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俺と9mm Parabellum Bullet

パンを加えながら走る女子高生が、転校生のイケメンと衝突することで始まる恋のように、弾丸みたいに突き抜けていく音が、思春期少年の心をあっという間に貫いた。

単純に馴染みやすいメロディだっただけでなく、分かりやすいギターやフレーズのカッコよさと、THE BACK HORNに出会っていたお陰だろうか、それは本当にすんなり好きになった。

きっかけは勿論「Termination」だった。

当時はまだCDリリースがアルバムはこの「Termination」1枚だけで、他はe.p.とミニアルバムしか出ていなかったので、早速借りれる分だけレンタルして聴く。

この「Termination」以外もアッパーでエモーショナルな楽曲はかなり好きだった。
またこういうデスボ系シャウトをこういった楽曲に乗せるのも新鮮で、更にジャンルを跨ぐようなギターの幅広い音使いも、ボーカルのやや冴えない感じも含めて大好きになった。

この9mm Parabellum Bulletを通して、今後残響系と呼ばれる音楽との出会いはかなりの影響を与えてくれた。

9mmの人気はまだまだ田舎の高校には上陸しておらず、おおよそ聴いているのは俺みたいな陰キャだけで、バンドものはクラスメイトの中村君が代表的なようにこの地域ではメロコアがまだ色濃く根付いていた。他のヤンキーみたいなやつはレゲエとか聴いてたメーン。

俺はクラスの中では随一と言ってもいい、当時の言葉でロキノン系と呼ばれるロックを網羅していた自負があり、仲良くしていた友人たちには結構な確率で布教していた。
その頃からわかる人にしかわからないものの例えをしがちだし、一方的な押し付けに近かった(と思う)ので当時の人たちは本当に申し訳ない。

そんな中Supernovaが新曲でリリースされる。
中二臭さとか泥臭さがやや増して、少しだけ今までと雰囲気の違いを感じていると名盤「VAMPIRE」が出た。

先に名盤と言ってしまったが、このアルバムは常に「ダセえ!」と「カッコいい!」が鍔迫り合いしているのだけど、常にギリギリカッコいいが勝ってる。何だかアホみたいなこと言ってるようだけど、カッコいいんだよな…。(語彙力)

まあFaustだけはちょっと嫌いだったけど、アルバム全曲好きになるのに時間はかからなかったように思う。

気づいたら知名度も上昇して、一応学校には軽音楽部があったので、そこからの漏れ音でTHE BACK HORNの罠や9mmのDiscommunicationが聴こえてくるようになる。何だか嬉しいような寂しいような気持ちだった。

得てしてバンドが売れるのは嬉しいと思うのだが、よくあるインディーからメジャーへと行ったように、発見してきたものがポピュラーになり始めると少し寂しくなるのは独占欲か何かなんだろうか。

この気持ち、今はすでに無くなってしまったが、この頃は特に顕著に表れていたと思う。
2010年代には最早俺が語るまでもなく、知名度や人気は上昇していたし、当時関わりのあった人(音楽系じゃなくても)聴いている人がいたりしたくらい。

次の「Revolutionary」もめちゃくちゃ格好良かった。
この頃、改めて聞くとTHE BACK HORNみたいな妖しさが全体にあって互いに影響しあっていたんだなって思う。

しかし、そんな中俺は「Movement」のタイミングで一回離れてしまう。
凛として時雨と同じくらいだろうか。
兎角新しさを感じなくなってしまい、俺の銃身ははいったん錆びついた。

ただ、昔の曲は変わらず好きだったこと、特に初期作品は学生時代を共にした思い入れもある為、比較的聴いていた。

初期の作品だと「sector」「Vortex」「atmosphere」「father」がめちゃくちゃ好き。あれ結局全部好きな気がしてきた。いけない…。

その頃の前後に出来た友達が9mmが好きな人がいて、俺が初期好きだったことでなんとなく未だに追うのと同じように彼らは追いかけていた。
そんな友人らが新曲の「『ハートに火をつけて』は古参にもハマると思うから聴いて!」みたいなことを言っていたので、あれよあれよと再生を押す。
そして錆びついたそれにKURE 5-56を入れたように、一瞬でギアがからり、と軽く回ったようだった。

VAMPIREを熟聴していたころは自覚していなかったけど、俺は彼らの好きになった所以をこの曲からひしひしと感じ、俺はまさに再び火を入れられたような気持ちになったのだった。

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