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㉖家にとんでもない物が 1

義父母と義兄(夫の兄)夫婦は、一時期一緒に住んでいた。
義父母の自宅を4階建てのこぢんまりしたアパートに建て直し、それを期に同居を始めた。自分達は最上階に住み、下の階は人に貸した。(各階に二戸ずつ。)店子を入れて保証金を預かり、それを建築費用の返済に回すという、韓国でよくある方法を採った。
ところが施工途中で、自分達が住む予定だった4階部分を、半分に削らなければならないことが判明した。密接している隣の建物への日照を確保するために、やむを得ない措置ということだった。しかし、建築会社はプロである。現地を見て、それが建築前に分からなかったはずがない。
もし4階建てを3階建てに減らしたりして、人に貸すための部屋数を減らせば、建築費用が捻出できなくなる。一方、4階に半分しか居住スペースが取れなければ、4人が住むには狭すぎる。
このことが事前に分かっていれば、義父母達は建て替えを躊躇しただろう。建築会社は仕事を得るために、契約が結ばれ工事が始まってしばらく経つまで、その件について口をつぐんでいたらしかった。
義父母と義兄夫婦は仕方なく、完成後、4人が住むには狭すぎる4階に、無理に住むことになった。

ただでさえ狭い所に、制御不能の義母がいる。口論は主に義母と義兄の間に勃発した。たまにしか訪問しない私ですら、義兄と義母が大声で言い合っているのを何回も見ている。

義母は路地のゴミ捨て場をよくあさっていた。人が捨てていったあれこれの中から、目ぼしいものを持ち帰るのが義母の癖だった。しかし家が狭くて置き場がない、おまけに外聞が悪いと、義兄はやめるように何度も注意していた。
義母が拾ってきた物の一つである、ガラス製のおちょこを見たことがある。焼酎を飲む時に使う、指三本でつまむくらいの小さなものだ。どこかの社名が入っていて、未使用品らしかったが、ずいぶん古いもののようだった。紙の箱にいくつも入っていた。その小ささが、可愛いと言えなくもなかった。しかし「これ、要るか?」と言われて私は断った。「もらって帰るほどのものではないな」というのが正直な感想だった。
義兄に、絶対に使うことはないから、また捨ててくるようにと言われ、義母はしぶしぶゴミ捨て場に戻した。

続きます…(^.^;

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