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ブランディングを知らない人が管掌役員になった話

はじめまして、Chatworkでピープル&ブランド本部に所属しているとニシオ(@nishio_tomokazu)と申します。
執行役員CHRO兼ピープル&ブランド本部本部長と執行役員っていう大層な肩書がついていますが、どこにでもいる40代半ばのおっさんです。
このnoteは、Chatworkのデザイン組織のメンバーがデザインやブランディングについて書いているのですが、そろそろネタが枯渇してきたので、お前も書けというメンバーのプレッシャーに負けて、筆を取らせていただきました。
デブランディングになるんじゃないかと恐る恐るですが、自分のキャリアから、立場が変われば、ブランディングの見え方が変わってきたよということを中心にお話させてもらえたらと思います。

ブランディング経験のない管掌役員

まずは、私の経歴を簡単にご紹介します。
某公共放送記者を6年、大阪のIT企業でIPO準備&管理部門メイン(法務・総務・情シスなど)を10年、そして2017年10月からChatworkで、管理部門統括・人事、ちょこっとビジネスサイドを経験してきました。

デザインやブランディングから程遠いキャリアです。
そんな私が、去年からピープル&ブランド本部という、デザイン組織を抱える本部の本部長・管掌役員になってしまいました。

これまでブランディングの経験も無ければ、デザインの経験もなし。
モノをつくったりしても、服装にしても「センスがいい」と言われたこともないので、そんなやつが、カッコいいクリエイティブを作るような、デザイナーを見ることできるのか、不安でした。いや、今でも不安です。

「ブランディングは金食い虫」の管理部時代

前職では、管理部門に6年近くいました。
そこでは、私は、かなりコストにシビアな人間でした。(というか、そういう人間になりました)
当時、会社でリブランディングプロジェクトが行われました。

ロゴの変更や、コーポレート系のデザインの改訂があり、それを受けて、名刺や封筒などの紙質を上げることになり、それによって普段良く使うノベルティの単価が高くなってしまいました。

私は、それに対して不満を持っていました。

普段から、紙は裏紙を使えとか、印刷はカラーにするなとか、ランニングコストになるようなウォーターサーバーは置くな等、コスト削減に努めているのに、短期的な直接売上につながらないと思っていたブランディングに対して、費用をかけることへの抵抗が大きかったのです。成果が見えないのに、大きなコストをどんどん掛けていく。

「ブランディングは金食い虫」

それが当時の私の感覚でした。今思うと、デザイナーに対しても、「なんでMacと高いモニターが必要なのか」と結構強くあたっていたかもしれないです。現職のChatworkは、さらにブランディングに力を入れている組織です。
入社後、ブランディングについて、説明を聞く機会は増えました。

ただ、理解はできるが、それが本当に必要なものなのか、優先度が高いものなのかということについての腹落ちはできていませんでした。

コーポレートの責任者として、大阪オフィス移転に関わるときも、「この会議室は使いやすいように機能的にしたいのに、デザイン優先にして使いづらくなるのは嫌だなあ」と思いながら、ブランディングについては、自分の範囲ではないと割り切って、社長やデザイナーにほぼおまかせ状態でした。

コロナがブランディングの重要性を教えてくれた

そして、時は2020年、新型コロナウイルスが猛威を振るいはじめ、当社でもリモートワークメインの働き方となりました。

私は、人事と広報の本部の責任者になっていました。
コロナ禍での人事施策を考える立場です。
既存の社員も新たに入社してくれる社員も、出社ができず、オンラインのコミュニケーション中心です。

オフィス出社ができれば、そこにいるヒトやオフィスの内装にふれることができ、会社に流れる空気を感じることができ、新たな環境へ速く適応することができます。いわゆる「Chatworkらしさ」を体感することができます。

右も左もわからない新入社員にとって、「Chatworkらしさ」を感じられずに働くことは、大きな不安になります。
ベースの能力が高くても、それを発揮できる環境がないと、フルに能力は発揮できません。

既存社員にとっても、「Chatworkらしさ」がどんどん見えなくなり、会社の「共通言語」がなくなり、コミュニケーションの量も質も低下し、事業成長を低下させる大きな障壁になります。

このような課題を「人事の責任者」として感じていました。

そこで、半年に1回開催している全社合宿を、「Chatworkらしさ」を押し出して、一体感を醸成する場にすることを考えました。
オンラインのコンテンツで「Chatworkらしさ」を伝えるために、当時まだ別のチームだったブランドデザイン室と人事、広報が協力して、オンラインの会を作り上げました。
詳細については、こちらもWantedlyに詳しい内容を掲載してますので、そちらをご覧いただければと思います。

この会が社内アンケートでもとても高く評価してもらうとともに、我々も社員に「Chatworkらしさ」を体験してもらうことの重要性を実感しました。
会社のカルチャーやミッション・ビジョン・バリューの浸透をするには、質の高いブランド体験と、人事施策がセットである必要がある。
ここで私はブランディングの重要性を強く実感しました。(遅いですが)

そういった経緯もあって、2021年、人事と広報・ブランディングが同じ本部に入ったピープル&ブランド本部が立ち上がりました。
組織の成り立ちについては、BX部マネージャのハヅキ(@hazuki8mona)が書いたこちらも合わせてご参照ください。

課題はやっぱり費用対効果

この記事を書いている時点で、ピープル&ブランド本部、BX部が立ち上がって1年になります。
インナーコミュニケーションとしての社内イベントのブラッシュアップや、サービスのリブランディングプロジェクトなど、1年目としては多くの成果物を出すことができました。

一方で、課題もあります。

ブランドは、会社の差別化になるコアな資産です。
短期間で築きあげられるものではないことも強く実感しました。
私達が狙った通りのブランド体験を社外の人にしてもらうことが最終的なゴールだとして、そこへのプロセスとして、リブランディング、クリエイティブの制作、社員へのブランディング理解促進などがやるべきことになります。

ただ、これらの費用対効果をどう計測すべきか。

かつて僕がブランディングに対して感じていた課題と同じところに戻ってきました。
ただ、表面上は同じでも、「ブランディングが重要である」という前提がそもそも違うので、本質はかなり違います。
ブランディングをすすめる上で、もしかしてどこの組織もぶち当たる課題になるのかもしれないですが、行った施策をどう評価すべきか。

「この施策にリソースを投下しても大丈夫だろうか」

という問いは、意思決定者として常に抱えています。
この問いに対しては、「この施策に対する成果」が答えになるのですが、成果の定義がとても難しい。
時間軸(長期的・短期的)、影響範囲(社員・ユーザー・採用候補者・投資家など)が、広範囲に渡るため、施策の成果が短期的なKPIで図りにくいといったところがあります。

ただ、何かしらの評価軸がないと、振り返りや改善ができずに、「とりあえずやらないよりはいい」という施策が積み上がってしまうことになりかねません。
社内でもこのKPIについては、議論をしているポイントですが、ここは特に組織の責任者としては、最重点課題だと思っています。

これに関連して、私自身の課題として、もっとブランディングやデザインの知見を積み上げていく必要があると考えています。

自分自身が、デザイナーの皆さんのように質の高いクリエイティブを作り出すことはとても難しいです。
しかし、みなさんが作ってくれたクリエイティブ「質の高さ」について、GOODとMOREを評価して、当社のブランディングに沿った「質の高いクリエイティブ」を速く出せるような体制にすること、そしてデザイナーの皆さんのスキルを向上できるような組織にすることは、責任者としての責務だと考えています。

同じような悩みを抱えている人や「こういうふうに考えたらいいよ」っていうヒントがあれば、ぜひ教えて下さい!!

最後に

ブランディングもデザインの経験もない40半ばの人間に、本部を任せるという暴挙を許してくれている会社と、そんな人間を支えてくれているマネージャ、リーダー、メンバーのみなさんには、感謝してもしきれません。
そういう環境で一番成長させてもらっているのは、私自身なのかもしれません。

「Chatworkらしさ」で、世の中があふれるように、そしてその世の中が良い世の中であるように、自分も組織もチャレンジを続けます!

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