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拡大期・立ち上げ期で変わるエンジニアリングマネージャーの役割。プロダクト開発のトップ同士が徹底討論

みなさん、こんにちは!採用広報の安田です。
今回は2024年2月28日に開催した「拡大期・立ち上げ期で変わるエンジニアリングマネージャーの役割。プロダクト開発のトップ同士が徹底討論」のイベントレポートをお届けします!
Chatworkのプロダクト組織の開発責任者を長年担っている田中、大企業でのマネージャー経験を経て現在新規事業の開発責任者を担う平本の2名が、これまで企業フェーズに合わせてどのようにマネージャーとしてのミッションを推進してきたのかを語り合いました。このnoteでは、パネルディスカッションをクローズアップしてご紹介します。

これからマネージャーを目指す方や、今マネジメントに悩んでいる方にも参考になる内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。

このnoteは2024年2月28日に実施したイベントのレポート記事です。
部署名や体制はイベント当時のものであり、掲載時と異なる場合があります。


メンバー紹介

田中 佑樹/執行役員 兼 コミュニケーションプラットフォーム副本部長
SI企業にてWeb系システムの開発に従事したのち、2013年にChatwork株式会社に入社。UI刷新プロジェクトのWebフロントエンド開発や外部向けREST API開発、メッセージ検索サーバー刷新など数多くのプロジェクトを担当。その後エンジニアリングマネージャーとして、プロダクト領域の幅広い領域のマネジメントを経験したのち、2023年3月にプロダクト本部長、2023年10月に執行役員に就任。

平本 康裕/BPaaS本部 プロダクトユニット長(VPoE)
リクルートに新卒で入社。バックエンドエンジニア、ビッグデータアーキテクト、クラウドアーキテクト、マネージャーのキャリアを歴任。2022年4月、Chatworkに入社。M&AからPMIを担当。連結子会社となったChatworkストレージテクノロジーズ社(CST)にて執行役員、インキュベーション本部プロダクト部マネージャーを担当。2024年1月よりBPaaS本部プロダクトユニット長に就任。

それでは本編をどうぞ!

デビュー戦と最初に直面した壁は?

平本の経歴

平本:僕のマネージャーデビューはリクルートのクラウド組織ですね。組織戦略や方針を自分で描いてから組織が出来上がったので、ここでの挫折経験は、ほとんどなかったと思っています。マネージャーとして本当に大変だったのは、プロダクト開発のEMに任用にされたときですね。

この頃からメンバーの業務がうまく進まないときに、問題を予測して事前にサポートすることが全然できなくなっていました。当時の上長に相談したら「それは勘所が足りてないからだよ」と言われました。自分の得意分野がクラウド寄りだったので、iOSや他の分野への知識が不足してたことが要因だったんです。
 
膨大な情報の中から問題点を見つけるには、経験から得られる勘所が必要です。この勘所を得ることが自分を急速に新しい領域に適応させる上で必要不可欠であることを認識できたいい経験だったと思っています。

田中さんはどういう風にマネージャーとして成長してきたんですか?

田中:僕がChatworkに入ったタイミングは全社で30人くらいしかいなかったんですよね。マネージャーへの打診があった当時、僕はマネジメントをしたいと思ったことがなく、プレイヤーとして成長したい気持ちが強かったんですよ。ただそのときの状況とか諸々考えると、確かに僕がマネージャーになった方がいいのかなと思って引き受けました。

田中の経歴

でも周りに教えてくれる人がいなかったのは辛かったですね。だから書籍を読んだりいろいろやりましたけど、結局一番学べたのは自分で実践して失敗して、何で失敗したんだっけという振り返りを繰り返した経験でした。

当時は「EM」という言葉はなかったんですが、今で言うピープルマネジメントをしながら、プロジェクトマネジメントをし、プロダクトマネジメントみたいなこともやっていた記憶があります。任せられる範囲が広くて大変ではあったけど、だからこそ学びが多い貴重な経験になったのかなとは感じています。

平本:スタートアップのマネージャーって、自律度が高くて、チームの目的志向の強い人をマネージャーとして選ぶべきって書いてある記事を読んだんですが、田中さんの話を聞いて、そういう人をちゃんと選んできているんだなと感じますね。

マネージャーとして学ぶことの優先度ってどうやって決めてきましたか?

田中:必要なものを学んでいたのですが、同時に自分の興味範囲のところもインストールしていました。

例えば必要なもので言うと、プロジェクトマネジメントの知識や、PMBOK(プロジェクトマネジメントの知識体系)、RDRA(モデルベースのビジネスとシステムの可視化手法)、あとは組織論とか。関係ないところで例をあげると、行動経済学など自分の興味があるものをバランスよく学んだ記憶があります。

企業フェーズで変わる役割にどう適応させたか?

平本:リクルートは大きい組織なので、新卒採用や育成の経験が豊富にできたフェーズだったかなと思っています。個人的には新卒育成がめちゃくちゃ面白かったです。基本想定通りにいかないんですが、成長の瞬間が豹変に近いようなところがあって、それが面白いんです。

2018年ぐらいに僕の下に新卒のメンバーが入ってきてくれて、ちょうどAWSサミットの登壇依頼がきたんです。経験を積ませてあげたいと思って、「僕の代わりにサミットの登壇をやってみなよ」と持ちかけたんです。「あたかも自分がやってきたように話していいから、発表してみてよ」っていう話をしたんですよ。
 
そしたらしっかり言語化して、背景含めてまるで自分がやり遂げてきたかのようにちゃんと説明できていたんですよね。今後は自分が引っ張っていくんだ、みたいなところが滲み出ていて、それを見て僕は登壇関係者席の一番前で泣いてました。後日たまたまビジネス側の上長と飲みに行く機会があって、その話をしたらすごく喜んでくれました。「メンバーの成長は自分のことと違って予測がつかない、でも突然自分の期待を超えてくる、そこがすごく面白く感じるから育成って病みつきになるんだよね」という話をしてくれて、なるほどなと思いました。

ここがマネージャーをしていて、大変だけど面白いところだと思っています。マネージャーを目指す方は、ぜひこの辺りを経験してもらいたいですね。

Chatworkで現在所属している組織は、昨年新設されたところなので規模としては結構小さくて、ビジネス側も含めて数十人ぐらいです。

毎月みんなの前で喋る機会があり、開発系のメンバーだけではなく、ビジネス系のメンバーもいる中で各組織長が話すんですが、当然ビジネス系のメンバーたちのモチベーションにも気をつけなきゃいけない。でもいいことばかりではなく現実的なことを言わないといけないし、当事者意識を持って、何とかしなきゃいけないシーンが増えたように思います。

在籍時のリクルートのフェーズだと、こういうシチュエーションを経験できる機会がなかなかなかったですね。そういった点が企業フェーズによる経験できるところの違いですかね。

田中さんはChatworkの上場前のフェーズからマネージャーとして組織を成長させてきましたが、どんどんフェーズが変わる中で、どうやって自分を適応させてきたんですか?

田中適応させた感覚は、特にないですね。そのときそのときで必要なことを必死にやっていた記憶しかないです。

初期のフェーズは、先ほど言ったようにデビュー戦で、一つのチームを見るところ、それも自分の技術スタックに近い人たちをマネジメントするところから始まりました。
その後、いろんな部署を転々としていったわけなんですが、知識のない部署のマネジメントをしたり、複数の部署マネジメントしたり、いろんなマネジメントの経験を積んで、それに応じて必要なスキルや知識を必死に習得していました。

資金調達したり、上場したり、フェーズが変わってきて、組織もどんどん大きくなりました。2019年ぐらいに副本部長になってから組織全体を見るようになりましたね。エンジニアと人事の連携を強くするために、DevHRという採用や技術広報を一体となって活動するチームを立ち上げたり、当時はセキュリティを専門で扱う部門がなかったため、専任のセキュリティ部署を立ち上げたり、そういった新規のチーム立ち上げも経験しました。

さらに組織も大きくなってきたので、組織開発みたいな形で「フィーチャーチーム化」構想もしています。職能別の組織ではなく職能を横断して、チーム内で開発から運用まで一貫して責任を持てるようにしたいと思っています。

必要に迫られて、学習したり、キャッチアップしたり、他社事例を調べたりしているので、やっぱり適応したというよりは、「必要だったからやってました」みたいな感じなのかなと。

平本:今の僕がまさにそうかなと思うんですけど、小規模な組織のときって、自分で大体何でも見れるじゃないですか。

でも組織が大きくなってくると、遠くから全体を見てる状態になっちゃいますよね。Chatwork事業のプロダクト組織は、新卒入社の社員も毎年増え、中途入社の人もどんどん増えていて、組織が拡大する中で間接的なマネジメントをしないといけないから、結構大変だと思うのですが、これまでどう対応してきましたか?

田中:難しいですよね。でも特に重要な役割を担っているのは、いわゆるミドルマネジメント層かなとは思ってます。言い方が悪いかもしれないですけど、マネージャーって放り出されていることが多いんですよ。僕もそうでしたけど、「マネージャーだから自律して成長してください」みたいな感じで突き放されてたりとか。孤立しやすいかなとも思っているんですよね。

なのでマネージャーの方々のキャリアをちゃんと考えたりとか、横の繋がりを作ることで孤立させないようにする仕組みが非常に重要だと考えています。そういうところの基盤がしっかりしていれば、間接マネジメントは一定やりやすくなって組織として強くなるんじゃないかなと。

平本:孤立させないような仕組みってどうやってるんですか?

田中:Chatwork事業だとピープルマネジメントチームというものがあって、そこで横の繋がりを作っています。他には出せないマネージャー独自の悩みとかは、その場に持ち込んで解決したりするようにしています。

マネージャーとしての面白み、今後のビジョンについて

平本 :マネージャーって、戦略と組織を作って推進していくことを求められると思うのですが、組織を形作るメンバーを完全にコントロールすることってできないんですよね。だから、本人たちがモチベーション高く働けるようにする必要がある。それができると先ほど紹介した新卒のメンバーみたいに、予想を超えて成長してくる人が出てきて、チームの雰囲気を良くしたりするんですよね。結果大きな目標達成に繋がって、最終的にチーム全体が良い達成感を感じられる状態になったりするのが面白いですね。

Chatwork全社でのプロダクト組織の状況についてですが、挑戦できるポジションがめちゃくちゃたくさんあります。BPaaSのプロダクト組織はどんどん大きくしていかないといけないですし、逆に田中さんが見ているビジネスチャット「Chatwork」を開発してる組織については、既に組織規模として大きく、新卒の受け入れもできるような状態になっています。マネージャーとして一つの会社内でいろんなフェーズを経験できるのが面白いところじゃないかなと感じています。

ジョインしてくれた人には、やりたいことと会社の方向性が一致する役割を担ってもらって、ガンガン楽しく攻めることができる組織を作っていきたいなと思っています。

田中:マネージャーって任される範囲が広いし、抽象的なので、非常に難易度が高いですよね。

だから課題を特定して、優先度をつけて、それに対して打ち手を考えてくみたいなアプローチをずっと繰り返しているんだと思います。そういうスキルってEMというポジションだけでなくても、再現性のある高いスキルだと感じています。そのスキルが身につけられることが面白みとしてあるんじゃないですかね。

拡大を続けるChatworkの組織を支えるためには、ミドルマネジメントだったり、マネージャーの役割はより一層重要になってきます。
 
先ほど話題に上がった新卒採用も続けていく上で、エンジニアやマネージャーの力がたくさん必要になるので、Chatworkのビジョンやミッションに共感してくれる人たちと一緒に事業を成長させていきたいと思っています。

平本:新卒の時にはとりあえず「できます!」って答えていたという田中さんが、「組織をこうしていきたいんだ!」って思う現在まで、まだ15年くらいですよね?

驚きの成長じゃないですか。この成長角度なんだと思います?

田中:執行役員っていうタイトルを背負ってるので、言いづらいんですが、自分が特別な人間だとは全く思ってないです。

でも一つ覚えているのは、当時CTOだった山本(現CEO)と一緒に開発していて、「分からないことを分からないって言えるのはすごいよ」って言われたことですね。エンジニアの傾向として、ある程度年齢を重ねたり、キャリアを積むと、分からないって言えない人が多くなってくるんだそうです。だから「成長しました」みたいなことを言うつもりはないですが、それは深く記憶に残っています。

平本:すごく大事なポイントだと思いますね。今日はちょっと緊張してたんで、すごくシニアな感じで喋っちゃったんですが、僕も若い頃は嫌なことから逃げてました。ハムスター並みの脱走力を何回か発揮した記憶があって、上長に「もう無理です」って普通に言ってた子だった気がします。今はそんなことないんですが。

田中:うん、ないね(笑)。

平本:変に悩まないっていうのが大事な気もしますね。特にマネージャーの立場になると、何が正しいのかよく分からないですよね。だからこそ悩み続けずに、どうにかして課題を言語化して、問題を解きにいかないといけないんですよ。新入社員の頃に大切にしないといけないことと変わらないですね。

田中:平本さんの話を聞いていて思い出したんですが、僕も最初嫌なことは「やりたくないな」って思ってました。でもマネージャーになった頃から、基本的に仕事は全部拾うようにはしていた気がしますね。

積極的にボールを拾ったり、任されたらやりますっていうスタンスではいたかなとは思っていて、エンジニアという役割に因われずに、いろんなことをやってた気がします。そういうのも成長の一因かもしれないですね。

平本:本とか読んでも全然できるようになった感じにはならないですからね。うまくいってるのかそうでないのかも全然分からないし、PDCAサイクルもすごく回りにくい職業ですよね。やってみるしかないっていう。

田中マネージャーの色って本当にいろんな色があるので、書籍の情報を自分に置き換えるのは結構難しいんですよね。エンジニアのときもそう思ってましたけど、本で学んだことよりマネージャーになった後に実際に自分で経験したことの方が大きいなと思ってます。

平本: マネージャーをしてると新しい発見がありますよね。僕はすごく感じるんですけど、人間ってこういうのが面白いと思うんだ、みたいな。

田中:面白いとというか、発見でいうとやっぱりエンジニアリングのいろんな問題に目がいきますね。技術的負債だったりとか、アーキテクチャが複雑になってる感じだったりとか、データがぐちゃぐちゃだみたいな。

でも原因を探ると「人の問題」に行き着くことが多いんですよね。だから行動経済学とかに興味が出たんですよね。元々僕はプログラミングが大好きでエンジニアになったんですけど、人に興味がシフトしていった感じだと思ってます。

今後の個人目標について

平本:僕は自分が一番楽しいと思うものがなにか知りたいんですよ。今の僕の目標は、自分はスタートアップみたいに新規の事業を立ち上げるフェーズと、エンタープライズのフェーズのどっちが好きなのかを知ることです。

BPaaS事業では組織を立ち上げるところから経験できているので、自分が何が好きなんだろうっていうのを知るために、言い方は悪いですが会社をうまく使わせてもらってます。

田中:長期的な目線で言うと、僕は組織に興味がある人間なのかなと思っているので、組織をより良くするためにはどうしたらいいかを考えていきたいと思ってます。プロダクト組織がいかに生産性高く、かつ皆さんがモチベーション高く開発できるような状態にするにはどうしたらいいかを突き詰めていきたいです。

そういった本質的な解を自分なりに見つけて、再現性を持てるようになることが、僕が長期的にやりたいことだったりとか目標なのかなと考えています。


終わりに

イベントレポートはいかがでしたでしょうか?

2024年7月にChatwork株式会社は「株式会社kubell」へと社名を変更します。
ビジネスチャットだけではなく、DXを通じた中小企業の生産性向上の実現を目指し新たな一歩を踏み出します。企業としても新たなフェーズに突入するkubellには、事業の立ち上げフェーズにあるBPaaS部門、ビジネスのプラットフォームとして成長を続けるChatwork部門を中心に、事業成長に向けて挑戦する機会がたくさんあります。これからのEMの活躍に期待大です!

それでは、今後の情報発信もお楽しみに!

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