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初めての映画同時視聴配信で7時間19分の『サタンタンゴ』を選んでみた話

こんばんは、チェ・ブンブンです。

三連休いかがお過ごしでしょうか?

私は、Amazon Prime Videoに『サタンタンゴ』が追加されたので同時視聴配信をやってみた。今回は、そのレポートを書いていく。


1.『サタンタンゴ』とは?

『サタンタンゴ』とは、ハンガリーの鬼才タル・ベーラが1994年に発表した7時間以上におよぶ白黒映画。「死ぬまでに観たい映画1001本」に掲載されている作品でありながら、日本では長いこと鑑賞難易度が高い作品でした。サブスク時代になり、東欧映画配信サイトEastern European Moviesにて観ることができるようになったとはいえ、英語力やある程度の背景知識がないと完走が厳しいであった。

そんな中、2019年の秋にビターズ・エンドが配給し話題となった。公開されると、もの珍しさから連日シアター・イメージフォーラムが満席になるほどの盛況となった。この影響は意外にも大きく、YouTuberの間でも挑戦したレポート動画があがり、いつしか「長くてヤバい映画」の代名詞として有名となったのである。

実際に、自分が個人勢VTuberユニット・ぽこピーの企画「ぽんぽこ24」にてCMが採用された際に、「ご無沙汰ンタンゴ」というお馴染みの挨拶にツッコみを入れてくれるコメントが多く、知名度の高さを感じ取った。

2.初めての映画同時視聴

映画系VTuberといえば、同時視聴配信をしているイメージがある。常世モコさんは、毎週金曜ロードショーの同時視聴を行い続け、映画系VTuberの中でもトップクラスのチャンネル登録数を誇るようになった。サメ映画やハリウッド大作を中心に、毎日のように誰かが映画の同時視聴を行なっているほどポピュラーな配信メニューとなっている。また、映画系VTuber以外でもにじさんじやホロライブ所属のVTuberが行うこともある。ここ最近はトラブル防止のためかメン限で行う傾向が強くなってはいるが、それでも頻繁に配信枠を見かける。

ただ、どちらかといえばシネフィルよりな自分からすると「映画はひとりで観るものでしょう」といった先入観が強く、これらの配信を観たりやったりする気にはなれない日々が続いていた。

そんな中、Amazon Prime Videoにて『サタンタンゴ』が配信されるニュースが舞い込んだ。これは流石に「自分がやらねば!」と思った。いくつか理由がある。自分がVTuberとしてマイナーな映画の情報を発信している理由として、映画界隈に中間層がいないことが挙げられる。大衆娯楽映画とアート映画の間に断絶があるような気がしていて、映画ライターや映画評論家がその間を果たして埋められているのか?といった疑問があった。映画には興味があるけれど、シネフィル界隈が怖くて敬遠してしまっている人に歩み寄るようなアプローチ。専門的な知識を持ちつつも、ライトに面白さを伝えていく活動をしなければいけないとここ数年、ずっと思っていたのだ。

確かに、『サタンタンゴ』は有名になったが「退屈な罰ゲーム映画」として消費されてしまっているところがあった。個人的に『サタンタンゴ』は純粋なコメディ映画であり、カッコいい映画だと思っている。退屈だとネタにするにはあまりにも勿体無い作品なのだ。なので、映画ライターとして、映画系VTuberとして、同時視聴文化に歩み寄りながら配信しなければならないと使命感に駆られたのだ。

なによりも、毎回挨拶で「ご無沙汰ンタンゴ」と言っている私が同時視聴配信をしないのは、この造語を作ってしまった責任を取らないことになると思った。ということで挑戦してみた。

3.配信画面を作る

ホロライブEN所属ワトソン・アメリアさんの『フライングハイ』同時視聴画面
個人勢・映灯十色さんの『ウィジャ・シャーク2』配信画面

さて、同時視聴となるとどういった画面を作らないといけないのだろうか?実際に企業勢と個人勢の同時視聴配信をサンプリングしてみた。基本的に下記を守ればいいらしい。

  • タイマー(今何分地点かを提示するために必要)

  • コメント欄(みんなと一緒に盛り上がるため)

  • BGMはなし(映画の邪魔になってしまいますからね)

ただ、個人的に『サタンタンゴ』同時視聴は他の映画と比べてマラソン感が強い。達成感が味わえるような画面構成にした方がいいと考えた。そこで映画から一旦離れて、ゲーム実況、特にRTA配信っぽい画面作りに挑戦してみた。そうすると一緒に頑張っている感が出て、楽しいと思ったからだ。

左にコメント欄、中央をホワイトボード領域、下にあらすじやタイマーを設置した

ということで、今回はRTA in Japanの動画を参考に画面を作ってみた。実際に他の同時視聴と異なり、オーディオコメンタリーとして映画中に映画論やハンガリー文化に関する説明をすることを想定しており、瞬時に検索画面を表示できるようにしたかったからだ。そして、実際に大きなイベントで使われているような画面構図を正確に真似るように心がけることで、プロ感が表現でき、興味を持っていただだける間口が広がる。ここは2時間ぐらいかけてじっくり作り込んだ。

4.コメント欄を工夫する

昨年末からYouTube配信をやりはじめて半年以上が経った。当初、コメント欄は軽くGoogle検索して見つけた「Chat v2.0 Style Generator 日本語版」を使う方法を採用していた。しかし、これはハリボテ感があるので正直、あまり好きではなかった。それに、最近は「ゆっくりムービーメーカー4」で凝ったずんだもん解説動画を作っていることもあり、リッチな画作りに興味を持ち始めていた。元々、システムエンジニアだったこともあり、PCに疎いであろう個人勢が軽快に豪華な画面で配信しているのをみると、

「自分でもできるはず」

「やってみたい」

と思うのである。

個人的に、ずんだもんファンとして、しぐれういさんの配信のようにコメントにずんだもんの音声を乗っけてみたいものがあった。実際に調べてみると、CastCraft Screenというものを使うことで実装できることが分かった。

いくつかの公式ドキュメントを読みながら2時間かけて実装した。意外と、UIや仕様にクセがあり、苦戦しつつも実装した。その後、動作検証を行なった。以前、コラボ配信の際に、OBSの音管理が適切に行えておらず、デスクトップの音をマイクが拾ってしまい、ハウリングを起こす放送事故をやらかした。その反省から、コメントを読み上げるずんだもんの音のみを配信に反映させるようにOBSのソースから「アプリケーション音声キャプチャ」を選択。対象アプリの「棒読みちゃん」を指定した。

5.当日の運用

当日は、開始の1時間前にリハーサルを行い、音量やコメント欄設定が適切に反映されるかを確認し、いつも通り配信した。当チャンネルでは初の同時視聴企画なので、最初にルールを説明。リスナーへの配慮として、事前に当配信と映画の音声を調整する時間を設けた。

おかげさまで、1回の配信でのべ100回を超える再生回数。常時10人近い方に並走していただいた。最初こそコメントは少なかったのですが、途中で、自分があえてマイクを使わず、コメント欄に情報を流し、ずんだもんに代弁させることで、コメントしやすい環境を作り出すことに成功した。特に、事前にいただいた有識者からの解説をずんだもんに語らせることで、第三者による解説感を出すことができた。

7.実際にやってみて

今回、同時視聴配信を本気でやってみて、新しい活路を見出すことができた。なにより、リスナーからのコメントをずんだもんが語ってくれるシステムが実装できたことにより、作業配信がしやすくなった。私はよく、ブログ執筆を行うのだが、配信画面を見ていなくても、ヘッドホンからリスナーのコメントが流れてくるので、それに応えながら執筆するみたいな運用が可能なのである。これは大きい発見であった。

また、同時視聴配信で扱いたい映画自体は多くないのだが、『サタンタンゴ』のように鬼門ともいえる映画を皆で走っていくような配信は需要ありそうだと感じた。実際にオーディオコメンタリー配信で映画の理解が深まったなどといったコメントをいただいた。

何事も挑戦だなと痛感させられた三連休最終日なのであった。


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