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公園にて vol.14

21 公園にて20210921_19112304

公園で自転車を停めていたら、やたらしつこく話かけてくる小学生が来た。
「どっから来たの?」
「神奈川」
「神奈川ってどこ?」
「東京の下」
「東京って?」
「どうやって君に説明したら良いのか分かんないよ……」
そうぼやきながら、自転車に括り付けてあるスピードメーターを見して、3300キロも離れている所から来たんだよ、と説明をしたら、
「すげぇめっちゃ早ぇ」
と言われた。
マッハじゃないって!
あと、テントを張る所が見たいと言われ、面倒くさかったけど、渋々と張っていたら、小学生は途中で飽きてしまい、どっかに行ってしまった。


↓別の日の別の公園の話。

公園でフランス人形を持ち歩いているおじいさんに色々と話しかけられた。
話している途中も、ずっと僕はフランス人形が気になっていた。
なんでフランス人形を持っているのかを勇気を出して尋ねたら、腹話術をしているとの事。


「やってあげようか」


おじいさんが目をキラーンとさせながら聞いてきたので、
結構です、と言おうとしたのだが、「ねぇ、ねぇ、おじいさ~ん」と始めてしまった。
「なんだい、ステファニー」
甲高い声と、しゃがれた声を使い分けて勝手にしゃべりだす。
頼んでないのに……。
将来のためにしっかりと勉強をやろうとか、ちゃんと手洗いうがいをしようねとか、交通ルールをきちんと守ろうね的な、説教臭い会話をする二人。
けど僕は、おじいさんとステファニーの関係性が引っかかっており、内容が全然に頭に入ってこなかった。


ホントに血縁? その子と……おじいさん…。


角刈りで純和風な顔立ちおじいさんの膝の上に、青い目をしている宝塚みたいなクルクルパーマの幼女が座っている。
気になるって………。
さらってないよね? 大丈夫だよね? 通報とかしなくていいんだよね?
あと、あんまり練習していないらしく、
「信号が青になったら、手を挙げて渡るんじゃああ」
と、無理をしているソプラノ声で口を閉じながら、おじいさんがしゃべりだし、
「分がっだよぉぉ、おじぃさ~んん」
とはっきりと口を開けながらダミ声でステファニーが言っていた。

広い公園で二人きり。

ステファニーちゃんの頭が取れた。
彼女が会話をするたびに、おじいさんが指でつまんでいた頭をヘッドバンキングしていたからだ。
おじいさんの膝から転げ落ち、クルクルパーマの髪の毛をくしゃくしゃにしながら、公園の砂の上に落ちた。
澄んだ青い色の瞳が、僕を見ている。
何か伝えたいことでもあるのだろうか。
おじいさんは、落ちたステファニーちゃんの頭を掴み、首にグイッと押し込んだ。
「ありがとう、おじいさん!」
せき込んでいたら背中をさすってもらったぐらいの軽い感じでステファニーちゃんはおじいさんにお礼を言っている。

広い公園で二人きり。

ステファニーちゃんのソプラノ声を出すのには喉に負担がかかるらしく、おじいさんはむせっ返してしまった。
でも、ステファニーちゃんはおじいさんの背中をさすれない。

広い公園で二人きり。


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