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語感と五感

「香ばしい」という言葉を聞くと
どんなイメージでしょうか。

香ばしいという言葉は、辞書を調べると
次の3つの意味を持っていることがわかります。

1 よい香りがする。多く、食物を煎 (い) ったり焼いたりしたときの、好ましい香りにいう。「―・いほうじ茶の香り」

2 見た目や印象などがすばらしい。りっぱである。

「薄色の衣のいみじう―・しきをとらせたりければ」〈宇治拾遺・一二〉

3 望ましく思う。心が引かれる。

食べ物の場合だと主に1の意味ですよね。
嗅覚に関する表現だということがわかります。


だけど、食レポとか、自分たちがふだん
食べ物を食べたりするときに使う「香ばしい」って味覚と触覚にも及ぶと思うんですよね。


例えばこんな表現しませんか?

・おこげの香ばしい味
・香ばしナッツ味

などなど。
味覚を表す表現でも全く違和感はありません。


食べ物について香ばしいと聞くと、
触覚まで刺激されませんか?

・煎ったごまの香ばしさ
・トーストのサクサクとした香ばしさ

とても無機質な表現をすると食べ物が焼かれることで、水分が抜けて、タンパク質がかたまることで質量が軽くなるイメージや、程よい硬さが加わる感覚がプラスされるなと思うのです。


五感はそれぞれが独立して機能しているように
ついつい感じてしまいますが、

こういう言葉のニュアンスを掘り下げて考えてみると、意外と複数の感覚器官を働かせて、感じ取っているものがあるんだなと気づかされます。


そして表現のニュアンスは、それぞれの言語でかなり、含みが違ってくるんだなと思います。

香ばしい〇〇を英語で表現すると
〇〇 with nice smell
という表現になります。

たしかに嗅覚に関する表現わかるのですが、
「香ばしい」が持つカリッとした乾いた触覚や
ほどよく焼けた特有のニオイの「感じ」がなくなってしまいます。

そう思うと、日本語の「香ばしい」という言葉は、複数の感覚器官にまたがって、特有のニュアンスを含むとても豊かな表現だなと思わされるのでした。

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