見出し画像

アステラス製薬の株はヤミテラスなのか

アステラス製薬(以下ア)の株価が喜ばしいものではないため、現状や今後について考える会の会場がこちらになります。おひとり様ですね。奥の席どうぞ。



①競合との比較

まずPERです。
 武田薬品 48.3倍 
 第一三共 64.2倍
 中外製薬 25.3倍
 エーザイ 63.3倍
 ア    16.6倍

医薬品セクターの平均が23.0倍なので割安判断になります。というか第一三共やエーザイが高すぎワロタ状態なのですが、高いPERというのは将来的なEPSの増加を期待されてるってことです。

次に利回りです。
 武田薬品 4.32 %
 第一三共 0.83 %
 中外製薬 1.76 %
 エーザイ 1.98 %
 ア    3.72 %

これは配当政策によるところが大きいのであんまり比較にならないです。10期連続増配中なのは高評価です。

ROEはどうでしょうか。
 武田薬品 5.27 %
 第一三共 7.81 %
 中外製薬 28.67 %
 エーザイ 7.16 %
 ア    6.33 %

望ましいROEは8%以上なので中外製薬以外全部微妙なラインです。


②パイプライン

ではなぜこのような差が出てるのでしょうか。
答えはこれです。あ~答えだね。

Answers Newsより作成

製薬会社の株価を決めると言っても良いのが各社のパイプラインですが、アだけフェーズ3の製品が少ないんですよね。

※フェーズ3というのは治験の最終段階、その後当局に申請して許可下りたら製品になるやつ

※適応拡大というのは既にある製品の効能が「違う疾患にも効くんじゃね?」ってことで治験&申請しているもの。つまり患者を増やす=売上が増える可能性がある。

この10年の製薬業界のトレンドはオンコロジー・がん領域で、中外、第一三共は重点的に新製品や適応拡大の開発が進んでいることが分かりますね。

武田はシャイアー買収で希少疾患のパイプラインを手に入れてるから多方面の疾患に対応しています。


③アののっぴきならない事情

アの業績を見るとですね、昨年度は主力製品のイクスタンジが売上の4割を占めています。下の表見ても「主要製品」なのにイクスタンジだけ桁違うやんけ!となります。

イクスタンジちゃんだけ息をまいているアのラインナップ

問題なのはこのイクスタンジの特許が2027年アメリカから切れ始めるということです。

製薬会社は特許に守られて10年程は独占的に販売ができます。特許が切れるとジェネリックがイナゴのように安価な製品を作り出します。つまり10年でがっつり稼いで次の薬を開発しないといけない、なかなか危険なビジネスモデルなのです。

下の表を見て下さいな。
赤色のイクスタンジちゃんの売上がFY30には物凄く小さくなっています。つまりその頃にはゾロ品(ジェネリック)によって食いつぶされているだろうということです。

イクスタンジちゃんの悲しい未来予想図ブレーキランプ6回点滅イ・ク・ス・タ・ン・ジのサイン

これはアに限った話ではないです。どの製薬会社も、未来のスターを育て続けないといけないのです。その「次世代スターがちゃんと育つのか?」これを投資家はめっちゃ気にしているという状況が今のアです。


④次のにしきのあきら(改)は出てくるのか

イクスタンジの代わりとなる製品は主に3つあるのですが、特にパドセブとフェゾリネタントの二製品に注目です。

最大売上をそれぞれ4,000~5,000億としているので、イクスタンジ昨期売上6,000億を十分に埋めることができます。想定通りならば。

先代の毛利元就は偉大だったね~と緊張感の走る吉川&小早川ペア

と、イクスタンジ一本足打法からのネクストバッターズサークルに3人控えている状態でとりあえずは大丈夫かと思いきや、不安要素が垣間見えるのですよ・・(引き演出)


⑤外様のアイベリックさんを重臣にします。

去る5月1日、アイベリック・バイオ社という小さいバイオベンチャーを59億ドル(約8,000億円)で買収したニュースがありました。この狙いは同社の持つ加齢黄斑変性の治療薬「アイザーヴェイ」を手に入れるためです(8/4にFDAより承認)

こういった、有望なパイプラインをもつベンチャーを買収するモデルは90年代に行われた「ファイザーモデル」と言われました。自社で作るより金払った方が早いやろ!の精神です。

しかし過去アはこういった買収をするような会社ではありませんでした。

これが意味するところは何でしょうか?それはつまり「やべ!今のままじゃイクスタンジの穴埋めできねぇわ!」だと言うことは容易に想像できると思います。

ここで急遽アイベリックさんを緊急招集し、製品まるまる手にしちゃおうということになったのです。

なんか託されてしまったアイザーヴェイさん(新生児)

アイザーヴェイのピーク時売上は未公表ですが、外部調査機関によると1,500~2,000億と推定されています。


⑥まとめと今後考えられるシナリオ

てなわけでアの現状となんかやばそうな空気をテラス席で感じ取って頂けたかと思います。

アが助かるシナリオは以下の通りです。

2027年までイクスタンジの販売鈍化が解消される
 はしょりましたが実はイクスタンジの売上は目標から未達状態です。この解消が一つポイントです。

2027年以降イクスタンジの販売減少がゆるやかになる
 特許切れ後の販売状態がどうなるかです。日本は「先発品」に対する信頼や「ジェネリック」に対する不安がまだ残るため切り替えがゆるやかに進むことが多いですが、欧米の皆保険制度のない国では少しでも安いものを買いたいため、すぐに切り替わる可能性が高いです。

次世代スターが活躍すること
 パドセブ・フェゾリネタントが想定通り売れていくこと

アイザーヴェイのピーク時売上想定が良いこと
 おそらく次の決算でアナウンスがあるアイザーヴェイのピーク時売上をどれぐらいに持ってくるか。既に市場では1,500~2,000億と言われている中、根拠なく変に4,000億いけます!とか言っちゃうとまた株価下がるんだろうな。

てなわけで色々な想定をしながら今後も明日を照らすアステラスさんを見ていきたいと思います。めっちゃ照らしてアマテラス製薬と呼ばせてほしい。

経営陣も時価総額の低さには注目していて、あと3年で現在の時価総額3兆円を二倍の7兆円にしたいようです。ちょっとした自社株買いや増配等の小手先の政策じゃ届かないレベルなのでなかなか大変なのでは。

お読みいただきありがとうございました~😃😃😃😃😃

以下、Xで発信したポストです。