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俺とPeople In The Box

9mmと出会うことで残響系と呼ばれる音楽を知り、それを深堀している最中、整然としたジャケットに目が留まった。

漠然と興味を持ったので、内容がどういうものかは殆ど調べずにCDを借りた。
そもそも、なんとなく好きか嫌いかを判断するために調べることも、先人たちの力あってこそ。自分はそろそろ音楽通と呼んでもいいのでは?と言った謎の自負と共に、なんだかピンときたジャケットで音楽を聴くのもまた一興だと考えていた。

それに多少自分の好みにハマらなくても、知識として身に着けるのは良いと思うし。

初めて聴いたのは「Flog Queen」だった。
単純にアルバムだったからだ。まだこの頃はミニアルバムという形式の良さに気づいておらず、1枚でたくさん聞ける、単純にCDという記録媒体をちゃんと活用しているのは容量を無駄にしないことだとか、そんなくだらねえことも思っていたためだった。

Flog Queenの一曲目が流れて、俺はまた新しいものを見つけてしまった…とゾクゾク感じていた。

People In The Boxの作品全てそうかもしれないがアルバムの1曲目の幕開け感と言ったらない。

ジャケットも併せて絵本みたいな、ややストーリーテリングな風景が描かれた楽曲でこの感覚はBUMP OF CHICKENにも通ずる。
ただ、それを変拍子やテクニカルな演奏なんていうハチャメチャ感がどこか狂気性を高めていて、何だか「迷い込んだ」ような気持ちになった。

2010年前後は音楽に対する貪欲さが凄まじいこともあり、この頃は演奏に対しても深く聴くようになった。
このバンドで初めてポストロックというジャンルを発掘し始めてから、このジャンルに深く足を踏み入れる事になる。

特にベースに関してはこの辺りをコピーすることが多かった。
曲のリズムの問題なのかわからないが、所謂8ビートのロックで動いているベースラインよりも、こういったややこしいタイプの楽曲に合わせるベースラインが好きだった。
後々思う事だが俺はそもそもルート弾きのベースに惚れていた為、うねうね動くのが格好いいとかより印象付けとして残るベースラインが好きだったのだと思う。
またPeople In The Boxを通して大々的にポエトリーリーディングが入っている楽曲「ヨーロッパ」「旧市街」「JFK空港」など、歌は歌じゃなくてもいいんだ…という事にはっと気づかされたのもこの頃である。

更に今まで椎名林檎などで「気づき」あげられた、アルバムを一つの作品として見る目を養っていたこともあり「Ghost Apple」「Family Record」は特によく聞いた。

少し病的で死に隣したような世界観、そんな様々な空間が切り取られたような楽曲は俺の心を刺激してくれていた。

そんなこんなで色濃く影響や刺激を受けた俺はまた友人たちに布教していき、その結果、後の自分の活動に大きく影響した。

友人にハルという男がいる。年は3つ下で、東京の学生だった。
彼はなんというか、出会った時の印象は、田舎の垢抜けない俺と違って、”陽”の人間…というか情報や環境のスピードの差を大きく感じた。
何で慕ってくれていたのかは当時の気持ちは全く知らないが、とにかく彼はBUMP OF CHICKENやRADWIMPS、GReeeeNなどポピュラーなロック、ポップスを敬愛していた。
そういうこともあり、布教男の俺はBUMPのイメージからPeople in the Boxをオススメした。

おそらく似たような衝撃は受けたのだろうけど、音楽貪欲期の俺が最初そうであったように、最初に衝撃を与える音楽というのは後に何かしらの影響を育ませるようで、何年かした後彼はバンドを組んでいた。

その間もいろんな音楽の話や、それ以外の雑多な話を交わしたと思うが、その彼がオリジナルでやっていた音楽はまさにポストロックで影響が自分の中で変換されて外に出ていた。元々絵を描くことやアート系に強い印象はあったのだけど、それを聴いた時に自分以上の才能みたいなものを感じていた。
(これワンチャン本人に読まれたらめちゃくちゃ恥ずかしいな…)

そしてまた数年経つ頃には俺は彼とバンドをやることになった。何というかそれまで一緒にやる選択があまりなかったのは、俺によって輝かせることが出来ないと思った部分も感じていたからだ。
これは俺の第二の青春であると勝手に思っているが、そんなバンド活動はかなりのハイペースで、約2年間、最後は燃え尽きるように終わったのだけど。

いつだったか、冬の江ノ島で「Wall,Window」のおいでよを海沿いで二人で熱唱した。
お互い馬鹿みたいに笑っていた。

俺はこの景色と一緒に、People in the Boxに栞を挟んで閉じたような気がする。


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