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20年代に入ったガールズグループの行方②櫻坂46編 ▽・ω・▽

46系列も基幹グループである乃木坂46に世間的な注目、期待が集中し始めている印象があり、この傾向が続くとかつて48系列がそうであったように櫻坂46、日向坂46が乃木坂46の衛星グループのような印象になってしまうかもしれない。

櫻坂46は欅坂46から改名し、メンバーはそのままで再スタートを切ったグループだ。

メンバーはそのままと言っても欅坂時代の中心メンバー平手友梨奈さん、長濱ねるさんはすでにグループを抜け、二人に次ぐ人気メンバーの一人だった今泉佑唯さん、進学校出身でクイズ番組への期待も高かった米谷奈々未さん、ダンスへの評価が高い鈴本美愉さん、冠バラエティ番組を支えた織田奈那さん、志田愛佳さん、美大に通いデザインセンスに優れていた佐藤詩織さん、確かなパフォーマンスと穏やかな性格で存在感を示した石森虹花さんもおらず、櫻坂46になってからも前副キャプテンとしてグループを支えた守屋茜さん、ファンのみならずメンバーにとっても癒やしの存在だった渡辺梨加さんが昨年末に退団している。

欅坂46としてデビュー曲「サイレント・マジョリティ」でブレイクしたグループとは名前だけでなくメンバー構成も大幅に変わっており、活動の中心として前面に出ているのは改名一年半前から時期をズラして加入した二期生たちだ。

幸いなことにこの二期生たちがパフォーマンスに優れ、冠バラエティ番組や外番組での有能さを発揮しており櫻坂46としてのグループカラーを明確にしつつある。

ただし櫻坂46のグループカラーは、欅坂46時代ほど先鋭でなく、したがって固定ファン以外への訴求力は弱い。

平手友梨奈さんを中心に現代社会の中でまつろわぬ者をテーマにした欅坂時代の楽曲には、実際には欅坂46の楽曲ではない曲でも「これ欅っぽいよね」と感じる他のグループの楽曲があったように独自の世界観「僕の物語」があった。

大人社会への不信と拒否感を共通のテーマとした欅時代の多くの楽曲「僕の物語」は8thシングル表題曲「黒い羊」で孤独さや疎外感のピークを迎え、個人的な意見だが、この楽曲をもって平手友梨奈さんを主人公に見立てた「僕の物語」はデッドエンドに到達する。

平手さんを中心にメンバーが演じた「僕」は最終的に社会から受け入れられず、社会を受け入れず、成長して丸くなり大人の仲間入りをすることもなく未成熟な「僕」のまま、生死も定かではないどこかへ彷徨い出てしまった。これ以上この「僕」の物語は無い。

その後初めて選抜制をとりいれ二期生も加えた未発売の9thシングル(10月のプールに飛び込んだ)は再び「教室にいる自分に違和感を持つ僕」の物語に立ち返っている。パフォーマンスでははじめは孤独だった「僕」と同様に曲が進むにつれ「教室」を飛び出る「僕たち」の姿が描かれている。

ただし選抜発表の際にはセンターポジションだった平手さんはこの楽曲制作には(少なくともMV撮影には)参加せず12月に予定されていた9thシングル自体の発売が見送りとなる。

週刊誌報道では単純に「平手が新曲にNGを出してMV撮影を飛ばした」と伝えられたが、後にソロになってから発表された楽曲を聴けば、平手友梨奈さんの目線が欅坂時代の「僕」から離れたものだったことは明らかであり、プロとして肯んじない作品の中心に立つことをせず他のメンバーに託すことは一つの判断として妥当だったと思う。

ただ、結果としてシングルの発売スケジュールが中止になってしまったことの責任は重く新曲が出ないことに加え平手さん、鈴本さん、織田さんが同じタイミングで退団、再始動を予定していた2020年の春先には新型コロナウイルスの感染拡大によって大規模なイベントの開催が出来ず、タイアップを伴った新曲の発表も出来ないままグループの活動は停滞してしまう。

その間に週刊誌報道によってグループのイメージが傷つけられたことも踏まえたのか、スタッフサイドは欅坂46というブランドを捨て、新たなブランド櫻坂46を立ち上げることを決断する。経緯はまったく分からず、ファンに対しても分かりやすい説明も無いままに。

改名した新グループ櫻坂46は欅坂46時代から数えて活動開始から4年が経過しており新たに二期生を加えても平均年齢は20歳前後となった。歌詞の中の主人公は十代を想起させる「僕」から少し大人になり、個人的に抱く社会からの疎外感から離れて大人の視点を獲得しつつある「僕」から見た現代社会への違和感をうたっている。

シングル表題曲三曲のうちセンターを務めた森田ひかるさん、田村保乃さんはいずれも優れたパフォーマーではあるが、歌詞はグループに向けたあて書きではあっても森田さん、田村さんに向けた個人的なあて書きとは感じられず、誰が誰に向けて訴えている言葉なのかが曖昧だ。

メンバーはそれぞれ「心の弱った人、誰かに寄り添いたい、曲を届けたい」という気持ちを抱いて活動を続けていてこのグループらしさは欅坂時代から変わらず。

ただ歌詞の世界観が示すベクトルの向きが曖昧になったことで櫻坂46っぽいと言われるような独自の世界観がパフォーマンスの激しさに集約されてしまい、グループのセンターが代表して届ける言葉の印象は薄れているようにも感じる。固定ファン以外にどうやって届けていくかが今後の課題になるのではないかと思う。

メジャーなガールズグループとして活動を継続していけるだけの売上、知名度、注目度、期待度はすでに充分なレベルに達しているだろうが、たとえばドームツアーなど活動の規模を乃木坂46レベルにまで拡大することが出来るかどうかは今後の活動次第。

最後になったがこのグループが欅坂46時代からすっとシングル表題曲の音楽傾向を変え(例えば洋楽ロック調であっても曲によって年代が違う、というような)過去の自分たちをコピーするような楽曲制作をしていないことはもっと高く評価されるべきではないか


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