意)。ステンの場合La Bella 767-6F Bass VI Stainless Steel Flat Wound(よく曲がる)。
バラ弦でセットを組む際には当然ながらベース用を使用し、主要メーカーの近傍値は以下の通り。公称値である24-34-44-56-74-84に対し+2までのゲージを上から2本掲示する。

D'Addario XLB
E 20P 25
B 32 35
G 42 45
D 50 55
A 70 75
E 80 85

Ernie Ball Nickel Round Wound Bass
E 26
B 26 32
G 40 45
D 50 55
A 70 75
E 80 85


カスタム

Bigsbyに関して。フロントローラーを通す際に95ゲージはボディに傷がつく可能性あり、かと言ってローラーを抜くとあまりにも見た目が悪いので「Vibramate V5Cを挟む」などの手段で持ち上げるという解決法が飛び出す。
一応テンションも弱まりブリッジに干渉する部分も減るので選択肢として悪くはない……?Masteryに変更すれば干渉自体は問題なし。

Callahamのフロントローラーは採用不可。同じくUpgraded Main String Shaft(と、B5PL)も弦の太さゆえ使用できない。ニッパーでしっかり丸めてピンに通すこと。Vibramate Spoilerは調査中だが、強度的な許容範囲を超えて曲がる可能性が高い。

30inch特有の低音のバリつきはローカットより逆相のピックアップで切るのがお勧め。またテンションの低さと弦の太さからくる振幅の大きさは音量の激しいトレモロをもたらすのでフロントとミッドにはバータイプのピックアップ(Lace Alumaシリーズ、EMGの大半、Bill LawrenceのLシリーズなど)を採用して抑える。リアはギリギリ問題なし。

フェイズスイッチを付ければハイパススイッチは不要となるが、Toneは音域の幅広さを考えると選定しづらい。とはいえ基本は223、低音側を主力に据えるプレイスタイルなら473で500kΩを使用すればしっかりベースらしい音も出なくはない。

(おまけ)バリトン化

バリトン化する際にBigsbyを使用していると1弦あたりが足りない可能性が高くなる。トレモロを封印することにはなるが、フロントローラーに巻き付けておく(ボールエンドに弦を通して結ぶ)ことで張ることは可能。
ベース用Trim Lokはプレーン弦と相性が悪く、滑って跳ね飛ぶ可能性があるため注意。

音域は5度下げBtoBがおすすめ。EtoEは弦が切れる。

フルオリジナル設計

あくまで「私が30inch6弦EtoEのトレモロ搭載ベースを作るとしたら」。
PUはタップ可のHHかHSH、リアをハムにしておくことで安全牌を切ることができる。ポールピースがブレードタイプのものを使用すること。

配線はアクティブEQ、又はパッシブでPUごとにトーンが欲しい。一般にHSHストラトやJHジャズべでイメージするよりBass VIのHSHのキャラクター差は大きく、全てまとめてトーンを調整というのでは少々無理がある。

トレモロは構造体とスプリングが分離されているもの(つまり、板バネは不可)を使用する。Bass VI用トレモロというものが存在しない以上調整して使う事になるが、スプリングだけを単体で強化する必要があるためフローティングトレモロなどが適している。
なお、Bigsbyは片側だけにスプリングが付いているため、シャフトが脆弱な中華ブランドだと曲がって折れる可能性はそれなりにある。不安なら使用しないこと。

ボディシェイプは大きくする必要はない。

ヘッドは3x3が望ましい。6連では弦の長さが足りなくなる場合があること、また、ギターサイズのヘッドのベースペグを詰め込むことはできないため3x3でスペースを取るのが楽といえる。

必ずしもマルチスケールにする必要はないが、30inchを上限として1弦側を少々短く取っておくことでリードプレイに改善がみられる可能性がある。

以上。

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