有り余る時間が必要
デンマークに滞在する機会を得たことで、なんと言っても大きかったことは、自分の自由にできる時間が有り余るほどに与えられたことだった。この、「有り余るほどに与えられた」ことが私にとって大変重要な意味を持っていた。もちろんフォルケホイスコーレでは授業はあるしたまに宿題も出たし、掃除や食事片付けなどのタスクもあったがそれらを除いて毎日2-3時間、週末の土日はほぼ全日自分だけの時間なのだ。
日本では、いやデンマークでも学生や職業人はかなり忙しく、自分の時間を「有り余るほど」持てることは少ないのではなかろうか。だから学生たちがフォルケホイスコーレに来た理由としてしばしば言うのが「忙しかった学校生活でくたびれたから息抜きに来たんだ」ということなのかも知れない。
フォルケホイスコーレに来た当初、学生からそのような答えを聞くと、私は少しだけ「そんなにゆとりがあって大丈夫なのかな。厳しい社会に向けて、若いうちにもっと鍛えておいた方がいいんじゃないかな」と感じたものだった。それは私のモットーが「若い頃の苦労は買ってでもせよ」だからだ。これが間違っているとは今も思えないがしかし、自分で考える時間を失ってはいけないということを忘れがちになっていたのも事実だ。
なるほど歳を取ると過去が凝縮されていっぺんに沢山のことをしたような気になっているが、若い人たちには、焦ることはない、同じようなことが言えるまでにあと30年以上時間があるのだと思えばこのようなギャップイヤーは何ら問題ではなくむしろ自分の納得できる人生を歩むための知恵かも知れない。
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